平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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ファイル:4火星の叛逆者

商業街

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 俺たちは商業街のゲートで門番にパスポートを見せてから全身スキャンをかけられて、中に入ろうとする。
「こ、公安? 」
 そこで鵞利場が門番を宥めた。
「いえ、そんなに警戒しなくて大丈夫ですよ。視察です。優良受刑者たちは今日も元気かなって。」
「はぁ。」
 門番は俺をジロジロと見ている。
 彼の目にどう映っているだろうか?
 彼にとって能力者とは何なんだろうか?
 ここでは、監獄内で態度の良かった能力者・無能力者が商いを開いているらしい。
 中は……相変わらず寒かったのだが、活気付いていて雰囲気が暖かい。
 俺は思わず
「テーマパークに来たみたいだぜ。」
 と呟いてしまった。
「やっぱりここには能力者というだけで連れてこられた人間たちもいるのか? 」
「そうね。私も能力者だから彼らの気持ちはよく分かるわ。中には富豪たちが息子を無罪にするために替え玉として能力者が使われたこともあるって聞くし。」
「ベルフェさんも? 」
「それは違うわ。」
 彼女が食い入るように否定した。
「何で小子はそんなに彼女を否定したがるんだ? 」
「おかしいのは貴方よ。彼女に得されている。女は貴方が思っている以上に嘘つきなんだから。」
 鵞利場は程よいテラスのついた喫茶店を見つけると
「あそこが良さそうね。さぁ情報の整理をしますか。」
 と、話題を逸らした。
 俺たちは椅子に座ると、ウェイトレスが端末を持ってこちらへとやってくる。
 ご注文は?
 俺はメニューを開くと、そのバリエーションの多さに驚愕した。
 火星葡萄ジュースに、火星豆コーヒー、あといも焼酎?
 全部に火星がついている。
 俺は無難にブラックコーヒーを頼むことして、彼女はオレンジジュースを頼んだようだ。
「しっかしなぁ。こんな寒い場所で作物が育つのかよ。」
 鵞利場は指を振った。
「昔は草木一つ生えなかったわ。だから人間が住めなかったの。」
「でも今はね品種改良が行われて、過酷な環境にも耐えうる強い植物が開発されて、人が住める環境になった。それにね、過酷な環境に耐えてストレスを受けた作物は美味しくなるのよ。監獄の経費は、囚人たちが作った作物で賄われていると言っても過言ではないのだから。」
 俺は鯣雑さんが桑を振るっている姿を思い浮かべて少し笑ってしまった。
「さて、本題に入りましょうか。」
 彼女は真剣な顔になる。
「北条は、彼女を見て何か気がつくことは無かった? 」
「『綺麗だ。』ただそれだけだよ。」
 また鵞利場に怒られる。そう思った。だけどコレが素直な感想だ。
「……そうね。」
 彼女は言葉を濁したが、どうやら正解だったらしい。
「髪も整っていたし、化粧もしていた。」
「それの何が問題なんだよ。鵞利場もしているんだろ? 」
「はい、それセクハラ。次やったら労基に訴えるから。」
 めんどくさい。今の何が問題だというのか。
「問題大アリよ。執行者さん。もっと常識を知りなさい? 」
「どう見ても受刑者がして良い格好じゃないでしょ? 」
「どうした? 嫉妬か? 」
 彼女のビンターが飛ぶ。
「今、私が嫉妬していることと、彼女の身だしなみが整っていることは関係ないでしょ。」
「受刑者なんて必要最低限の食事しか与えられないし、嗜好品なんて持っての他なんだから。さっき言ったでしょ。ここの監獄は、ここで育てた作物で生計を立てているの。受刑者の、それも優良受刑者でもない彼女が、あんな扱いをされているなんておかしいわ。」
 俺は首を捻って、知恵を絞って、ありったけの推理をひり出した。
「同情されているとか? 」
「ブブー!!マイナス200小子ポイントよ。」
(ウェイトレスは会話の邪魔をしないように、そっとコースターに飲み物を置いた。)
「あの醜女は看守を籠絡しているわ。絶対にね。」
 冷たい風が吹く。
「あのなぁ。それは話を飛躍させすぎじゃないか? 」
「でもそれなら全ての辻褄が合うわ。そもそも凶悪犯罪者が外出許可なんて出してもらえるわけがないでしょ。」
 俺は気持ちを落ち着けるために、コーヒーを体に流し込んだ。
 冷えた身体が内側から温まる。
 対する鵞利場はこんな環境でもお構いなし、冷たいオレンジジュースをズズッと飲んだ。
「んで?それが何でリベリオンの内通者である証拠になるんだ? 」
「『疑わしきは罰せず。』そうだろ? 」
「『疑わしきは罰せよ。』言ったでしょ公安は疑うのが仕事。ここ一週間で外部と連絡を取ったのも彼女だけ。その彼女も看守を堕として手駒にしている可能性がある。彼らに繋がっていなくても、検挙する十二分な判断材料にはなるわ。彼女は刑期も労役も免れているんだから。」
 彼女はポケットから端末を取り出して、長官の安田へと連絡しようとした。
「圏外? ウソ。ここは火星よ。地球に繋がらないわけが……だって昨日は? 」
「ごめんなさいね僕? 」
 頭に尖った何かを突きつけられる。
 街の喧騒が途絶えた。
 俺は状況を理解すると、能力を鵞利場へと集中させる。

「パン。」

 乾いた銃響が商業街全体へと響き渡る。


 
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