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ファイル:5ネオ・リベリオン
東洋のサムライ
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俺は公安の建物を出ると、行き交う人混みの中に紛れた。
辺りを見回すが、俺のことを見ている人間などもう居ない。
自意識過剰?
それもそうかもしれない。
だけどそれも仕方ないのだ。
能力者なら誰でもそうだ。
俺たちにつけられていた「枷」の存在はあまりにも大きすぎた。
こうして一般人に紛れていることすら奇跡なのだ。
俺はもっとピリピリとした無能力者たちを想像していたが、(そりゃあそうだろう。自分を殺せるかもしれないバケモノが、自分たちに紛れて何気なく生活を送っていると思うと、外も出歩けないはずだ。)人間とは、こうも早く環境に慣れてしまうのかと、感嘆してしまう。
あまり視界を広げるのは良くない。
目立つのは良くない。
怪しまれれば、怪しまれるほど、俺の身が危なくなる。
俺はアリもしない恐怖に怯えていた。
もし、能力者が手錠をかけられる時代に戻ったら……
「小子ぉ。」
彼女がいてくれれば、多少はこの気持ちも和らげてることができたかも知れない。
だが、残念ながら彼女は仕事だ。
俺は一息ついて、気持ちを落ち着かせてから、自分の目的を思い出す。
「どーすっかな。」
リベリオンの残党を叩け。
本堂の言葉を思い出す。
が、自分にはそのような操作能力などない。どちらかといえば、その担当は相棒の方だ。
俺は思考を切り替えるために、裏路地へと入った。
「おい、さっきから俺のことをねちっこくつけ回して。」
「目的はなんだ? 」
路地の奥から冷たい風が吹く。
ここで何も答えが無ければ、俺はただの痛い奴だ。
額に汗が伝っているのが分かる。
だが、確かに手ごたえがあった。
俺に対する静かな殺意が、俺の背中を撫でていたのだから。
痺れを切らしたように見慣れた侍が俺の前に現れた。
「我が尾行に気づくとは、流石、リーダーを退けただけはある。」
「玉鉄、探す手間が省けたぜ。」
「臨時のリーダー、金川からの命令だ。貴殿を足止めしろとな。」
「ほう、俺も買い被られたもんだな。奴は俺を殺せとは言わなかったわけか。」
「某も捕まるわけにはいかんのでな。みんなのためにも。」
俺は自然に戦闘態勢へと移行した。自身に染みついた、武術のクセで、だ。
右手を構えながら、俺は彼に問うた。
「なぜ、この後に及んでまでも、お前らは俺たちと敵対しようとしている? 公安はアンタたちをむやみに刺激しようとしていないはずだ。」
玉鉄は両手から鋼の刃を出現させると、左右にヒュンヒュン振り、俺へ向けて構えた。
「火星の囚人たちは、軽犯罪者が多い。故に社会復帰できるものも少なくないだろう。」
「だがな北条。我々リベリオンには特異体質が多い。その人間たちが、無能力者たちの中に溶け込んで、彼らと同じ生活を送る事は不可能だ。」
「万城のことか。」
「作用、西郷どのも働けるかどうか怪しい。かの女は生まれながらにしての殺し屋だ。それに……生活力がない。」
「ベルフェどのも、彼女も学がない。だがそれも仕方ないことなのだが。」
「北条、我々はな、コッチの世界に染まりすぎてしまった。だから陽の光に当たることなど出来んのだよ。」
玉鉄が一歩前に出る。
彼の影が、建物の影へと姿を消した。
上等じゃないか。
「なぜ諦める?」
彼は無言で俺の言葉を否定し、ゆっくりと首を振る。
「みな、北条のようになれるわけではない。貴殿は学もあるし、武術もあれば、家柄のコネもある。能力者だと言うことを隠せば、公安をやめて、他の無能力者と同じ人生を送ることも可能だろう。」
万城にはおそらく、人の全てが見えている。
力を抑えていても、他人の感情が彼女の両眼から消える事は永遠に無いのだろう。
玉鉄や、ベルフェ、西郷や、炎道の能力とは違う。
彼女たちは、能力行使をしなければ、無能力者たちと、何の大差も無いのだ。
「人間とはなぁ、北条、外見は変われても内面の奥深くまでも変わる事は出来ない。口では能力者の人権を訴えようとも、心では彼らを蔑み、恐れている。」
「その世界で彼女は果たして生きていけるであろうか? 」
彼の細目から、鋭い眼光が覗く。
「だから金川はリーダになり、能力者優位の世界を作ろうとしているのか? 」
「そうだ、九条が居なくなった今、某に出来るのは、彼らを導くこと。」
彼の意思は厚い。
ならば俺ができる事は、それを砕くこと……のみ。
「背中の槍は……ぬかぬのか。ようやく、貴殿も武士道というものに目覚めたのだな。」
「勘違いすんな。コレは俺のケジメだ。」
俺たちは互いに互いを理解した。
どうやら、拳でしか議論に答えを見出すことが出来ないようだ。
陽の光も入らないような暗がりで、二つの影が交差した。
辺りを見回すが、俺のことを見ている人間などもう居ない。
自意識過剰?
