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ファイル:4火星の叛逆者
とりあえず一泊
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懲役九百年、その言葉が心から離れる事がなく、思わず鵞利場に聞いてしまった。
「アレ、本当か? 」
「えっ? 何が? 」
「鯣雑さんの懲役の話だ。」
彼女はしばしの沈黙……
それからポツポツと話し出した。
「ええ、本当……みたい。」
公安に、そんな極悪人が、協力者として、それで持ってその懲役。
何をすればそんなに重い刑罰がつくのか。
ほぼ終身刑では無いか。
それにそれだけ協力な能力なら、なぜ脳髄を引っこ抜いて、スキルホルダーにしてしまわないのか、なぜそのような人間が、こんな辺境の地で密かに囚われているのか。
「どこから話せばいいかしら。」
彼女も、言葉に困っているようだ。
「これは本堂元長官の話なんだけど。」
「彼は過去に、人々を洗脳して、国家に反旗を翻したようなの。本当の自由を取り戻すんだ。って。」
そこからどうなったかは、俺も想像できた。
俺が捕まった時と凡そ大差はないだろう。
「長官だけが、鯣雑さんの洗脳を打ち消すことが出来たんだな。」
「そうよ。鯣雑さんの能力は、強力な読唇術と、対象者の洗脳。言葉一つで執行者もスキルホルダーも、一瞬で彼の手駒に出来た。」
「その能力を引き出して、誰でも使うように出来るなんて、大家族同盟が許さなかった。だって禁断の果実じゃない。誰がいつそれを奪い取って、世界を塗り替えるか分からない。」
「だからこんな辺境の地に隔離しているんだな。」
「そうよ。火星の人間たちの監視も兼ねて。」
「あの看守は…… 」
「そうよ、あの人は、鯣雑さんの監視役。軽い千里眼もちの公安の人間。彼の能力を無効化するために、目にフィルターを入れる手術もしたみたい。なんでそこまでして上の人間は、彼を管理しようとしているのかは知らないけど。」
「あの人がポケットに持っているボタン一つで、彼を爆死させることが出来るわ。」
「もちろん他の看守にも囚人へにも教えられて居ない情報。」
俺は気味が悪くなった。
「じゃあ、長官のことを聞かなかったのも、察しが良かったからじゃなくて? 」
「ええ、私たちの心を見透かされたようね。」
「んな大事なこと事前に言っていてくれよ。」
「鯣雑さんを警戒させたく無かったのよ。分かってちょうだい。」
そうだ。俺にその事を知っていれば、彼にも見透かされることになる。
そうなれば彼は俺たちとの面会を拒否するようになるかもしれない。
最も、看守に心臓を握られているなかで、そのようなことは到底起こすとは思えないが。
そうこう言っているうちに、俺たちは今晩泊まる宿についた。
来賓用の豪華な物では無く、囚人の家族用に作られた質素な建物だ。
「なぁ。まざかここが? 」
「そりゃそうでしょ。私たち一般人であろう人間がVIPなんかに泊まったら怪しまれるし、変に護衛をつける事もできない。」
「分かるでしょ。ここらのゴロツキが、護衛無しでVIPなんかに泊まったらどうなるか。」
明らかに俺たちは寝首を掻かれる。
だが、そこはそんなに問題ではないだろう。
「どっちにしろ潜入どころじゃ無くなるよな。俺だって分かっているよ。」
俺たちはチェックインを済ませると、自分たちの部屋に入った。
「あの鵞利場さん……別に部屋を取るとか…‥. 」
「うっさいわね。この方が安全でしょ。アンタみたいなヤツ、アサシンが来れば、ポックリ殺されかねないんだから。」
確かに、その通りだ。
と俺は自分を納得させる。
部屋は木造の造りで、どこか古代東洋の島国を連想させるような造りになっていた。
部屋の真ん中には囲炉裏、天井から自在鉤が吊るされている。
ご丁寧にも、周り廊下らしきものが付いている。
囲炉裏には橙の火が灯っていたが、お世辞にも温かいとは言えなかった。
火星が寒すぎるせいなのか、はたまた雰囲気を出すために、見た目重視で、東洋民家のハリボテを作っているせいなのか……
