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ファイル:3 優生思想のマッドサイエンティスト
エピローグ
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僕は謎の男の残したメモを元に、彼女のいる病室へと足を急いだ。
普段は厳しい親方ではあったが、僕が彼女に会いにいく旨と、公安の人間からのメモを見せると、返事二つで休暇をくれた。
会いにいく?
何しに?
僕は彼女になんと言えば良いのだろうか。
分からない。
いつもの街並みを抜けて、都市部に入る。
ここはいつも通り変わらなかった。
無能力者たちが、能力者を囲い込んでは、ひどい言葉や、暴力を投げつけている。
彼らは僕の存在に気づくと、チラ見してから、無能力者であることが分かると、再び、手錠をつけた咎人を殴り始めた。
「変わらないなこの社会は。」
メインストリートをしばらく歩いていくと、公安が管轄している大きな市民病院に辿り着く。
そこで僕は受付のアンドロイドに面会許可を取った。
アンドロイドからICカードを受け取り、そのままエスカレーターで二階に上がる。
そこからはエレベーターに乗って、伸びすぎた鉄の塔を眺めてから、大きく深呼吸をして気持ちを整えた。
突き放されるかもしれない。
気味悪がられるかもしれない。
でもそれも厭わない。
僕にはそれだけの罰を受けなければならない理由がある。
あるような気がするのだ。
もう逃げない。
正面から向き合おう彼女と。
僕は病室の前でノックした。
「どうぞ。空いていますわよ。」
僕は恐る恐る扉をスライドさせていく。
徐々に彼女の全容が明らかになっていく。
僕が一番恐れているのは彼女の顔だ。
病室のドアは、焦らすようにゆっくり開いていく。
そして彼女は僕の顔を見た途端に泣き始めた。
「いまさら……どのツラ下げて……ワタクシに……」
なぜだろう前が見えない。
僕も泣いていた。
色々な気持ちが混ざってなんと表現すれば良いか分からなくて。
胸の内から何かがグッと押し上げてくるのだ。
そして身体をグッと締め上げて、ブルブルと振動が来る。
「ごめん。ロバス。居なくなったりして。」
「ホントにバカ。アナタなんて大っ嫌いですわ。ワタクシの前から急に居なくなるくせに、こうやってまた。最低のクズ男。」
僕は彼女に抱きついてしまった。
本当はこうしたかった。
でもその勇気がなかった。
彼女はブルッと震えると、そのまま僕の背中に腕を回してくる。
「嫌だった? 」
「いいえ、ちょっとビックリしただけですわよ。ワタクシ。アナタに嫌われたのかと思って。」
「身体も。ちゃんと歩けるようにしてもらったのですわよ。叔父様に。」
そういうと彼女は、掛け布団の下の義足を僕に見せてくる。
僕はそれまでに彼女を追い詰めていた。
僕は自分の行動に腹が立った。
「どうなさったの? そんなに怖い顔をして。」
「本来。僕が君の脚になるはずだった。なのに…… 」
「許してあげる。」
彼女は頬を膨らませてそう言った。
「今なんて? 」
「許してあげますわ。アナタの全部。ワタクシから逃げたことも、ワタクシをこんなふうにしてしまったのも、またこうやってノコノコと帰ってきたことも。」
「うぅごめんよロバスごめんよ。」
それから彼女は、笑顔でこう言った。
「その代わり。」
「またワタクシの脚になって頂けますか? 」
答えは決まっている。僕は考える間もなく答えた。
アレほど重く考えていた自体をこうも簡単に。
「うん。喜んで。」
彼女は病室の天井を見ると、白々しくこう言う。
「あーなんだかお花が見たくなってきましたわね。」
「この病院の中庭は四季それぞれの花が管理されているのだとか。」
「鉄のオブジェばっかり見飽きましたわ。」
「あー誰かワタクシを連れ出して下さいませんかしら? 」
「お嬢様。お手をどうぞ。」
僕は彼女の手を取った。
普段は厳しい親方ではあったが、僕が彼女に会いにいく旨と、公安の人間からのメモを見せると、返事二つで休暇をくれた。
会いにいく?
