68 / 107
ファイル:4火星の叛逆者
オマエは昔から変わっていないな
しおりを挟む
「いててて…… 」
「女は顔が命だ。絶対に殴るなって私、教えたはずだが。嫌われちまうぞ。」
俺は彼女の元へとゆっくり歩き出した。
「ああ、覚えているよ。髪は触るな、服は汚してやるな。あと…… 時間に寛大であれだったっけな。」
「私はオマエのことが嫌いになった。」
「俺も今の姉さんは嫌いだよ。時間に寛大じゃなくてね。何か生き急いでいるみたいだ。」
「オマエは男だろ? 」
「鵞利場と同じことを言うんだな。」
「オマエ、わざとやっているだろ。そうやって私に見せつけているんだな。」
不意に宇宙で何かが光った。
「人工衛星? 」
俺はそれがなんの光かを今理解した。
「おい!!やめろ!! 」
おそらくリベリオンが用意させた衛星型のレーザー砲だ。
それが起動して、エネルギーを溜め、平等社会へと熱線を落とさんとしている。
「始まったな。」
俺は彼女と自分とを隔てる五メートルの次元を切り取り、彼女の胸ぐらを掴んだ。
「やったなクソ野郎。もう戻れないぞ。」
俺の右手は、無理な動きで、ギシギシと音を立てている。
「だったら。私を殺せば良い。そうすれば、平等社会も無能力者たちも救われる。」
地球から、溢れんばかりの光源が消えた。
さっき人工衛星が狙っていたのは、平等社会の発電所か。
確かテロ対策として、発電所は分散されて建設されていたはず。
それらを全て、あの人工衛星一つで無力化させたのだ。
が俺にはそこまで考えることに頭が回らなかった。
「そんなことできるわけないだろ!! 」
鵞利場は『場合によっては殺せ。』と言った。
「本当はオマエに止めて欲しかった。だって私はオマエを無視して地球に戻ることだって出来たんだからな。この能力を使えば。」
俺は彼女から手を離してしまった。
「そうか……彼女はゆっくり立ち上がる。」
「そうかキミは……聞いた通りの甘ちゃんだな。」
そうやってコトコト歩いてきたのは……
「鯣雑さん!! 」
なぜ彼が……
いや、鵞利場に言われたことを思い出した。
「……アナタもそっち側に付くんですね。」
そうだ。彼の元々の目的は、国家を転覆させること。
そして今は、元長官の本堂守もいない。
俺は当たりを見回した。
彼の護衛は? 爆弾は、停電中でも使えるのか?
「キミが探しているのは……これかしら? 」
「ベルフェさん!! 」
彼女は手に、壊れ血濡れたマイクロボムを持っている。
鯣雑さんの心臓に取り付けられていた彼の枷。
「キミは優しいね。忠告しとくよ。敵に情けをかけるとこうなるってこと。」
九条は二人を引き連れると、ワームホールを開く。
「やっぱり昔から何も変わっていないな。オマエは。」
俺は最後の力を振り絞り、足元で時空に圧力を、加えて、反発力で突進する。
【止まれ】
鯣雑さんの命令に、身体が勝手に反応する。
だが、俺は止まらない。
「邪魔をするな!! 」
「ガツン。」
後頭部をベルフェさんに殴られて、身体がふらつく。
「悪いな北条君。私はもう行くよ。鵞利場ちゃんにもよろしく頼む。」
そう言って彼らは虫食い穴の奥へと消えていった。
電気供給の低下で火星内の酸素が薄くなり始めている。
俺は冷や汗をかきながら、気を失っている鵞利場へと足を引き摺る。
脈はまだある……が、苦しそうだ。
俺は彼女のバックから携帯も用酸素ボンベを取り出して、彼女に取り付ける。
"早くここから出ないと!! "
俺は彼女をおぶると、そのまま宇宙ステーションを目指す。
少し行くと、鯣雑さんの護衛をしていた看守が胸から血を出して倒れていた。
俺はさらに進み、また一歩また一歩と踏み出す。
ここには非常用電源があり、まだ酸素の供給が続いていた。
しかし。
「ここから出してくれ!! 」
「緊急自体だ!! 早く船を出せ。」
脱獄した囚人や、そこで働く人たちでいっぱいになっており、お世辞にも酸素が十二分とは言えない。と言うか、喚き立てる人々のせいで、余計に酸素が消費されている様な気がする。
船が出ない理由。
それは分かった。
「電力が足りないんだ。」
俺はステーションから出た。
息苦しい。
俺もやむおえず携帯用の酸素ボンベを使う。
「ごめんな鵞利場、一つ借りるぞ。」
身体に冷たい風が吹き込む。
暖房が切れたせいだ。
彼女の身体が冷たくなっていく。
「北条ぅ~あったかーい。」
まずい。この状況は
何か手は?