すぐに担当の女将さんが入ってきて、挨拶がてらに囲炉裏で東洋料理を作ってくれた。
素朴な味だが、どこか懐かしさを感じる。
俺は東洋人では無いはずだし、東洋料理を食べたこともない。
部屋の雰囲気が、俺に実家のような安心感を与えているのだろうか。
はたまた女将さんが、母親見たいに話してくれるからだろうか。
鵞利場は、女将さんに兄の事を話していた。
女将さんは親身になって聞いてくれたようであったが俺の心は少し痛む。
だが鵞利場は演技でそうしているのでは無く、本当にそうであると思い込んでいるのかもしれない。
女将さんが彼女にそうさせているのだ。
俺も気がつけば彼女の兄になっているようだった。
夕食を終え、浴場で汗を流してから二人床に着く。
俺は目をつぶって寝ようとした。
「ねえ、容疑者の女の人ってどんな人なんだろうね。」
「さあな。スキルホルダーの殺害なんてとんでとねえやつだろ。この監獄は無能力者や、能力の低い奴らを閉じ込めておくための場所とか言われているけどよ。実はとんでもねえやつ、国際政府が自分達から遠ざけたいヤツの肥溜めなんじゃねえか。」
俺は心にも無い事を言った。
「私はそうは思わないわよ。写真のあの人、とても人柄が良さそうだったし。」
「ったく。オブザーバーのくせに、人を見る目が無さすぎるんじゃねえか? 」
ヒューっと隙間風が吹く。
火星の夜はさらに冷え込む。
街全体が凍りつくほどだ。
これでも、星全体を暖房の膜が覆っているらしい。
「北条。寒い。」
「俺もだよ。コリャー寝れないな。」
「寒いって言っているの!! 」
彼女がどうしてほしいのか俺には分からなかったが、
「かったよ。こうか? 」
「えへへ。温かい。」
彼女は俺に警戒していないようであったが、俺はそれどころでは無い。
「コリャー寝れないな。」
「なんか言った? 」
「いいや何も? 」
彼女は『俺が毛布がわりに使われている事を不憫に思っている。』
そう勘違いしているのだ。
彼女の心拍数がだんだん落ちていくとともに、俺の心拍数はどんどん上がっていく。
コリャー本当に寝れそうに無かったし、寒さどころでは無かった。
「アレ、本当か? 」
「えっ? 何が? 」
「鯣雑さんの懲役の話だ。」
彼女はしばしの沈黙……
それからポツポツと話し出した。
「ええ、本当……みたい。」
公安に、そんな極悪人が、協力者として、それで持ってその懲役。
何をすればそんなに重い刑罰がつくのか。
ほぼ終身刑では無いか。
それにそれだけ協力な能力なら、なぜ脳髄を引っこ抜いて、スキルホルダーにしてしまわないのか、なぜそのような人間が、こんな辺境の地で密かに囚われているのか。
「どこから話せばいいかしら。」
彼女も、言葉に困っているようだ。
「これは本堂元長官の話なんだけど。」
「彼は過去に、人々を洗脳して、国家に反旗を翻したようなの。本当の自由を取り戻すんだ。って。」
そこからどうなったかは、俺も想像できた。
俺が捕まった時と凡そ大差はないだろう。
「長官だけが、鯣雑さんの洗脳を打ち消すことが出来たんだな。」
「そうよ。鯣雑さんの能力は、強力な読唇術と、対象者の洗脳。言葉一つで執行者もスキルホルダーも、一瞬で彼の手駒に出来た。」
「その能力を引き出して、誰でも使うように出来るなんて、大家族同盟が許さなかった。だって禁断の果実じゃない。誰がいつそれを奪い取って、世界を塗り替えるか分からない。」
「だからこんな辺境の地に隔離しているんだな。」
「そうよ。火星の人間たちの監視も兼ねて。」
「あの看守は…… 」
「そうよ、あの人は、鯣雑さんの監視役。軽い千里眼もちの公安の人間。彼の能力を無効化するために、目にフィルターを入れる手術もしたみたい。なんでそこまでして上の人間は、彼を管理しようとしているのかは知らないけど。」
「あの人がポケットに持っているボタン一つで、彼を爆死させることが出来るわ。」
「もちろん他の看守にも囚人へにも教えられて居ない情報。」
俺は気味が悪くなった。
「じゃあ、長官のことを聞かなかったのも、察しが良かったからじゃなくて? 」
