53 / 107
ファイル:3 優生思想のマッドサイエンティスト
皇帝
しおりを挟む
「お前らの行動は全てこのカメラを通じて生中継されている。」
家臣が持つビデオカメラが黒く光る。
「極東の技術さまざまだな。ところで、後で下水道の件もしっかり聞いて置かなくては。なぁ台与鬼子。」
慎二は何も答えない。
それから皇帝はカーミラの方を見た。
「カーミラ殿? 人様の城にコソコソと入り込んで、どういう了見かな? 」
「国際情勢を悪化させたくなければ、どうか手をひいてほしい。」
慎二とカーミラは、祖国を思ってか、一歩後ずさった。
対称的に俺は一歩前に出ると、皇帝を仰ぐ。
「なんだテメエは被害者ヅラしやがって。オメエは加害者だろうが? 天に唾を吐いてみろ。自分に帰ってくるからよ。」
皇帝は、俺に矛を向ける家臣を下がらせると、前に出て、ロバスに命令した。
「ロバス。ソイツらを始末しろ。」
彼女は退屈そうな顔で俺たちの会話を聞いていたかと思うと、ため息をついて、それから皇帝の方を見た。
「王様と言いましても、ワタクシの邪魔をするなら容赦はしませんよ。」
ロバスの冷たい眼光が赫く光る。
「オイオイ、お嬢ちゃんよ。キミが相手をするのは奴らだ。」
「多少手荒な真似をしても構わない。他所の国で好き勝手した奴らだ。それぐらいの報いは受けるべきだろう。」
「死ね。」
彼女の左前足が、皇帝を狙った。
「キンッ。」
彼女を止めたのは、身体強化をしたカーミラだ。
「会談に何度もお誘いしたのに、応じていただけなかったのは、アナタの方です。」
「私が今日ここに来たのは、それをお伝えするためでもあります。」
それからカーミラはロバスの脚を押し戻しながら、彼女へと迫る。
押し返された脚の影響で、ロバスは体勢を大きく崩した。
それを、俺も慎二も見逃さない。
「凛月。薙ぎ払え!! 」
---雷鞭---
「キャッ!! 」
身体を支えているただ一本の右脚を、慎二の凛月がふり払った。
俺もその隙を見逃さない。
「【天岩流ッ】」
【捌ノ岩】
【天岩烈波】
宇宙から崩れ落ちてくる巨大なソレを、右手で砕いた。
鉄屑の雨が降る。
その雨の中、カーミラは俺を踏み台にすると、何が起こったのか分からないまま唖然としているロバスを抱き抱え、安全な所で着地した。
城の兵たちは慌てて逃げていく。
そして最後に家臣と皇帝だけが残った。
「素晴らしい。さすが、蝠岡が認めただけはある。」
蝠岡? 奴を知っている?
「私と彼は同窓生だ。私が二十七で博士号を手に入れた時、彼はまだたったの五歳だった。」
慎二の叫び声が聞こえる。
「北条!! ソイツの言葉を聞くな。」
リングィストは彼の言葉を無視して続けている。
「その頃には、彼も、国際政府から隷属世界プロジェクトの話がついていた頃でね。」
「私は本気で信じていたんだ。彼は人類の上位種を作ろうとしていると…… 」
彼は自らの手で頭にある白髪をむしり取った。
血が出るほど頭皮をむしり取った。
「何が『人類にあるべきものを思い出させる。』だ。」
「彼のやっていることは、天界に帰った人類たちに、再び知恵の実を授け、地上に叩き落とすようなものだ。」
「そうだ。奴は蛇だ蛇ダァ。」
俺の前で光る何かが通った。
遅れてカーミラが真紅の血を撒き散らして、俺と同じく何が起こったのか分からないまま、仰向けにバッタリと倒れる。
リングィストは、さっきの気が狂った様子とは、違う、落ち着いた叔父の声で優しくロバスに話しかけた。
「ロバス。彼の黄金剣には触れないようにな。それは使用者の生命力を吸い取る禁断の剣だ。」
「はいッ!! お祖父様ぁ。」
「北条ぅぅぅぅぅぅぅ。」
慎二の叫び声が聞こえる。
あまりにも多くのことが起きすぎていて、脳の処理が追いつかない。
---時空壊---
慎二が俺の身体を押し退けた。
それと同時に真っ赤な液体が俺の顔に掛かる。
「十数分、俺は起き上がれない。それまで、カーミラのことを頼んだぞ。」
そう言って慎二はその場にどっさりと倒れた。
「さて、ロバス、早急に終わらせるぞ。
ソイツらは化け物だから、数分すれば何事もなかったかのように動き出す。」
「それまでに彼を始末するんだ。」
「わかっておりますわよ。」
俺は事態を認識し直すと、冷や汗をかきながら、構え直した。
心拍数を上げ、ほぼ勘で彼の攻撃を捌いていく。
捌くだけならいい。
だが反撃の一手を加えなくては、この猛撃は止まない。
この賭けも、いつまで勝ち続けられるか分からない。
攻撃自体は単調だ。
だが、あまりにも俊敏すぎる。
奴の姿すら目で追えない。
「ババババババ。」
ヘリコプター?
