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ファイル:5ネオ・リベリオン
はじまりの像へ
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西郷たちを引き渡した俺たちは、再び公安の車両に乗ると、本堂たちを追いかけた。
安田倫子の像は徐々に近くなり始めている。
あそこに、金川とビック・ファーザー率いる保守派の残党たちも、行動を共にしているのだ。
小子は何も言わなかった。
俺は、マーリンたちに作ってもらった鋼鉄の腕で、座席のハンドルを握り現場へと急ぐ。
俺は横目で彼女を見た。
彼女は、相変わらず無口で、ただ、信頼の目線だけを俺に向けていた。
長くつづく能力者と無能力者の争い、俺たちでその終止符を打つ。
全体主義、個人主義、何が正しいのかわからない。
今は二者の陣営は融和の道に向かっている。
しかし、個人主義が先鋭化し、二者の間に軋轢が生まれれば、再び俺たちは争いあうことになるだろう。
前回は、無能力者の勝利に終わった。
次回は、どうなるか分からない。
能力者が、無能力者を鼻で使う時代がくるかもしれない。
「考えていても埒が明かないな。」
つい声に出てしまった。
誰に問いかけたわけでもない。
小子は彼女らしくドライな答えを返した。
「考えていても始まらないじゃない。まず金川を止めないと。」
一呼吸。
それから彼女は驚嘆し、ジト目をこちらに向け来る。
「まざかハッタリだったんじゃないでしょうね。」
「さあどうだかな。」
俺があまりにも得意げになっていたため、彼女もそれ以上はなにもいわなかった。
「力がそういうなら、そうなんでしょう。自信家ってわけでもないですし。」
そうやって言葉を交わしているうちにも、車両は、像の麓についた。
公安車両が、何台か、雑に停車されている。
この際モラルなんて気にしている暇などない。
この戦いがおわったら、俺が彼らに切符を切ってやろう。
俺たちは、公安車両から飛び降りると、戦闘音を聞いて、そちらに駆け付けた。
「本堂長官!! 」
長官は、一人で、炎道と玉鉄を相手していた。
彼は俺たちの声に気づくと、横目で答える。
「臨時総統様は上に向かったよ。奴ら、一度この像を破壊するつもりだ。錬金術師様の力を使えば、こんなイタズラちょちょいのちょいだろうにね。」
このような状態になっても、余裕のジョークをかますと、爆炎を右手で割き、鈍色の刃を左手で砕くと、輝く猛吹雪を頭で、かち割った。
「倫子くんを頼む。彼女はああ見えて、熱くなりやすいタイプなんだ。最も、自分の像が破壊されるなんて、彼女のプライドがゆるさないだろうがね。」
「力、早く。」
彼女に手を引かれて、像の階段を上り始める。
「おい、慎重に動け、もう爆弾はきどうしているかもしれないんだぞ。」
彼女は振り返ると、これまでにない満面の笑みで言葉を返してきた。
「そしたら力が私を護ってね。魔法使いの君が。」
まあ、俺の力を使えば、そんなことは造作もない。
問題は像の破壊こそが、彼らの目的であること。
金川の力を使えば、安田の像を、ビック・ファーザーに置き換えることなど朝飯前だ。
何度も、この街に一矢報いてきた彼なら。
俺たちは、螺旋階段を全速力で上り続け、終わりのないスパイラルを回り続けた。
そして、それもついに終わりを告げた。
* * *
「金川練華、止まりなさい。」
軽快なSEと共に、彼女の膝下から、サブマシンガンが現れる。
「ったく。使いにくいったらありゃしないな、その能力は。」
「無法者を謙虚するには十分よ。」
安田は銃身を構え直す。
「何をしている金川、早く爆薬を起動するのだ。」
この後に及んで、ビック・ファーザーは小賢しく抵抗していた。
「チッ。俺はマルチタスクが得意じゃないんでね。」
彼の後ろには万城千里がいる。
彼は彼女を庇うために、安田の前に立っている。
金川は仕方なくどちらかを選ぶ事にした。
「じゃあなオッサン。まぁ後々、リベリオンとしては、オマエを抹殺するつもりだったし。まぁなんだ? 感謝しているよ。国際テロ組織として指名手配され、九条がいなくなった後、資金援助してくれたことは。」
「辞めなさい!! 」
その言葉と共に銃声が聞こえ……
「ふう、っぶねえな。」
俺がその銃弾を受け止めた。
「この裏切りモノめ!! 」
今度は、ビック・ファーザーの拳銃を、小子がはたき落とす。
そして、自身の能力で、彼を行動不能にした。
「アンタには国家転覆罪の容疑が掛かっている。ここで死んでもらうわけには行かないな。キッチリ裁きは受けてもらうぞ。」
ビック・ファーザーは俺の言葉を聞くと、不意に笑い出した。
「国家転覆罪? 私は犯罪者か? 総統の私が? 」
「むしろ逆賊はオマエよ安田倫子。ワシから玉座を奪って、足を組んで座りつづている女狐め。」
「彼女はお前とは違う。彼女は俺たちに自由を与えてくれた。能力者だけでない。無能力者に能力者と対等にいる権利を。」
彼は俺の言葉を聞くと「ククク。」と笑う。
「オマエは知らないだろうが。人間は古来より民主制、君主制、共和政、独裁政治を繰り返してきた。」
「鳥籠の中を飛び立った鳥は、やがて故郷を懐かしみ、また鳥籠の中に戻ってくる。人間とはそう言う生物だ。」
「彼らは、また私を求める。その時がオマエの最後だ。安田倫子。」
ビック・ファーザーは最後に安田へと指を指してそう宣言した。
不敵に笑い続ける、壊れた人形をから目を離した俺は、金川の方を見る。
「お前はどっちの味方だ。ソイツは俺たちから自由を奪い、それを当然のように民衆へと教え込んだ。」
「どっちの味方でもあると言えばそうだし、無いと言えばそうなるな。」
金川は床をドンと叩いた。
凄まじい力で、地面に亀裂が入る。
「お前のその優柔不断なところが腹立たしい。」
「お前にだけは言われたくない。」
彼は身体を大きく広げて、万城を庇った。
「練華、もうやめよう。みんな能力者達は自由になったの。もうこうやって意地をはらなくていいから。」
「黙れ!! 」
「確かに俺は自由かもしれない。だけどお前は…… 」
俺はゆっくりと金川に近づいた。
「お前は逃げているだけだ。」
「現実から、そして彼女から。」
「お前に何が分かる!! 」
彼は声を荒立てて、生成した岩石をこちらに飛ばしてくる。
俺はそれを能力で防いだ。
安田を守り、小子を護った。
「そうだ、答えはお前が一番よく知っている。」
金川は見られたくないだけなのだ。
万城に本当の自分を。
だから、彼は見れるようにしてやれば良い。彼の腹の内を、彼女に。
錬金術師の彼ならそれが出来る。
「……彼女を護るなんて、器用なことはできねえよ俺には。自分一人も守れねえくせに他人を護れるかよ。」
「背中の神器、抜けよ北条。さもなければ、コイツをぶっ壊して、お前らも平等社会もみんなコロス。」
「断る。公安のみんなも、今、この街で生活を営んでいる彼らも俺が護るよ。お前が答えにたどり着くまで。」
「構えろよクソ野郎。俺は前みたいに甘くねえぞ。」
金川が俺に飛びかかる。
俺はそれをじっと待ち構えた。
安田倫子の像は徐々に近くなり始めている。
あそこに、金川とビック・ファーザー率いる保守派の残党たちも、行動を共にしているのだ。
小子は何も言わなかった。
俺は、マーリンたちに作ってもらった鋼鉄の腕で、座席のハンドルを握り現場へと急ぐ。
俺は横目で彼女を見た。
彼女は、相変わらず無口で、ただ、信頼の目線だけを俺に向けていた。
長くつづく能力者と無能力者の争い、俺たちでその終止符を打つ。
全体主義、個人主義、何が正しいのかわからない。
今は二者の陣営は融和の道に向かっている。
しかし、個人主義が先鋭化し、二者の間に軋轢が生まれれば、再び俺たちは争いあうことになるだろう。
前回は、無能力者の勝利に終わった。
次回は、どうなるか分からない。
能力者が、無能力者を鼻で使う時代がくるかもしれない。
「考えていても埒が明かないな。」
つい声に出てしまった。
誰に問いかけたわけでもない。
小子は彼女らしくドライな答えを返した。
「考えていても始まらないじゃない。まず金川を止めないと。」
一呼吸。
それから彼女は驚嘆し、ジト目をこちらに向け来る。
「まざかハッタリだったんじゃないでしょうね。」
「さあどうだかな。」
俺があまりにも得意げになっていたため、彼女もそれ以上はなにもいわなかった。
「力がそういうなら、そうなんでしょう。自信家ってわけでもないですし。」
そうやって言葉を交わしているうちにも、車両は、像の麓についた。
公安車両が、何台か、雑に停車されている。
この際モラルなんて気にしている暇などない。
この戦いがおわったら、俺が彼らに切符を切ってやろう。
俺たちは、公安車両から飛び降りると、戦闘音を聞いて、そちらに駆け付けた。
「本堂長官!! 」
長官は、一人で、炎道と玉鉄を相手していた。
彼は俺たちの声に気づくと、横目で答える。
「臨時総統様は上に向かったよ。奴ら、一度この像を破壊するつもりだ。錬金術師様の力を使えば、こんなイタズラちょちょいのちょいだろうにね。」
このような状態になっても、余裕のジョークをかますと、爆炎を右手で割き、鈍色の刃を左手で砕くと、輝く猛吹雪を頭で、かち割った。
「倫子くんを頼む。彼女はああ見えて、熱くなりやすいタイプなんだ。最も、自分の像が破壊されるなんて、彼女のプライドがゆるさないだろうがね。」
「力、早く。」
彼女に手を引かれて、像の階段を上り始める。
「おい、慎重に動け、もう爆弾はきどうしているかもしれないんだぞ。」
彼女は振り返ると、これまでにない満面の笑みで言葉を返してきた。
「そしたら力が私を護ってね。魔法使いの君が。」
まあ、俺の力を使えば、そんなことは造作もない。
問題は像の破壊こそが、彼らの目的であること。
金川の力を使えば、安田の像を、ビック・ファーザーに置き換えることなど朝飯前だ。
何度も、この街に一矢報いてきた彼なら。
俺たちは、螺旋階段を全速力で上り続け、終わりのないスパイラルを回り続けた。
そして、それもついに終わりを告げた。
* * *
「金川練華、止まりなさい。」
軽快なSEと共に、彼女の膝下から、サブマシンガンが現れる。
「ったく。使いにくいったらありゃしないな、その能力は。」
「無法者を謙虚するには十分よ。」
安田は銃身を構え直す。
「何をしている金川、早く爆薬を起動するのだ。」
この後に及んで、ビック・ファーザーは小賢しく抵抗していた。
「チッ。俺はマルチタスクが得意じゃないんでね。」
彼の後ろには万城千里がいる。
彼は彼女を庇うために、安田の前に立っている。
金川は仕方なくどちらかを選ぶ事にした。
「じゃあなオッサン。まぁ後々、リベリオンとしては、オマエを抹殺するつもりだったし。まぁなんだ? 感謝しているよ。国際テロ組織として指名手配され、九条がいなくなった後、資金援助してくれたことは。」
「辞めなさい!! 」
その言葉と共に銃声が聞こえ……
「ふう、っぶねえな。」
俺がその銃弾を受け止めた。
「この裏切りモノめ!! 」
今度は、ビック・ファーザーの拳銃を、小子がはたき落とす。
そして、自身の能力で、彼を行動不能にした。
「アンタには国家転覆罪の容疑が掛かっている。ここで死んでもらうわけには行かないな。キッチリ裁きは受けてもらうぞ。」
ビック・ファーザーは俺の言葉を聞くと、不意に笑い出した。
「国家転覆罪? 私は犯罪者か? 総統の私が? 」
「むしろ逆賊はオマエよ安田倫子。ワシから玉座を奪って、足を組んで座りつづている女狐め。」
「彼女はお前とは違う。彼女は俺たちに自由を与えてくれた。能力者だけでない。無能力者に能力者と対等にいる権利を。」
彼は俺の言葉を聞くと「ククク。」と笑う。
「オマエは知らないだろうが。人間は古来より民主制、君主制、共和政、独裁政治を繰り返してきた。」
「鳥籠の中を飛び立った鳥は、やがて故郷を懐かしみ、また鳥籠の中に戻ってくる。人間とはそう言う生物だ。」
「彼らは、また私を求める。その時がオマエの最後だ。安田倫子。」
ビック・ファーザーは最後に安田へと指を指してそう宣言した。
不敵に笑い続ける、壊れた人形をから目を離した俺は、金川の方を見る。
「お前はどっちの味方だ。ソイツは俺たちから自由を奪い、それを当然のように民衆へと教え込んだ。」
「どっちの味方でもあると言えばそうだし、無いと言えばそうなるな。」
金川は床をドンと叩いた。
凄まじい力で、地面に亀裂が入る。
「お前のその優柔不断なところが腹立たしい。」
「お前にだけは言われたくない。」
彼は身体を大きく広げて、万城を庇った。
「練華、もうやめよう。みんな能力者達は自由になったの。もうこうやって意地をはらなくていいから。」
「黙れ!! 」
「確かに俺は自由かもしれない。だけどお前は…… 」
俺はゆっくりと金川に近づいた。
「お前は逃げているだけだ。」
「現実から、そして彼女から。」
「お前に何が分かる!! 」
彼は声を荒立てて、生成した岩石をこちらに飛ばしてくる。
俺はそれを能力で防いだ。
安田を守り、小子を護った。
「そうだ、答えはお前が一番よく知っている。」
金川は見られたくないだけなのだ。
万城に本当の自分を。
だから、彼は見れるようにしてやれば良い。彼の腹の内を、彼女に。
錬金術師の彼ならそれが出来る。
「……彼女を護るなんて、器用なことはできねえよ俺には。自分一人も守れねえくせに他人を護れるかよ。」
「背中の神器、抜けよ北条。さもなければ、コイツをぶっ壊して、お前らも平等社会もみんなコロス。」
「断る。公安のみんなも、今、この街で生活を営んでいる彼らも俺が護るよ。お前が答えにたどり着くまで。」
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