平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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ファイル:3 優生思想のマッドサイエンティスト

皇帝

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「お前らの行動は全てこのカメラを通じて生中継されている。」
 家臣が持つビデオカメラが黒く光る。
「極東の技術さまざまだな。ところで、後で下水道の件もしっかり聞いて置かなくては。なぁ台与鬼子。」
 慎二は何も答えない。
 それから皇帝はカーミラの方を見た。
「カーミラ殿? 人様の城にコソコソと入り込んで、どういう了見かな? 」
「国際情勢を悪化させたくなければ、どうか手をひいてほしい。」
 慎二とカーミラは、祖国を思ってか、一歩後ずさった。
 対称的に俺は一歩前に出ると、皇帝を仰ぐ。
「なんだテメエは被害者ヅラしやがって。オメエは加害者だろうが? 天に唾を吐いてみろ。自分に帰ってくるからよ。」
 皇帝は、俺に矛を向ける家臣を下がらせると、前に出て、ロバスに命令した。
「ロバス。ソイツらを始末しろ。」
 彼女は退屈そうな顔で俺たちの会話を聞いていたかと思うと、ため息をついて、それから皇帝の方を見た。
「王様と言いましても、ワタクシの邪魔をするなら容赦はしませんよ。」
 ロバスの冷たい眼光が赫く光る。
「オイオイ、お嬢ちゃんよ。キミが相手をするのは奴らだ。」
「多少手荒な真似をしても構わない。他所の国で好き勝手した奴らだ。それぐらいの報いは受けるべきだろう。」

     「死ね。」

 彼女の左前足が、皇帝を狙った。

     「キンッ。」

 彼女を止めたのは、身体強化をしたカーミラだ。
「会談に何度もお誘いしたのに、応じていただけなかったのは、アナタの方です。」
「私が今日ここに来たのは、それをお伝えするためでもあります。」
 それからカーミラはロバスの脚を押し戻しながら、彼女へと迫る。
 押し返された脚の影響で、ロバスは体勢を大きく崩した。
 それを、俺も慎二も見逃さない。
「凛月。薙ぎ払え!! 」
---雷鞭サンダー・ウィップ---
「キャッ!! 」
 身体を支えているただ一本の右脚を、慎二の凛月がふり払った。
 俺もその隙を見逃さない。
「【天岩流ッ】」
 【捌ノ岩】
 【天岩烈波テンガンレッパ
 宇宙そらから崩れ落ちてくる巨大なソレを、右手で砕いた。
 鉄屑の雨が降る。
 その雨の中、カーミラは俺を踏み台にすると、何が起こったのか分からないまま唖然としているロバスを抱き抱え、安全な所で着地した。
 城の兵たちは慌てて逃げていく。
 そして最後に家臣と皇帝だけが残った。
「素晴らしい。さすが、蝠岡が認めただけはある。」
 蝠岡? 奴を知っている?
「私と彼は同窓生だ。私が二十七で博士号を手に入れた時、彼はまだたったの五歳だった。」
 慎二の叫び声が聞こえる。
「北条!! ソイツの言葉を聞くな。」
 リングィストは彼の言葉を無視して続けている。
「その頃には、彼も、国際政府から隷属世界プロジェクトの話がついていた頃でね。」
「私は本気で信じていたんだ。彼は人類の上位種を作ろうとしていると…… 」
 彼は自らの手で頭にある白髪をむしり取った。
 血が出るほど頭皮をむしり取った。
「何が『人類にあるべきものを思い出させる。』だ。」
「彼のやっていることは、天界に帰った人類たちに、再び知恵の実を授け、地上に叩き落とすようなものだ。」
「そうだ。奴は蛇だ蛇ダァ。」
 俺の前で光る何かが通った。
 遅れてカーミラが真紅の血を撒き散らして、俺と同じく何が起こったのか分からないまま、仰向けにバッタリと倒れる。
 リングィストは、さっきの気が狂った様子とは、違う、落ち着いた叔父の声で優しくロバスに話しかけた。
「ロバス。彼の黄金剣には触れないようにな。それは使用者の生命力を吸い取る禁断の剣だ。」
「はいッ!! お祖父様ぁ。」
「北条ぅぅぅぅぅぅぅ。」
 慎二の叫び声が聞こえる。
 あまりにも多くのことが起きすぎていて、脳の処理が追いつかない。
---時空壊クロック・ブレイク---
 慎二が俺の身体を押し退けた。
 それと同時に真っ赤な液体が俺の顔に掛かる。
「十数分、俺は起き上がれない。それまで、カーミラのことを頼んだぞ。」
 そう言って慎二はその場にどっさりと倒れた。
「さて、ロバス、早急に終わらせるぞ。
ソイツらは化け物だから、数分すれば何事もなかったかのように動き出す。」
「それまでに彼を始末するんだ。」
「わかっておりますわよ。」
 俺は事態を認識し直すと、冷や汗をかきながら、構え直した。
 心拍数を上げ、ほぼ勘で彼の攻撃を捌いていく。
 捌くだけならいい。
 だが反撃の一手を加えなくては、この猛撃は止まない。
 この賭けも、いつまで勝ち続けられるか分からない。
 攻撃自体は単調だ。
 だが、あまりにも俊敏すぎる。
 奴の姿すら目で追えない。
「ババババババ。」
 ヘリコプター?
 彼女が風を斬る音に混じって、何かがこちらに迫っている。
[科学者リングィスト!! 貴様を不法出国罪と国家転覆罪で拘束する。]
 間違いない。公安のヘリだ。
 皇帝は慌てて家臣に命じた。
「消せ消せ消せ消せ。」
 家臣は慌ててビデオカメラを切るが、もうこの事態は隠し通せないだろう。
 そしてヘリから、一人の少女が飛び出してくる。
「【天鵝流】拳闘術」
 【漆ノ拳】
 【翡翠カワセミ
 急降下しながらロバスに迫り、その技は彼女にクリーンヒットした。
「ごめん、待たせたわね北条? 」
 
 
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