彼女が風を斬る音に混じって、何かがこちらに迫っている。
[科学者リングィスト!! 貴様を不法出国罪と国家転覆罪で拘束する。]
間違いない。公安のヘリだ。
皇帝は慌てて家臣に命じた。
「消せ消せ消せ消せ。」
家臣は慌ててビデオカメラを切るが、もうこの事態は隠し通せないだろう。
そしてヘリから、一人の少女が飛び出してくる。
「【天鵝流】拳闘術」
【漆ノ拳】
【翡翠】
急降下しながらロバスに迫り、その技は彼女にクリーンヒットした。
「ごめん、待たせたわね北条? 」
家臣が持つビデオカメラが黒く光る。
「極東の技術さまざまだな。ところで、後で下水道の件もしっかり聞いて置かなくては。なぁ台与鬼子。」
慎二は何も答えない。
それから皇帝はカーミラの方を見た。
「カーミラ殿? 人様の城にコソコソと入り込んで、どういう了見かな? 」
「国際情勢を悪化させたくなければ、どうか手をひいてほしい。」
慎二とカーミラは、祖国を思ってか、一歩後ずさった。
対称的に俺は一歩前に出ると、皇帝を仰ぐ。
「なんだテメエは被害者ヅラしやがって。オメエは加害者だろうが? 天に唾を吐いてみろ。自分に帰ってくるからよ。」
皇帝は、俺に矛を向ける家臣を下がらせると、前に出て、ロバスに命令した。
「ロバス。ソイツらを始末しろ。」
彼女は退屈そうな顔で俺たちの会話を聞いていたかと思うと、ため息をついて、それから皇帝の方を見た。
「王様と言いましても、ワタクシの邪魔をするなら容赦はしませんよ。」
ロバスの冷たい眼光が赫く光る。
「オイオイ、お嬢ちゃんよ。キミが相手をするのは奴らだ。」
「多少手荒な真似をしても構わない。他所の国で好き勝手した奴らだ。それぐらいの報いは受けるべきだろう。」
「死ね。」
彼女の左前足が、皇帝を狙った。
「キンッ。」
彼女を止めたのは、身体強化をしたカーミラだ。
「会談に何度もお誘いしたのに、応じていただけなかったのは、アナタの方です。」
「私が今日ここに来たのは、それをお伝えするためでもあります。」
それからカーミラはロバスの脚を押し戻しながら、彼女へと迫る。
押し返された脚の影響で、ロバスは体勢を大きく崩した。
それを、俺も慎二も見逃さない。
「凛月。薙ぎ払え!! 」
---雷鞭---
「キャッ!! 」
身体を支えているただ一本の右脚を、慎二の凛月がふり払った。
俺もその隙を見逃さない。
「【天岩流ッ】」
【捌ノ岩】
【天岩烈波】
宇宙から崩れ落ちてくる巨大なソレを、右手で砕いた。
鉄屑の雨が降る。
その雨の中、カーミラは俺を踏み台にすると、何が起こったのか分からないまま唖然としているロバスを抱き抱え、安全な所で着地した。
城の兵たちは慌てて逃げていく。
そして最後に家臣と皇帝だけが残った。
「素晴らしい。さすが、蝠岡が認めただけはある。」
蝠岡? 奴を知っている?
「私と彼は同窓生だ。私が二十七で博士号を手に入れた時、彼はまだたったの五歳だった。」
慎二の叫び声が聞こえる。
「北条!! ソイツの言葉を聞くな。」
リングィストは彼の言葉を無視して続けている。
「その頃には、彼も、国際政府から隷属世界プロジェクトの話がついていた頃でね。」
「私は本気で信じていたんだ。彼は人類の上位種を作ろうとしていると…… 」
彼は自らの手で頭にある白髪をむしり取った。
血が出るほど頭皮をむしり取った。
「何が『人類にあるべきものを思い出させる。』だ。」
「彼のやっていることは、天界に帰った人類たちに、再び知恵の実を授け、地上に叩き落とすようなものだ。」
「そうだ。奴は蛇だ蛇ダァ。」
俺の前で光る何かが通った。
遅れてカーミラが真紅の血を撒き散らして、俺と同じく何が起こったのか分からないまま、仰向けにバッタリと倒れる。
リングィストは、さっきの気が狂った様子とは、違う、落ち着いた叔父の声で優しくロバスに話しかけた。
「ロバス。彼の黄金剣には触れないようにな。それは使用者の生命力を吸い取る禁断の剣だ。」
「はいッ!! お祖父様ぁ。」
「北条ぅぅぅぅぅぅぅ。」
慎二の叫び声が聞こえる。
あまりにも多くのことが起きすぎていて、脳の処理が追いつかない。
---時空壊---
慎二が俺の身体を押し退けた。
それと同時に真っ赤な液体が俺の顔に掛かる。
「十数分、俺は起き上がれない。それまで、カーミラのことを頼んだぞ。」
そう言って慎二はその場にどっさりと倒れた。
「さて、ロバス、早急に終わらせるぞ。
ソイツらは化け物だから、数分すれば何事もなかったかのように動き出す。」
「それまでに彼を始末するんだ。」
「わかっておりますわよ。」
俺は事態を認識し直すと、冷や汗をかきながら、構え直した。
心拍数を上げ、ほぼ勘で彼の攻撃を捌いていく。
捌くだけならいい。
だが反撃の一手を加えなくては、この猛撃は止まない。
この賭けも、いつまで勝ち続けられるか分からない。
攻撃自体は単調だ。
だが、あまりにも俊敏すぎる。
奴の姿すら目で追えない。
「ババババババ。」
ヘリコプター?
彼女が風を斬る音に混じって、何かがこちらに迫っている。
[科学者リングィスト!! 貴様を不法出国罪と国家転覆罪で拘束する。]
間違いない。公安のヘリだ。
皇帝は慌てて家臣に命じた。
「消せ消せ消せ消せ。」
家臣は慌ててビデオカメラを切るが、もうこの事態は隠し通せないだろう。
そしてヘリから、一人の少女が飛び出してくる。
「【天鵝流】拳闘術」
【漆ノ拳】
【翡翠】
急降下しながらロバスに迫り、その技は彼女にクリーンヒットした。
「ごめん、待たせたわね北条? 」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる