平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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ファイル:6 悪夢再び

英雄の帰還

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「慎二、コレは僕たちの問題だ。」
 王様は惨めったらしく、地面に這いつくばっている。
 いや違うな。
「俺が、コイツを、食い止められなかった責任も少なからずあるからな。」
 それから、金色の剣を引き抜いた。
 まざか、またコイツを握ることになるとはなぁ。
 剣の鋒を大兄弟助に向けると、首を少し傾げて、彼に、こう宣言する。
「この前は、ダセエところを見せちまったけどよ。俺もそうダサくはねンだわ。」
「アンタがダサいのはいつものことでしょうが。」
 隣で千代がため息をつきながら、ツッコミを入れる。
「慎二っ!! 」
 俺はカーミラに刺さった剣を抜いてやると、大兄弟助の方に放り投げた。
「黙って俺に投資しろ。その方がお前のためにもなる。」
「フン、随分と気前の良いようだな鬼の子よ。」
 大兄弟助は、真紅の剣を引き抜いた。
「ハッタリかましてんじゃねえぞ。握ってなくても、操れるんだろソイツを。戦闘中に邪魔をされたくない派の人間でね俺は。」
 俺は左手の人差し指に、エクスカリバーで切り傷をつけて、そのまま引き抜いた。
---時空壊クロック・ブレイク---
 あたりに真紅の液体が飛び散る。
 液体は、ゆっくりと地面に落ちていっている。
 世界を巡る旅の中で、俺のこの呪術は、現実と区別がつかなくなってきた。
 ある意味では、鬼銃で脳天を貫いていた時の方が、まだ加速した世界との区別がついていたと思う。
 俺はコイツと同じ時間を過ごしたい。
 だけど、千代とはしばらくの間お別れだ。
 目を細める創造主サマの脳天にエクスカリバーを突き立てる。
____俺が突き刺しているのは残像だ。
 なら
 世界が反転した。
 俺の頭上には世界の大地が広がっている。
 そして、千代が俺を支えていた。
「悪い。周りが見えてなかったわ。」
「それよりも………警戒して。奴はどこから来るかわからない。」
 おそらく千代と同じ能力。
 いや、魔法なんだ。
 俺は、襲撃を受けた時、隣にいた人間のことを思い出した。
「九条念。」
 殺意を感じるよりも先に、エクスカリバーでグラムを弾き返す。
「とりあえず距離を取らねえとな。」
「アウラ!! トライドラン!! 頼んだぞ。」
 金色の剣の鋒から、無数の蔓が、溢れ出した。
「この空間一体を、エクスカリバーの魔力で満たす。」
 この方法は己の五感より役立つ。
 大兄弟助たちは、瞬間移動移動を巧みに駆使しながら、俺の蔓を避けている。
「慎二!! 視界が悪くなったら、私たちにとって不利になる。私には見えないし。」
「だから、してやってんだろうが、ちっとは頭を使ってくれ。」
 千代は思い出したかのように、銃鬼を、つるに向けて放った。
---#金剛掌握カーボン・コントロール---
 九条と、千代では、スタミナ・魔力コントロール・戦闘センスの全てにおいて遅れを取っている。
 今のこの状況で、やっと四割まで持って行けたか?
 さぁ、グラムを蔓に突き刺してみろ?

 ………匙を投げたな。

 俺たちが転移した先で、九条が、両掌を頭上で組むと、俺たちを待ち構えていた。
「逆に言えば、能力を使わなければ、探知されないってこったろ? 」
 咄嗟に左手で凛月を引き抜き、チャクラムで攻撃を防いだ。
---金剛流し---
 千代が咄嗟に未知術を放ってくれたおかげで、攻撃をいくらか受け流すことが出来た。
 空中では、それを外に逃すための地面もない。
「やるな嬢ちゃん。」
 大兄弟助は、腕から二本目の燃えゆる剣を作り出すと、蔓に突き刺した。
「千代、接続を切れ!! 」
 慌てて彼女が未知術を解く。
 九条はあくまでも囮だ。
 猛る炎のせいで、たちまち蔓は燃え尽きてしまった。
「コレは、レーヴァテインだ。お前のような紛い物が作った贋作とは違う。」
 大兄弟助は、数百メートルを一瞬で詰めてきた。
 九条の瞬間移動ではない。
 時空壊よりも何百倍も速いだ。
「慎二!! 」
 彼女の叫びすら、のっぺりとしている。
「お前の相手は私だ!! 」
 九条が、千代の手を叩く。
 俺はグラムに叩きつけられて、そのまま、父の大樹にへと突っ込んだ。