何しに?
僕は彼女になんと言えば良いのだろうか。
分からない。
いつもの街並みを抜けて、都市部に入る。
ここはいつも通り変わらなかった。
無能力者たちが、能力者を囲い込んでは、ひどい言葉や、暴力を投げつけている。
彼らは僕の存在に気づくと、チラ見してから、無能力者であることが分かると、再び、手錠をつけた咎人を殴り始めた。
「変わらないなこの社会は。」
メインストリートをしばらく歩いていくと、公安が管轄している大きな市民病院に辿り着く。
そこで僕は受付のアンドロイドに面会許可を取った。
アンドロイドからICカードを受け取り、そのままエスカレーターで二階に上がる。
そこからはエレベーターに乗って、伸びすぎた鉄の塔を眺めてから、大きく深呼吸をして気持ちを整えた。
突き放されるかもしれない。
気味悪がられるかもしれない。
でもそれも厭わない。
僕にはそれだけの罰を受けなければならない理由がある。
あるような気がするのだ。
もう逃げない。
正面から向き合おう彼女と。
僕は病室の前でノックした。
「どうぞ。空いていますわよ。」
僕は恐る恐る扉をスライドさせていく。
徐々に彼女の全容が明らかになっていく。
僕が一番恐れているのは彼女の顔だ。
病室のドアは、焦らすようにゆっくり開いていく。
そして彼女は僕の顔を見た途端に泣き始めた。
「いまさら……どのツラ下げて……ワタクシに……」
なぜだろう前が見えない。
僕も泣いていた。
色々な気持ちが混ざってなんと表現すれば良いか分からなくて。
胸の内から何かがグッと押し上げてくるのだ。
そして身体をグッと締め上げて、ブルブルと振動が来る。
「ごめん。ロバス。居なくなったりして。」
「ホントにバカ。アナタなんて大っ嫌いですわ。ワタクシの前から急に居なくなるくせに、こうやってまた。最低のクズ男。」
僕は彼女に抱きついてしまった。
本当はこうしたかった。
でもその勇気がなかった。
彼女はブルッと震えると、そのまま僕の背中に腕を回してくる。
「嫌だった? 」
「いいえ、ちょっとビックリしただけですわよ。ワタクシ。アナタに嫌われたのかと思って。」
「身体も。ちゃんと歩けるようにしてもらったのですわよ。叔父様に。」
そういうと彼女は、掛け布団の下の義足を僕に見せてくる。
僕はそれまでに彼女を追い詰めていた。
僕は自分の行動に腹が立った。
「どうなさったの? そんなに怖い顔をして。」
「本来。僕が君の脚になるはずだった。なのに…… 」
「許してあげる。」
彼女は頬を膨らませてそう言った。
「今なんて? 」
「許してあげますわ。アナタの全部。ワタクシから逃げたことも、ワタクシをこんなふうにしてしまったのも、またこうやってノコノコと帰ってきたことも。」
「うぅごめんよロバスごめんよ。」
それから彼女は、笑顔でこう言った。
「その代わり。」
「またワタクシの脚になって頂けますか? 」
答えは決まっている。僕は考える間もなく答えた。
アレほど重く考えていた自体をこうも簡単に。
「うん。喜んで。」
彼女は病室の天井を見ると、白々しくこう言う。
「あーなんだかお花が見たくなってきましたわね。」
「この病院の中庭は四季それぞれの花が管理されているのだとか。」
「鉄のオブジェばっかり見飽きましたわ。」
「あー誰かワタクシを連れ出して下さいませんかしら? 」
「お嬢様。お手をどうぞ。」
僕は彼女の手を取った。
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