「ええ、私たちの心を見透かされたようね。」
「んな大事なこと事前に言っていてくれよ。」
「鯣雑さんを警戒させたく無かったのよ。分かってちょうだい。」
そうだ。俺にその事を知っていれば、彼にも見透かされることになる。
そうなれば彼は俺たちとの面会を拒否するようになるかもしれない。
最も、看守に心臓を握られているなかで、そのようなことは到底起こすとは思えないが。
そうこう言っているうちに、俺たちは今晩泊まる宿についた。
来賓用の豪華な物では無く、囚人の家族用に作られた質素な建物だ。
「なぁ。まざかここが? 」
「そりゃそうでしょ。私たち一般人であろう人間がVIPなんかに泊まったら怪しまれるし、変に護衛をつける事もできない。」
「分かるでしょ。ここらのゴロツキが、護衛無しでVIPなんかに泊まったらどうなるか。」
明らかに俺たちは寝首を掻かれる。
だが、そこはそんなに問題ではないだろう。
「どっちにしろ潜入どころじゃ無くなるよな。俺だって分かっているよ。」
俺たちはチェックインを済ませると、自分たちの部屋に入った。
「あの鵞利場さん……別に部屋を取るとか…‥. 」
「うっさいわね。この方が安全でしょ。アンタみたいなヤツ、アサシンが来れば、ポックリ殺されかねないんだから。」
確かに、その通りだ。
と俺は自分を納得させる。
部屋は木造の造りで、どこか古代東洋の島国を連想させるような造りになっていた。
部屋の真ん中には囲炉裏、天井から自在鉤が吊るされている。
ご丁寧にも、周り廊下らしきものが付いている。
囲炉裏には橙の火が灯っていたが、お世辞にも温かいとは言えなかった。
火星が寒すぎるせいなのか、はたまた雰囲気を出すために、見た目重視で、東洋民家のハリボテを作っているせいなのか……
すぐに担当の女将さんが入ってきて、挨拶がてらに囲炉裏で東洋料理を作ってくれた。
素朴な味だが、どこか懐かしさを感じる。
俺は東洋人では無いはずだし、東洋料理を食べたこともない。
部屋の雰囲気が、俺に実家のような安心感を与えているのだろうか。
はたまた女将さんが、母親見たいに話してくれるからだろうか。
鵞利場は、女将さんに兄の事を話していた。
女将さんは親身になって聞いてくれたようであったが俺の心は少し痛む。
だが鵞利場は演技でそうしているのでは無く、本当にそうであると思い込んでいるのかもしれない。
女将さんが彼女にそうさせているのだ。
俺も気がつけば彼女の兄になっているようだった。
夕食を終え、浴場で汗を流してから二人床に着く。
俺は目をつぶって寝ようとした。
「ねえ、容疑者の女の人ってどんな人なんだろうね。」
「さあな。スキルホルダーの殺害なんてとんでとねえやつだろ。この監獄は無能力者や、能力の低い奴らを閉じ込めておくための場所とか言われているけどよ。実はとんでもねえやつ、国際政府が自分達から遠ざけたいヤツの肥溜めなんじゃねえか。」
俺は心にも無い事を言った。
「私はそうは思わないわよ。写真のあの人、とても人柄が良さそうだったし。」
「ったく。オブザーバーのくせに、人を見る目が無さすぎるんじゃねえか? 」
ヒューっと隙間風が吹く。
火星の夜はさらに冷え込む。
街全体が凍りつくほどだ。
これでも、星全体を暖房の膜が覆っているらしい。
「北条。寒い。」
「俺もだよ。コリャー寝れないな。」
「寒いって言っているの!! 」
彼女がどうしてほしいのか俺には分からなかったが、
「かったよ。こうか? 」
「えへへ。温かい。」
彼女は俺に警戒していないようであったが、俺はそれどころでは無い。
「コリャー寝れないな。」
「なんか言った? 」
「いいや何も? 」
彼女は『俺が毛布がわりに使われている事を不憫に思っている。』
そう勘違いしているのだ。
彼女の心拍数がだんだん落ちていくとともに、俺の心拍数はどんどん上がっていく。
コリャー本当に寝れそうに無かったし、寒さどころでは無かった。
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