     * * *

「テテテ。ちょっと俺には荷が重かったかな? 」
 それよりも、どれぐらい気絶していた?
 早く千代を……みんなを助けに行かないと。
 俺は重い体を己の覇気で奮い起こし、アウラの力を使い、再び飛びあがろうとした。
 背中がやけに暖かい。
 振り返ると、深緑に輝く、一振りの剣が……
「親父ィ……」
 俺は、ここにいた頃、一度も、この刀を握らなかった……
 いや、それは語弊があるな。
 だった時、一度だけ……転界からコイツを持ち帰った時に、俺はこの刀を、握った。
 それでも、一度も契約を試みたことが無かったのは、この刀が父の愛刀だったからだ。
---タケル? さぁアタイを取って!! ---
「俺はタケルじゃない慎二だ。」
---天叢雲剣を握るのは、ただ一人、ヤマトタケルだけだよ---
 オヤジもコイツからそう呼ばれていたのか?
 そんなことはどうでも良かった。
 この刀は、創造主に打ち勝てるかどうか……だ。
「そうだ。俺はヤマトタケル。極東に伝わりし、伝説の英雄だ。」
 俺は二振りの武器を携えると、幹の外へ向けて跳躍した。
 父の言葉を思い出す。

---腓腹筋に力を込めろ。そして、一気に解き放て---

 一面火の海だ。
 俺は千代の元へ舞い戻ると、右手の刀を薙ぎ払い、レヴァーテインの炎を消した。
 それから、千代に命を分け与える。
「ごめんな、千代。また傷つけてしまって。」
 彼女は、弱々しく俺に拳をぶつけると、震えた口で、掠れた声を放った。
「アンタのそういうところ嫌いよ。女は守ってやらなきゃダメみたいな過保護なところ。」
「悪い。」
 そりゃそうだ。今回ばかりは相手が悪い。
 千代には魔法適正などないのだ。
 見上げると、大兄弟助たちが俺を見下ろしていた。
「ほう? 世の二本目の剣か? 」
「それも世の力の一部だ。どう足掻いてもお前は世たちを倒すことなどできん。」
「それに…… 」
「その力。お前も魔法に目覚めたな。そこのエセ魔法使いとは違い。」
「どうだ? 世ととも……」
      「断る!! 」
 俺は天叢雲剣を薙ぎ払った。
 辺り一体の黒焦げた大地が、再び花を咲かせる。
「ったく……馬鹿の相手は疲れるっ!! 」
 大兄弟助の疾走。
 今度は目で追うことが出来た。
 残像が見えていることもない。
 俺の視覚はハッキリとその輪郭を捉えている。
 背後に気配を感じる。
 腰の凛月をさせる。
---雷斬ライザン---
 チャクラムの水平斬りが九条を捉える。
 だが、彼女とも、波の能力者ではない。
 彼女の念力は、ベクトルすら捻じ曲げてしまう。
 一瞬……一瞬のウィークポイントさえあればいい。
 俺たちはコンマ一秒の間に、グラムをエクスカリバーで受け止め、天叢雲剣をレーヴァテインに弾かれ、攻防しながら互いに上昇し、対空圏の上で、お互いの最大火力を解き放った。
「「---森羅万象オール・オブ・ユニバース---」」
 視界を覆うほどの眩い光。
 この感覚は、帝国の悪魔と戦った時以来だ。
 







 二つの強大なエネルギーが、世界を覆った。

 

 

 
 
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