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療養休暇
悪運の強い俺
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俺が目を覚ますと。
そこは病院だ。
りんごを剥いて自分で食べていた宜野座さんは驚くこともなく、一切れを加えて病室の外に走っていってしまった。
なんだかアレからすごい時間がかかったようであって、うまく声を出せない。
しばらくすると、買い物袋を抱えた本堂と安田さん、そして鵞利場が病室に入ってきた。
「思ってたんと違う。」
それが俺が目を覚ましてから一番最初に発した言葉だった。
「ごめんなさい。お医者さんは命に別状は無いし、ただの睡眠不足だってそうおっしゃるものだから。」
ムカつく女だ。
「あの時とは逆ですね。鵞利場小子オブザーバー。」
彼女は眉間に皺を寄せると、病み上がりの俺の胸ぐらを掴んだ。
「それ、言ったら殺すって言わなかった? 」
そうだ。リングィストの時と逆。
全く正反対では無いか。
俺は、ハッと気がついて、安田さんに質問した。
「俺や本堂さんの処置は? 」
「本来はねアナタたちは裁判にかけられて、正式に処刑されるつもりだったんだけど、大兄弟助が生きているってことを知らせたら、顔を青ざめて、『処遇は君に任せる。』ですって。面白い人ねホント。」
俺は安堵し、立ちあがろうとする。
「イテッ。」
「やっぱりですか。北条さんの腹部の呪いは…… 」
俺は慌てて腹部のゲイボルグに貫かれたであろう場所を見た。
キズはスッカリつながっているはずなのに、赤黒いアザが残っている。
「あのヤブ医者め。」
命に別状は無いと言えばそうだけどさ。
「抜糸はもう済んでいるのに、キズは残っている。おそらくこの槍が原因だと。議会でもそう結果が出たわ。」
安田が、ゲイボルグを取り出し、俺の前に置いた。
「だったらッ。」
「やめなさい。」
鵞利場が俺の右手を押さえる。
それと共にものすごい激痛が走った。
おそらくこの槍が俺にそうしているのだ。
「この槍を破壊すれば、君の呪いは消えて、アザはスッカリ無くなるだろう。」
「しかしだね北条くん。それは大兄弟助も同じ。全快した彼は再びこの世界に攻め込み、そうなれば、今度こそ私たちは負ける。」
「ゲイボルグは折らずに残しておく。議会はそう答えを下した。」
「ならどうするんだよ。」
「ならどうするか。」
* * *
「ここは? 」
俺は自然生い茂る秘境、いや、それを模した3D映像転写室へと連れて来られた。
「じゃあね私は選挙で仕事が山積みだから。」
「センキョ? センキョってなんだよ。」
「バタン。」
俺は急いで出口まで走って行き、扉のドアノブに触ろうとした。
しかし、俺がそこにきた頃にはドアノブは無くなっており、代わりに大樹が俺の前に急に現れて顔をぶつける。
「ったぁ。」
鼻が低くて助かった。
いや、そうじゃねえだろ。
[食事は三食用意するから。じゃあまたね。]
「任務は? 」
[鵞利場ちゃんと本堂さんがいれば治安維持はなんとかなるわ。実際、君がいない時もなんとかなってたわけだし。]
俺は諦めて座り込んだ。
つうかどうすんだよ。
武器と俺をこんなところに閉じ込めてよ。
相手は無機物。
呪いを解いてもらうにしても、対話ができないのならそもそも不可能じゃ無いのか?
俺は赤い槍に触ってみることにした。
「アイタタ。」
腹部にまた激痛が走る。
この武器は意志を持っているのか?
俺はゲイボルグに話しかけてみることにする。
「なぁ。それ、辞めてくれよ。痛いんだよ。てかよ。親に教わらなかったか?『人を無闇に傷つけるな。』って。」
---クスクス。流石にそれは承諾しかねますわね。人を痛めつけること。それが私の存在意義ですから---
その回答に俺は怒りを覚えた。
「良い気になってんじゃねえぞ武器の分際で。今すぐお前をへし折ったやる。俺は魔法使いなんだからな。お前なんて小指でぶっ潰せるぜテテテェぇぇ。」
涙が出るほど痛い。腹部の呪いは、さらに力を増した。
---失礼しました。マスター。私ったら。でも許してくださいね。私たちは本能的に人を傷つけるようにできているんです---
マスター? 俺がいつコイツのご主人様になったと言うのか。
---まぁ、そんな顔をなさって。傷つきますわ。私たち。共に創造主様を傷つけた仲ではありませんか? ---
そうだ。俺はゲイボルグを握り、大兄弟助をめったザシにした。
だけども、俺を主人と認識しているのなら、俺をここまで痛めつける意味もないだろう。
「そうかよ。サディストなんだなお前は。」
また腹が痛む。
確信した。
コイツは鵞利場と同類だ。
---ご主人様ったら酷い---
彼女はスマシた垂れ目を赤く腫れさせると、その場で泣き始めてしまった。
「みんなそう言うんだよ。コラ、泣いたら許されると思うなよ。」
腹部が捻じ切れそうになる。
「アガガガガガガガガガ。ごめんなさい、ギブアップ。分かった。分かったから。」
俺は草原に寝転がった。
どうも上手く行く気がしない。
コイツとは話しが合わないし、そもそも、コイツは俺の呪いを解く気がない。
コイツは俺の弱みを握っているからか?
