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療養休暇
新たな任務
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俺はたくさんの紙袋を持ったまま、宜野座さんに連れられて、公安の長官室へと入った。
「やあ。北条君。その様子じゃ、ゲイボルグと正式に契約したみたいだね。」
本堂の視線が俺の右肩に向けられる。
俺の担いでいる無数の紙袋を見ているのではない。
その後ろから覗いでいるディープクリムゾンの穂を見ているのだ。
「ええ。本堂長官こそ、ご無事で。あなたが来てくれなければ、俺もみんなも大兄弟助にやられていた。」
長官はいつのまにか魔法すら打ち消せれる存在となっていたらしい。
ワールド221で何があったのか、また時間があったら詳しく聞いてみることにしよう。
彼は無言でこっくり頷いてから、次に俺の持っている紙袋を見渡した。
「ありがとう。宜野座君を手伝ってくれたのだね。」
それから宜野座さんの方を見た。
「宜野座くん。悪いけど席を外してもらえるかな。」
彼女は「分かりました。」とそう一言だけ言い残して、長官室から出ていった。
「紙袋は……そうだねそこの机にでも置いてもらって、楽にして聞いてくれたまえ。」
長官が俺を呼び出した意味。
そんなことは分かりきっていた。
「平等社会で不穏なことが起こったのですね。」
彼は手を組むと机に肘をついた。
「そうだ。君は話が早くて助かる。」
「臨時政府の話は、もう宜野座君から聞いたかな? 」
俺は宜野座さんとの会話を思い出して、コックリ頷いた。
「小耳には挟みましたよ。安田長官が総統になったって。」
「そうだ。先日のこともあって、ビック・ファーザーの、大家族同盟の信頼は失墜した。代わりに総統の役を引き受けたのが、安田倫子だよ。」
一時的にとはいえ、安田長官が総統となったということは、それをよく思わないモノも当然出てくる。
俺は単刀直入に言った。
「殺害予告か? それとも暗殺計画の情報が出回っているとか。」
本堂は手振りをやめると真剣な顔になり、話すのをやめる。
「ビック・ファーザー、保守側の人間が、リベリオンの残党と手を組み、クーデターを起こそうとしている。」
「なるほど謀反か。」
本堂は手を広げてたまげてみせた。
「随分と丸くなったなキミは。謀反だなんて。大兄弟助を倒したのは、安田倫子じゃなくて君だろ? 」
「そっくりそのまま返すぜ長官さんよ。」
彼は咳払いした。
「でもなぜリベリオンが、敵対勢力である保守派と? 」
「キミにでも、おおよそ予想はつくだろう? 」
「んまあ、自分に味方すれば、リベリオンたちの権利を約束すると、そう言ったんだろうな。」
彼はゆっくりと頷く。
「おそらくそんな感じだろう。今のリベリオンには協力なリーダーがいない。団員をまとめるにも、それ相応の口実がいる。たとえ、それが罠だったとしても。」
彼は続ける。
「それは私たちにとってはどうでもいいことなんだ。彼が彼らに権利を与えようと、臣民を管理するために、彼らを『公安』として雇おうと、裏切って切り捨てて、最悪十字架で火炙りにしようとね。」
彼が言おうとしていることは、俺にも理解できた。
「どのような組織であれ、軍部に力があるのは火を見るより明らかだ。ビック・ファーザーには、暴れ馬の手綱を引く力も、それをムチで懲らしめる力も持っていない。」
「素晴らしい。」
本堂は、頭の上で手を叩きながら、俺を煽てる。
「ビック・ファーザーにはもう、官僚どもを従える力なぞ残っていない。だからこそ、あんなゴロツキどもを雇う羽目になっているのだが。」
「問題はそのゴロツキの方だよ。」
「資金や情報、兵器など、さまざまな援助を受けた反社どもが、どうなるかはキミにも想像がつくだろう。」
「十中八九、暴走するだろうな。おそらくリベリオン側も、この状況を逆に利用してやろうと考えている。あわよくば、自分たちがこの街を支配するつもりだ。」
「そうそう。軍部のクーデターなんて、古今東西、いつの時代にも起こりゆることだったんだよ。保守派は自分たちが本当に、『ここ』へ戻れると思っているバカなのか、ネコに追い詰められたドブネズミが起死回生を狙っているのか私には分かりかねるがね。」
「っと話が逸れたね。」
「つまり、俺の仕事は、リベリオンの陰謀を未然に防ぐこと。」
本堂長官が指を振る。
「ちゃんとビック・ファーザーも眼中にいれたまへ。この不安定な黎明期、何が起こるか分からない。」
俺は、今はもう機能していない、手枷を上に翳した。
本堂は、面白可笑しく首を傾げてみせた。
「今度は誰が俺のバディーになるんだって言っているんだ。」
「彼女なら、公務で忙しい。」
またかヨォ~~
俺は心の中で叫んだ。
「なんなら私が一緒に調査しても良いんだが。」
「遠慮しとくよ野郎二人で……むさ苦しい。」
となると。
「なんなら誰が俺の手綱を握るっていうんだ? 」
「何を言ってるんだキミは? 自分のことぐらい自分で管理したまえ。」