それもそうかもしれない。
だけどそれも仕方ないのだ。
能力者なら誰でもそうだ。
俺たちにつけられていた「枷」の存在はあまりにも大きすぎた。
こうして一般人に紛れていることすら奇跡なのだ。
俺はもっとピリピリとした無能力者たちを想像していたが、(そりゃあそうだろう。自分を殺せるかもしれないバケモノが、自分たちに紛れて何気なく生活を送っていると思うと、外も出歩けないはずだ。)人間とは、こうも早く環境に慣れてしまうのかと、感嘆してしまう。
あまり視界を広げるのは良くない。
目立つのは良くない。
怪しまれれば、怪しまれるほど、俺の身が危なくなる。
俺はアリもしない恐怖に怯えていた。
もし、能力者が手錠をかけられる時代に戻ったら……
「小子ぉ。」
彼女がいてくれれば、多少はこの気持ちも和らげてることができたかも知れない。
だが、残念ながら彼女は仕事だ。
俺は一息ついて、気持ちを落ち着かせてから、自分の目的を思い出す。
「どーすっかな。」
リベリオンの残党を叩け。
本堂の言葉を思い出す。
が、自分にはそのような操作能力などない。どちらかといえば、その担当は相棒の方だ。
俺は思考を切り替えるために、裏路地へと入った。
「おい、さっきから俺のことをねちっこくつけ回して。」
「目的はなんだ? 」
路地の奥から冷たい風が吹く。
ここで何も答えが無ければ、俺はただの痛い奴だ。
額に汗が伝っているのが分かる。
だが、確かに手ごたえがあった。
俺に対する静かな殺意が、俺の背中を撫でていたのだから。
痺れを切らしたように見慣れた侍が俺の前に現れた。
「我が尾行に気づくとは、流石、リーダーを退けただけはある。」
「玉鉄、探す手間が省けたぜ。」
「臨時のリーダー、金川からの命令だ。貴殿を足止めしろとな。」
「ほう、俺も買い被られたもんだな。奴は俺を殺せとは言わなかったわけか。」
「某も捕まるわけにはいかんのでな。みんなのためにも。」
俺は自然に戦闘態勢へと移行した。自身に染みついた、武術のクセで、だ。
右手を構えながら、俺は彼に問うた。
「なぜ、この後に及んでまでも、お前らは俺たちと敵対しようとしている? 公安はアンタたちをむやみに刺激しようとしていないはずだ。」
玉鉄は両手から鋼の刃を出現させると、左右にヒュンヒュン振り、俺へ向けて構えた。
「火星の囚人たちは、軽犯罪者が多い。故に社会復帰できるものも少なくないだろう。」
「だがな北条。我々リベリオンには特異体質が多い。その人間たちが、無能力者たちの中に溶け込んで、彼らと同じ生活を送る事は不可能だ。」
「万城のことか。」
「作用、西郷どのも働けるかどうか怪しい。かの女は生まれながらにしての殺し屋だ。それに……生活力がない。」
「ベルフェどのも、彼女も学がない。だがそれも仕方ないことなのだが。」
「北条、我々はな、コッチの世界に染まりすぎてしまった。だから陽の光に当たることなど出来んのだよ。」
玉鉄が一歩前に出る。
彼の影が、建物の影へと姿を消した。
上等じゃないか。
「なぜ諦める?」
彼は無言で俺の言葉を否定し、ゆっくりと首を振る。
「みな、北条のようになれるわけではない。貴殿は学もあるし、武術もあれば、家柄のコネもある。能力者だと言うことを隠せば、公安をやめて、他の無能力者と同じ人生を送ることも可能だろう。」
万城にはおそらく、人の全てが見えている。
力を抑えていても、他人の感情が彼女の両眼から消える事は永遠に無いのだろう。
玉鉄や、ベルフェ、西郷や、炎道の能力とは違う。
彼女たちは、能力行使をしなければ、無能力者たちと、何の大差も無いのだ。
「人間とはなぁ、北条、外見は変われても内面の奥深くまでも変わる事は出来ない。口では能力者の人権を訴えようとも、心では彼らを蔑み、恐れている。」
「その世界で彼女は果たして生きていけるであろうか? 」
彼の細目から、鋭い眼光が覗く。
「だから金川はリーダになり、能力者優位の世界を作ろうとしているのか? 」
「そうだ、九条が居なくなった今、某に出来るのは、彼らを導くこと。」
彼の意思は厚い。
ならば俺ができる事は、それを砕くこと……のみ。
「背中の槍は……ぬかぬのか。ようやく、貴殿も武士道というものに目覚めたのだな。」
「勘違いすんな。コレは俺のケジメだ。」
俺たちは互いに互いを理解した。
どうやら、拳でしか議論に答えを見出すことが出来ないようだ。
陽の光も入らないような暗がりで、二つの影が交差した。
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