いや、違う気がする。
話が噛み合っていないのだ。
俺は寝返りを打ち、ゲイボルグと反対の方向へ向いた。
近くに小川が見える。
水流の音を聞きながら、俺は目を閉じた。
そこは病院だ。
りんごを剥いて自分で食べていた宜野座さんは驚くこともなく、一切れを加えて病室の外に走っていってしまった。
なんだかアレからすごい時間がかかったようであって、うまく声を出せない。
しばらくすると、買い物袋を抱えた本堂と安田さん、そして鵞利場が病室に入ってきた。
「思ってたんと違う。」
それが俺が目を覚ましてから一番最初に発した言葉だった。
「ごめんなさい。お医者さんは命に別状は無いし、ただの睡眠不足だってそうおっしゃるものだから。」
ムカつく女だ。
「あの時とは逆ですね。鵞利場小子オブザーバー。」
彼女は眉間に皺を寄せると、病み上がりの俺の胸ぐらを掴んだ。
「それ、言ったら殺すって言わなかった? 」
そうだ。リングィストの時と逆。
全く正反対では無いか。
俺は、ハッと気がついて、安田さんに質問した。
「俺や本堂さんの処置は? 」
「本来はねアナタたちは裁判にかけられて、正式に処刑されるつもりだったんだけど、大兄弟助が生きているってことを知らせたら、顔を青ざめて、『処遇は君に任せる。』ですって。面白い人ねホント。」
俺は安堵し、立ちあがろうとする。
「イテッ。」
「やっぱりですか。北条さんの腹部の呪いは…… 」
俺は慌てて腹部のゲイボルグに貫かれたであろう場所を見た。
キズはスッカリつながっているはずなのに、赤黒いアザが残っている。
「あのヤブ医者め。」
命に別状は無いと言えばそうだけどさ。
「抜糸はもう済んでいるのに、キズは残っている。おそらくこの槍が原因だと。議会でもそう結果が出たわ。」
安田が、ゲイボルグを取り出し、俺の前に置いた。
「だったらッ。」
「やめなさい。」
鵞利場が俺の右手を押さえる。
それと共にものすごい激痛が走った。
おそらくこの槍が俺にそうしているのだ。
「この槍を破壊すれば、君の呪いは消えて、アザはスッカリ無くなるだろう。」
「しかしだね北条くん。それは大兄弟助も同じ。全快した彼は再びこの世界に攻め込み、そうなれば、今度こそ私たちは負ける。」
「ゲイボルグは折らずに残しておく。議会はそう答えを下した。」
「ならどうするんだよ。」
「ならどうするか。」
* * *
「ここは? 」
俺は自然生い茂る秘境、いや、それを模した3D映像転写室へと連れて来られた。
「じゃあね私は選挙で仕事が山積みだから。」
「センキョ? センキョってなんだよ。」
「バタン。」
俺は急いで出口まで走って行き、扉のドアノブに触ろうとした。
しかし、俺がそこにきた頃にはドアノブは無くなっており、代わりに大樹が俺の前に急に現れて顔をぶつける。
「ったぁ。」
鼻が低くて助かった。
いや、そうじゃねえだろ。
[食事は三食用意するから。じゃあまたね。]
「任務は? 」
[鵞利場ちゃんと本堂さんがいれば治安維持はなんとかなるわ。実際、君がいない時もなんとかなってたわけだし。]
俺は諦めて座り込んだ。
つうかどうすんだよ。
武器と俺をこんなところに閉じ込めてよ。
相手は無機物。
呪いを解いてもらうにしても、対話ができないのならそもそも不可能じゃ無いのか?
俺は赤い槍に触ってみることにした。
「アイタタ。」
腹部にまた激痛が走る。
この武器は意志を持っているのか?
俺はゲイボルグに話しかけてみることにする。
「なぁ。それ、辞めてくれよ。痛いんだよ。てかよ。親に教わらなかったか?『人を無闇に傷つけるな。』って。」
---クスクス。流石にそれは承諾しかねますわね。人を痛めつけること。それが私の存在意義ですから---
その回答に俺は怒りを覚えた。
「良い気になってんじゃねえぞ武器の分際で。今すぐお前をへし折ったやる。俺は魔法使いなんだからな。お前なんて小指でぶっ潰せるぜテテテェぇぇ。」
涙が出るほど痛い。腹部の呪いは、さらに力を増した。
---失礼しました。マスター。私ったら。でも許してくださいね。私たちは本能的に人を傷つけるようにできているんです---
マスター? 俺がいつコイツのご主人様になったと言うのか。
---まぁ、そんな顔をなさって。傷つきますわ。私たち。共に創造主様を傷つけた仲ではありませんか? ---
そうだ。俺はゲイボルグを握り、大兄弟助をめったザシにした。
だけども、俺を主人と認識しているのなら、俺をここまで痛めつける意味もないだろう。
「そうかよ。サディストなんだなお前は。」
また腹が痛む。
確信した。
コイツは鵞利場と同類だ。
---ご主人様ったら酷い---
彼女はスマシた垂れ目を赤く腫れさせると、その場で泣き始めてしまった。
「みんなそう言うんだよ。コラ、泣いたら許されると思うなよ。」
腹部が捻じ切れそうになる。
「アガガガガガガガガガ。ごめんなさい、ギブアップ。分かった。分かったから。」
俺は草原に寝転がった。
どうも上手く行く気がしない。
コイツとは話しが合わないし、そもそも、コイツは俺の呪いを解く気がない。
コイツは俺の弱みを握っているからか?
いや、違う気がする。
話が噛み合っていないのだ。
俺は寝返りを打ち、ゲイボルグと反対の方向へ向いた。
近くに小川が見える。
水流の音を聞きながら、俺は目を閉じた。
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