「裏切るかもしれねえぞ。なんだって俺はバットマンの用心棒だった男だからな。」
「その心配はないよ。だってもうキミは『こっち側』の人間じゃ無いか。」
「やあ。北条君。その様子じゃ、ゲイボルグと正式に契約したみたいだね。」
本堂の視線が俺の右肩に向けられる。
俺の担いでいる無数の紙袋を見ているのではない。
その後ろから覗いでいるディープクリムゾンの穂を見ているのだ。
「ええ。本堂長官こそ、ご無事で。あなたが来てくれなければ、俺もみんなも大兄弟助にやられていた。」
長官はいつのまにか魔法すら打ち消せれる存在となっていたらしい。
ワールド221で何があったのか、また時間があったら詳しく聞いてみることにしよう。
彼は無言でこっくり頷いてから、次に俺の持っている紙袋を見渡した。
「ありがとう。宜野座君を手伝ってくれたのだね。」
それから宜野座さんの方を見た。
「宜野座くん。悪いけど席を外してもらえるかな。」
彼女は「分かりました。」とそう一言だけ言い残して、長官室から出ていった。
「紙袋は……そうだねそこの机にでも置いてもらって、楽にして聞いてくれたまえ。」
長官が俺を呼び出した意味。
そんなことは分かりきっていた。
「平等社会で不穏なことが起こったのですね。」
彼は手を組むと机に肘をついた。
「そうだ。君は話が早くて助かる。」
「臨時政府の話は、もう宜野座君から聞いたかな? 」
俺は宜野座さんとの会話を思い出して、コックリ頷いた。
「小耳には挟みましたよ。安田長官が総統になったって。」
「そうだ。先日のこともあって、ビック・ファーザーの、大家族同盟の信頼は失墜した。代わりに総統の役を引き受けたのが、安田倫子だよ。」
一時的にとはいえ、安田長官が総統となったということは、それをよく思わないモノも当然出てくる。
俺は単刀直入に言った。
「殺害予告か? それとも暗殺計画の情報が出回っているとか。」
本堂は手振りをやめると真剣な顔になり、話すのをやめる。
「ビック・ファーザー、保守側の人間が、リベリオンの残党と手を組み、クーデターを起こそうとしている。」
「なるほど謀反か。」
本堂は手を広げてたまげてみせた。
「随分と丸くなったなキミは。謀反だなんて。大兄弟助を倒したのは、安田倫子じゃなくて君だろ? 」
「そっくりそのまま返すぜ長官さんよ。」
彼は咳払いした。
「でもなぜリベリオンが、敵対勢力である保守派と? 」
「キミにでも、おおよそ予想はつくだろう? 」
「んまあ、自分に味方すれば、リベリオンたちの権利を約束すると、そう言ったんだろうな。」
彼はゆっくりと頷く。
「おそらくそんな感じだろう。今のリベリオンには協力なリーダーがいない。団員をまとめるにも、それ相応の口実がいる。たとえ、それが罠だったとしても。」
彼は続ける。
「それは私たちにとってはどうでもいいことなんだ。彼が彼らに権利を与えようと、臣民を管理するために、彼らを『公安』として雇おうと、裏切って切り捨てて、最悪十字架で火炙りにしようとね。」
彼が言おうとしていることは、俺にも理解できた。
「どのような組織であれ、軍部に力があるのは火を見るより明らかだ。ビック・ファーザーには、暴れ馬の手綱を引く力も、それをムチで懲らしめる力も持っていない。」
「素晴らしい。」
本堂は、頭の上で手を叩きながら、俺を煽てる。
「ビック・ファーザーにはもう、官僚どもを従える力なぞ残っていない。だからこそ、あんなゴロツキどもを雇う羽目になっているのだが。」
「問題はそのゴロツキの方だよ。」
「資金や情報、兵器など、さまざまな援助を受けた反社どもが、どうなるかはキミにも想像がつくだろう。」
「十中八九、暴走するだろうな。おそらくリベリオン側も、この状況を逆に利用してやろうと考えている。あわよくば、自分たちがこの街を支配するつもりだ。」
「そうそう。軍部のクーデターなんて、古今東西、いつの時代にも起こりゆることだったんだよ。保守派は自分たちが本当に、『ここ』へ戻れると思っているバカなのか、ネコに追い詰められたドブネズミが起死回生を狙っているのか私には分かりかねるがね。」
「っと話が逸れたね。」
「つまり、俺の仕事は、リベリオンの陰謀を未然に防ぐこと。」
本堂長官が指を振る。
「ちゃんとビック・ファーザーも眼中にいれたまへ。この不安定な黎明期、何が起こるか分からない。」
俺は、今はもう機能していない、手枷を上に翳した。
本堂は、面白可笑しく首を傾げてみせた。
「今度は誰が俺のバディーになるんだって言っているんだ。」
「彼女なら、公務で忙しい。」
またかヨォ~~
俺は心の中で叫んだ。
「なんなら私が一緒に調査しても良いんだが。」
「遠慮しとくよ野郎二人で……むさ苦しい。」
となると。
「なんなら誰が俺の手綱を握るっていうんだ? 」
「何を言ってるんだキミは? 自分のことぐらい自分で管理したまえ。」
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