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ファイル:4火星の叛逆者
スターターピストル
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奴だ。奴らが来た。
だが身体が動かない。
身体を負傷した訳ではないが……
「流石、北条家の御子息様ね。」
俺を撃ったのは誰か分かっている。
俺は能力のおかげで頑丈だ。普通の人間なら頭が弾け飛んでいる。
だが
その衝撃まで完全に能力が殺しきれる訳ではない。
「小……子。」
彼女へと手を伸ばす。
彼女を護るのが俺の仕事だ。
その努力虚しく、ベルフェは俺の肩を踏み台にすると、彼女へと襲いかかった。
辺りで悲鳴が聞こえる。
何が起こったかを理解した一人の女性が声を上げたことで、状況を理解した群集たちは右往左往逃げ出した。
中には公安に通報しようとした者もいたが……
「繋がらない!! 」
門の制御も、手錠の効力も失った彼らは、一目散に逃げ出した。
鵞利場はベルフェの傘状の武器を手で払い除けると、彼女を無力化すべく整体電気を流そうとした……
が
「甘いわね。」
ゴム手袋をした左腕で払い除けられて、そのまま組み伏せられる。
そして混乱に紛れてもう一人。
「哀れなもんだな。ここの住民っていうのは…… 」
九条ねえやん。
ベルフェは彼女を見上げると、困った顔で口を開いた。
「九条さん? アナタの仕事は? 」
「ふん。私はアンナ腰抜けどもには興味無いさ。武器を持たせたところで軍の士気を下げさせるだけだ。好きにすれば良いさ。」
俺はベルフェの右手に握られている傘を見た。
大きな『L』の文字。俺はこの印をどこかで見た。
そう。ロバスの身体に刻んであったマーク。
「リングィスト!! 」
動けるようになった俺はベルフェに襲い掛かる。
俺の顎に、彼女の後ろ蹴りが炸裂する。
「男っていうのは。何でこんなに節操が無いの? 神父さんと同じ。ねえ九条さん? 」
「全くだ。なぁ北条。お前はそこのチビと名前で呼び合う仲になったのか? 」
「なぁ九条ねえやん。この後に及んでそんなことが必要か? 」
「いや? ちょっと聞いてみただけだ。心配するな。お前がロリコンだってことに心傷しているだけだよ。」
「北条は年上好きよッ。」
ベルフェが彼女を締め上げる。
「どうどう。おとなしくしていれば、命までは取らないわ。優等生ちゃん。」
俺は衝動的に、彼女へと能力を飛ばした。
「彼女に触れるな!! 」
次元の膜で吹っ飛ばされた彼女は、クルクル回転しがら大勢を立て直すと、傘を使って着地した。
「元気……ね。」
「オイ、ベルフェ。気を抜くな。前行ったようにソイツも魔法使いだ。」
彼女は黒いフリフリの裾をパンパンと叩くと、武器をコチラへ向けた。
「私を誰だとお思いで? 」
手慣れている。
彼女は殺しに慣れているし、この特殊な武器を握ったのも初めてでは無いのだろう。
鵞利場が体勢を立て直した。
「九条は私が押さえておく。その隙に彼女を何とかして? 」
彼女なりの気遣いか……それとも人を疑うという公安のサガか……
だが今の俺にはありがたかった。
俺は九条ねえやんと闘うことができない、いや、ベルフェさんとも戦いたく無いが、まだマシだ。彼女となら。
鵞利場はテラスの傘に飛び乗ると、そのまま九条に向かって行った。
「ベルフェさん。どうして? 」
色々な意味が混ざった言葉が、心の奥底から出た。
俺たちを騙したとか、その他諸々色々混じっているかもしれないが。
彼女のような穏やかな人物が、人を……そうだ。人を殺しているのだ。
人殺しとは、もっとそう、金川のような人物を思い浮かべていた。
「ごめんね力くん? 私にはね。コレしか無いの。悲しい女でしょ? 」
言葉とは相対的な穏やかな笑顔。
「でも君には理解してもらえると思っている。」
「親に捨てられて、シスターやクソ神父に散々な扱いを受けた中で…… 」
「九条さんをはじめとする他のアウトローの人たちは、私を心から必要としてくれたから。」
彼女は俺と一瞬で差を詰めると、刃のように鋭くなった傘で、俺の喉笛を掻き切ろうとする。
"見えない!! "
自分の動体視力が、彼女の動きについて来ない。
久しぶりに本物の殺意というものを感じた。
怒りや憎しみといった黒いモノが入り混じって濁ったモノとは違う。
そう大麻やロバスとは違ったホンモノの殺意。
純粋な真っ白な、ただ相手を殺すというモノに特化した感情。
「そうか、アンタは…… 」
「この力に気づいた時にね。何で自分が捨てられたのか分かったの。どんなに矮小な力でも、やっぱり私もこっち側なんだなぁって。」
「身体のために私を必要とする男の元にいるよりも、身体のために私に嫉妬する女の元にいるよりも。」
「私のこの力を必要としてくれる人たちの元にいる私が一番輝いている。」
「君もそう思わない? 」
俺は解読することのできない恐怖から一歩後ずさってしまう。
「オイ、ベルフェ。奴を殺すなよ。」
ねえやんは、鵞利場の攻撃をかわしながら、ベルフェへと忠告した。
「分かっていますよ九条さん。」
彼女の鋭い眼光がひかる。
俺のために、ねえやんを引き受けてくれている彼女に感化されて、俺も目の前の敵を倒すことだけにシフトする。
そうだ。感情を殺せ。
俺は一歩前に踏み出した。
だが身体が動かない。
身体を負傷した訳ではないが……
「流石、北条家の御子息様ね。」
俺を撃ったのは誰か分かっている。
俺は能力のおかげで頑丈だ。普通の人間なら頭が弾け飛んでいる。
だが
その衝撃まで完全に能力が殺しきれる訳ではない。
「小……子。」
彼女へと手を伸ばす。
彼女を護るのが俺の仕事だ。
その努力虚しく、ベルフェは俺の肩を踏み台にすると、彼女へと襲いかかった。
辺りで悲鳴が聞こえる。
何が起こったかを理解した一人の女性が声を上げたことで、状況を理解した群集たちは右往左往逃げ出した。
中には公安に通報しようとした者もいたが……
「繋がらない!! 」
門の制御も、手錠の効力も失った彼らは、一目散に逃げ出した。
鵞利場はベルフェの傘状の武器を手で払い除けると、彼女を無力化すべく整体電気を流そうとした……
が
「甘いわね。」
ゴム手袋をした左腕で払い除けられて、そのまま組み伏せられる。
そして混乱に紛れてもう一人。
「哀れなもんだな。ここの住民っていうのは…… 」
九条ねえやん。
ベルフェは彼女を見上げると、困った顔で口を開いた。
「九条さん? アナタの仕事は? 」
「ふん。私はアンナ腰抜けどもには興味無いさ。武器を持たせたところで軍の士気を下げさせるだけだ。好きにすれば良いさ。」
俺はベルフェの右手に握られている傘を見た。
大きな『L』の文字。俺はこの印をどこかで見た。
そう。ロバスの身体に刻んであったマーク。
「リングィスト!! 」
動けるようになった俺はベルフェに襲い掛かる。
俺の顎に、彼女の後ろ蹴りが炸裂する。
「男っていうのは。何でこんなに節操が無いの? 神父さんと同じ。ねえ九条さん? 」
「全くだ。なぁ北条。お前はそこのチビと名前で呼び合う仲になったのか? 」
「なぁ九条ねえやん。この後に及んでそんなことが必要か? 」
「いや? ちょっと聞いてみただけだ。心配するな。お前がロリコンだってことに心傷しているだけだよ。」
「北条は年上好きよッ。」
ベルフェが彼女を締め上げる。
「どうどう。おとなしくしていれば、命までは取らないわ。優等生ちゃん。」
俺は衝動的に、彼女へと能力を飛ばした。
「彼女に触れるな!! 」
次元の膜で吹っ飛ばされた彼女は、クルクル回転しがら大勢を立て直すと、傘を使って着地した。
「元気……ね。」
「オイ、ベルフェ。気を抜くな。前行ったようにソイツも魔法使いだ。」
彼女は黒いフリフリの裾をパンパンと叩くと、武器をコチラへ向けた。
「私を誰だとお思いで? 」
手慣れている。
彼女は殺しに慣れているし、この特殊な武器を握ったのも初めてでは無いのだろう。
鵞利場が体勢を立て直した。
「九条は私が押さえておく。その隙に彼女を何とかして? 」
彼女なりの気遣いか……それとも人を疑うという公安のサガか……
だが今の俺にはありがたかった。
俺は九条ねえやんと闘うことができない、いや、ベルフェさんとも戦いたく無いが、まだマシだ。彼女となら。
鵞利場はテラスの傘に飛び乗ると、そのまま九条に向かって行った。
「ベルフェさん。どうして? 」
色々な意味が混ざった言葉が、心の奥底から出た。
俺たちを騙したとか、その他諸々色々混じっているかもしれないが。
彼女のような穏やかな人物が、人を……そうだ。人を殺しているのだ。
人殺しとは、もっとそう、金川のような人物を思い浮かべていた。
「ごめんね力くん? 私にはね。コレしか無いの。悲しい女でしょ? 」
言葉とは相対的な穏やかな笑顔。
「でも君には理解してもらえると思っている。」
「親に捨てられて、シスターやクソ神父に散々な扱いを受けた中で…… 」
「九条さんをはじめとする他のアウトローの人たちは、私を心から必要としてくれたから。」
彼女は俺と一瞬で差を詰めると、刃のように鋭くなった傘で、俺の喉笛を掻き切ろうとする。
"見えない!! "
自分の動体視力が、彼女の動きについて来ない。
久しぶりに本物の殺意というものを感じた。
怒りや憎しみといった黒いモノが入り混じって濁ったモノとは違う。
そう大麻やロバスとは違ったホンモノの殺意。
純粋な真っ白な、ただ相手を殺すというモノに特化した感情。
「そうか、アンタは…… 」
「この力に気づいた時にね。何で自分が捨てられたのか分かったの。どんなに矮小な力でも、やっぱり私もこっち側なんだなぁって。」
「身体のために私を必要とする男の元にいるよりも、身体のために私に嫉妬する女の元にいるよりも。」
「私のこの力を必要としてくれる人たちの元にいる私が一番輝いている。」
「君もそう思わない? 」
俺は解読することのできない恐怖から一歩後ずさってしまう。
「オイ、ベルフェ。奴を殺すなよ。」
ねえやんは、鵞利場の攻撃をかわしながら、ベルフェへと忠告した。
「分かっていますよ九条さん。」
彼女の鋭い眼光がひかる。
俺のために、ねえやんを引き受けてくれている彼女に感化されて、俺も目の前の敵を倒すことだけにシフトする。
そうだ。感情を殺せ。
俺は一歩前に踏み出した。
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