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ファイル:6 悪夢再び
宿命
しおりを挟む世界を覆う光は徐々に収縮し、人類の雌雄は決した。
目の前に、二刀流の剣士が倒れている。
一振りは、僕の父の形見で、
もう一方は剣士の父親の形見だ。
慎二でも、代行者の力でも、英雄の力でも、全てを収縮させて、放っても、彼に勝つことは出来なかった。
彼はピクリとも動かない。
大兄弟助は動かなくなった自分の従者に手を合わせると、左脳と、右腕を欠損した状態で、僕らの形見へと足を進める。
「グラムで回復したらいいじゃ無いですか? 」
「それでは、世の同志に示しがつかんのでな。」
魔法使いであるということ。
それは全ての魔法に耐性を持つということだ。
故に創造主でも、彼女を生き返らせることなんてできないのだろう。
「返せ……世の神器だ。」
彼の左手がゆっくりと、二振りの神器へと迫った。
【絶対領域】
聞き覚えのある声と共に、大兄弟助は体勢を崩した。
そして、両膝をつき、存在する方の腕で身体を懸命に支えた。
息を荒くし、ものすごい形相で、闖入者を睨んだ。
颯爽と現れた救世主の名は
「本堂さん!! 」
ビックファーザーに追放される形で、この世界に連れてこられた平等社会、公安の元長官であった。
* * *
人類の存続をかけた戦いは、もう始まっていた。
幸いにも、極東の契約者たちのおかげで、一般人たちの退避は完了したらしい。
血生臭い匂いも、人の死体も見つからない。
俺は無意識のうちに九条を探していた。
大地に横たわる、アレがおそらく彼女だろう。
俺は彼女を思う気持ちと、平等社会での自分の役割とで、葛藤した。
大兄弟助は俺を見つけると、不敵に笑い、真紅の魔剣を地面に這う大樹の根に打ちつけた。
「まざか、貴様の方からやって来るとはな。」
「まずはその出来損ないの槍にお仕置きをせねばならん。」
背中でゲイボルグがブルりと震えた。
俺は背中に手を回し、口金をさわさわと撫でた。
「その前に一つ聞いていいか? 」
「九条は世が盾にした。だから死んだ。」
「嘘だ。九条も魔法使いなんだろ? アンタの拘束なんて効かないし、 喰らいの大穴を使えば、どこにだって逃げられる。」
それに、彼は俺たちが来るまで、神器の力を使わなかった。
心が徐々に一点に集まり始める。
怒りは無い。
彼女もやりたいことが見つかった。
それだけだ。
俺の身体は『守ること』一点に集中し始めている。
「うぉぉぉぉぉ。」
痺れを切らした平等社会の精鋭たちが、大兄弟助へと飛びかかる。
辺りに砂煙が舞い、その濃霧の中から、人が、一人、また一人て投げ飛ばされて来る。
「守るんでしょ? 」
小子に背中を叩かれて、ようやくスイッチが切り替わる。
凝縮から、一気に放出し、疾走し、投げ飛ばされたハンターの一人を受け止める。
俺の肩を踏み台に、彼女は、別の投げ飛ばされた人を捕まえた。
砂煙は人を薙ぎ払いながら、徐々にこちらへと迫って来る。
俺と彼女は絶妙なコンビネーションで、飛ばされた人間を受け止めては、義手のワイヤーで安全な場所へと放り投げる。
そしてそれから、ついに砂煙と対峙した。
義手が軋む。
いくら技師の腕が立つと言っても、相手は創造主だ。
俺の腕が持つ保証などない。
腕が破壊されれば、俺の負けだ。
俺は無機物への魔法の行使を試みた。
やったことがないわけではない。
あの時は無我夢中だった。
だから成功したのかも知れない。
しかし……まだ義手を身体の一部と捉えるイメージが浅いのか。
それとも、奴の神器が強力なのか?
---力!! 私を使って!! ---
ゲイボルグに言われるがままに、両手に彼女の力を宿す。
創造主様も、流石に目をひん剥き、俺を称賛した。
「その力をもっと他のことに使えば、お前はもっと輝ける
な・の・に
なぜそうしない。」
昔、九条にも同じことを言われたっけな。
彼女はいつも強さを求めた。
思い出した。
そして俺は………
自分の庇護心が強くなっていくと共に、義手や、俺に力を貸してくれているゲイボルグに薄い膜を張れるようになる。
「憐憫か? それも世と同じ感情よ!! 」
「強者が弱者に感じる感情だ!! 」
俺は息を大きく吸い込んだ。
それから静かに、諭すように答える。
「俺は痛みを知っている。だから他者に同じことをしたくないだけだ。」
今は亡き、両手首の枷を大きく掲げ、大兄弟助に見えるようにした。
大兄弟助はグラムを前に、レーヴァテインを後ろに構える。
「………お前には失望した。」
「勝手にしてろよ。」
俺は身体を広げて、攻撃を受け止める体勢を作る。
「うぉ~らぁ!! 」
瞳孔を開いた奴の渾身の一撃。
グラムを上段に振り上げ、一気に斬り下ろして来る。
相変わらずのデタラメな身体の使い方。
「【天岩流】」
【壱ノ岩】
【石壁ッ】
ゲイボルグがグラムのコアを捉えて、神器を粉々にした。
「おのれぇ!!!!!! 」
俺は横目で、疾走する小子を見た。
「【天鵝流】」
【弐ノ拳】
【啄木鳥】
彼女の渾身の発勁で、目を見開いた創造主は、腹部を大きくめり込ませながら、吹っ飛び、大樹の巨大な根に打ち付けられた。
左手を前に、右手を引き絞って構えている彼女の横で、どっしり構える。
「劣等種どもがぁ。」
レーヴァテインが赤黒く光る。
【石払】
「違うな。」
彼の足元を、右脚で払いのけた。
反動で彼は、二、三転がり、仰向けに倒れた。
「俺たちが劣等種なら、なぜお前は俺たちを俺と同じ姿に創った? 」
大兄弟助は顰めた顔で、ゆっくりと身体を起こしている。
「寂しかったんだろう? だから俺たちを創った。」
「知ったような口を聞くな。」
俺は続ける。
彼は再び俺に飛びかかった。
「お前は九条をただの駒としては見ていなかった。」
「嬉しかったんだろう? 慎二郎さんも、慎二も、自分を見つけてくれるかも知れない人間がいて。」
【捌ノ岩】
【#天岩戸__サンセットヘブン#__】
「「パリッ」」
乾いた音と共に、俺の義手と、彼のレーヴァテインが砕け散った。
ゲイボルグは、形を保つことが出来ず、槍の姿に戻り、カランと乾いた音を立てながら、地面に落ちる。
俺は足でそれを拾い上げると、背中で受け取った。
「北条力ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ」
彼は新たな神器を取り出そうとする。
だがそれを本堂長官が許さなかった。
絶対領域が彼の魔法を抑制し、彼は上手く神器をがたどることが出来ない。
彼は、なんとか本堂を振り払うと、五本の指を握り、俺に向かって走ってくる。
魔法を使っていた頃よりも、何倍も遅いスピードで。
スローリー、スローリー
---北条力くん。頼む---
---息子を---
---世界を---
---大兄弟助を---
---救ってくれ---
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ」
確かに見える。
俺には両腕があった。
俺に宿った不思議な力は、俺に新たな能力を宿した。
コレが蝠岡の言っていた力。
「馬鹿な!! 真まゴォォォ。」
俺の拳が奴の左頬にクリーンヒットする。
「【裏天岩流】」
【壱ノ岩】
【石火】
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