俺は農園の話を思い出し、火星の農園へと足を踏み入れた。
「少しの間だ。」
能力を使い。作物たちを、俺の力で密閉する。
コレで体温低下と、酸素の供給はしばらくは……
宇宙で何かが光った。
救援用のスターシップだ!!
俺が手を振ると、それはゆっくりとこちらに降下し、俺の能力の中で、ハッチを開いた。
「安田さん!! 」
「最悪の事態ね。」
彼女は俺を睨んだ。
「いえ、不幸中の幸いです。早く鵞利場さんを連れて中に。」
宜野座さんが珍しく取り乱している。
そりゃーそうだ。
俺が彼女を殺していれば、こんなことにはならなかったんだから。
「女は顔が命だ。絶対に殴るなって私、教えたはずだが。嫌われちまうぞ。」
俺は彼女の元へとゆっくり歩き出した。
「ああ、覚えているよ。髪は触るな、服は汚してやるな。あと…… 時間に寛大であれだったっけな。」
「私はオマエのことが嫌いになった。」
「俺も今の姉さんは嫌いだよ。時間に寛大じゃなくてね。何か生き急いでいるみたいだ。」
「オマエは男だろ? 」
「鵞利場と同じことを言うんだな。」
「オマエ、わざとやっているだろ。そうやって私に見せつけているんだな。」
不意に宇宙で何かが光った。
「人工衛星? 」
俺はそれがなんの光かを今理解した。
「おい!!やめろ!! 」
おそらくリベリオンが用意させた衛星型のレーザー砲だ。
それが起動して、エネルギーを溜め、平等社会へと熱線を落とさんとしている。
「始まったな。」
俺は彼女と自分とを隔てる五メートルの次元を切り取り、彼女の胸ぐらを掴んだ。
「やったなクソ野郎。もう戻れないぞ。」
俺の右手は、無理な動きで、ギシギシと音を立てている。
「だったら。私を殺せば良い。そうすれば、平等社会も無能力者たちも救われる。」
地球から、溢れんばかりの光源が消えた。
さっき人工衛星が狙っていたのは、平等社会の発電所か。
確かテロ対策として、発電所は分散されて建設されていたはず。
それらを全て、あの人工衛星一つで無力化させたのだ。
が俺にはそこまで考えることに頭が回らなかった。
「そんなことできるわけないだろ!! 」
鵞利場は『場合によっては殺せ。』と言った。
「本当はオマエに止めて欲しかった。だって私はオマエを無視して地球に戻ることだって出来たんだからな。この能力を使えば。」
俺は彼女から手を離してしまった。
「そうか……彼女はゆっくり立ち上がる。」
「そうかキミは……聞いた通りの甘ちゃんだな。」
そうやってコトコト歩いてきたのは……
「鯣雑さん!! 」
なぜ彼が……
いや、鵞利場に言われたことを思い出した。
「……アナタもそっち側に付くんですね。」
そうだ。彼の元々の目的は、国家を転覆させること。
そして今は、元長官の本堂守もいない。
俺は当たりを見回した。
彼の護衛は? 爆弾は、停電中でも使えるのか?
「キミが探しているのは……これかしら? 」
「ベルフェさん!! 」
彼女は手に、壊れ血濡れたマイクロボムを持っている。
鯣雑さんの心臓に取り付けられていた彼の枷。
「キミは優しいね。忠告しとくよ。敵に情けをかけるとこうなるってこと。」
九条は二人を引き連れると、ワームホールを開く。
「やっぱり昔から何も変わっていないな。オマエは。」
俺は最後の力を振り絞り、足元で時空に圧力を、加えて、反発力で突進する。
【止まれ】
鯣雑さんの命令に、身体が勝手に反応する。
だが、俺は止まらない。
「邪魔をするな!! 」
「ガツン。」
後頭部をベルフェさんに殴られて、身体がふらつく。
「悪いな北条君。私はもう行くよ。鵞利場ちゃんにもよろしく頼む。」
そう言って彼らは虫食い穴の奥へと消えていった。
電気供給の低下で火星内の酸素が薄くなり始めている。
俺は冷や汗をかきながら、気を失っている鵞利場へと足を引き摺る。
脈はまだある……が、苦しそうだ。
俺は彼女のバックから携帯も用酸素ボンベを取り出して、彼女に取り付ける。
"早くここから出ないと!! "
俺は彼女をおぶると、そのまま宇宙ステーションを目指す。
少し行くと、鯣雑さんの護衛をしていた看守が胸から血を出して倒れていた。
俺はさらに進み、また一歩また一歩と踏み出す。
ここには非常用電源があり、まだ酸素の供給が続いていた。
しかし。
「ここから出してくれ!! 」
「緊急自体だ!! 早く船を出せ。」
脱獄した囚人や、そこで働く人たちでいっぱいになっており、お世辞にも酸素が十二分とは言えない。と言うか、喚き立てる人々のせいで、余計に酸素が消費されている様な気がする。
船が出ない理由。
それは分かった。
「電力が足りないんだ。」
俺はステーションから出た。
息苦しい。
俺もやむおえず携帯用の酸素ボンベを使う。
「ごめんな鵞利場、一つ借りるぞ。」
身体に冷たい風が吹き込む。
暖房が切れたせいだ。
彼女の身体が冷たくなっていく。
「北条ぅ~あったかーい。」
まずい。この状況は
何か手は?
俺は農園の話を思い出し、火星の農園へと足を踏み入れた。
「少しの間だ。」
能力を使い。作物たちを、俺の力で密閉する。
コレで体温低下と、酸素の供給はしばらくは……
宇宙で何かが光った。
救援用のスターシップだ!!
俺が手を振ると、それはゆっくりとこちらに降下し、俺の能力の中で、ハッチを開いた。
「安田さん!! 」
「最悪の事態ね。」
彼女は俺を睨んだ。
「いえ、不幸中の幸いです。早く鵞利場さんを連れて中に。」
宜野座さんが珍しく取り乱している。
そりゃーそうだ。
俺が彼女を殺していれば、こんなことにはならなかったんだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
草食系ヴァンパイアはどうしていいのか分からない!!
アキナヌカ
ファンタジー
ある時、ある場所、ある瞬間に、何故だか文字通りの草食系ヴァンパイアが誕生した。
思いつくのは草刈りとか、森林を枯らして開拓とか、それが実は俺の天職なのか!?
生まれてしまったものは仕方がない、俺が何をすればいいのかは分からない!
なってしまった草食系とはいえヴァンパイア人生、楽しくいろいろやってみようか!!
◇以前に別名で連載していた『草食系ヴァンパイアは何をしていいのかわからない!!』の再連載となります。この度、完結いたしました!!ありがとうございます!!評価・感想などまだまだおまちしています。ピクシブ、カクヨム、小説家になろうにも投稿しています◇
四人の令嬢と公爵と
オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」
ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。
人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが……
「おはよう。よく眠れたかな」
「お前すごく可愛いな!!」
「花がよく似合うね」
「どうか今日も共に過ごしてほしい」
彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。
一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。
※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる