平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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エピローグ

全てが終わって

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 俺は向こうで伸びている創造主を見た。
 
 そして、まだ湯気が立っているを見た。

 創造主は大樹の蔓に担ぎ上げられ……
 そうだ。慎二郎さんが大兄弟助を回復させようとしている。
「慎二郎さん、何してんだ!! 」
 気がつくと、九条……
 いや、彼らだけでは無かった。
 カーミラに、セイ皇后、ブレイク家の兄さんたち。
 慎二や、黒澄さんまでが、彼に担ぎ上げられている。
 彼らはあっという間に傷を回復させられると、すぐに意識を取り戻した。
「コレが永久機関インフィニティの力? 」
---北条くん、頭を冷やすんだ---
 そうだ。俺は頭に血が昇っていた。
 これ以上彼を殴る必要はない。
 だから慎二郎さんは彼を回復させている。
---彼には経験が足りなかった---
---それだけだ---
---だけどね、彼にはそれを獲得する能力がある---
---今から世界を学んでいけば良いんだ---
---自分の作った世界の儚さと---
---残酷さと---
---美しさを---
「あまいですよ、あなたは。」
---あまいのは君も同じだろう---
---犯罪者に堕ちた幼馴染を長い間、捨てきれないでいる---
「ばれていましたか。それも、俺がというのもあるのかも知れません。」
---君は私とは違う---
---同時に二つの魔法を発現したという能力的な問題ではない別の何かだ---
「はい、それこそが俺の使命です。」
---北条くん---
---世界を頼んだよ---
「イテッ。」
「なーに一人で話してんのよ。」
 彼女にデコピンされたことで、俺と大樹との意思疎通は解かれた。
 改めて、新しい両腕を見る。
「腕が。アンタ、本当に?? 」
 そうだ。俺は本当に真魔法を発現させてしまったらしい。
 そこにロバスやマーリンたちが走って来た。
「悪いな二人とも、君たちの最高傑作を俺は壊してしまったみたいだ。」

     * * *

「………そうか、あの二人も、世界を巡る旅に…… 」
 公用車のリムジンの中で、バットマンは、少し悲しそうに、だけども嬉しそうに相槌を打った。
 そうだ。
 大兄弟助たちも、世界を巡る旅に出た。
 自分の創った世界に初めて興味が湧いたらしい。
 今日は、バットマンが恩赦させる日。
 能力者に権利が認められたこの世界で、もはや彼が『罪人』である必要はない。
 賃金問題、居住区問題。
 裏社会に対する政府の対応、まだまだ社会には見えない問題が蔓延していて、安田さんは世間じゃ『ガワだけの女』なんて呼ばれていた。
「改めて、君の答えを聞かせてくれ北条力。」
「分かった。」
「能力者と無能力者が共存できる世界。彼らの溝を埋めることは困難な道になるだろう。途中で衝突が起きて、また大きな戦争に発展するかも知れない。」
「だから。」


「だから、俺が大兄弟助になる。」


 大兄弟助は唖然としている。
 近くで聞いていた、彼の護衛も、俺の言葉を小耳に挟んでいた安田さんも、びっくりして構えていた。
 小子に関しては、口をパクパクさせている。
 俺は彼らを刺激しないように、ゆっくりと両手首を、安田さんに差し出した。
「俺がこの世全ての能力者悪人になる。」
 しばらくの沈黙の後。
「クックック。君は本当に面白いヤツだな。君みたいな奴が魔法使いに選ばれて本当に良かったよ。」
 蝠岡は失笑している。
 本当に失礼な奴だ。俺は真剣な話をしているのに。
「私は反対です。」
 彼女は車を止めると、リムジンから降りる。
「ずっと、一緒にいてくれるって言ったくせに……嘘つき。」
 そう吐き捨てて、護衛の任務をすっぽかして行った。
「彼女には何も話していなかったのか? 」
「自分でも悪いと思っている。」
「でも小子と話しても、彼女は納得してくれないだろうし、彼女には関係のない話だったから。」
「だったから尚更だろうな。『罪人になる』なんて君以外の人間にでもなれる。でもあの子の横に立てるのは君しか居ないんだ。」
「見てくれだけのパフォーマンスなんて意味がありませんよ。それじゃ社会は良くならない。」
 バットマンは公衆の面前で、罪を恩赦され、
 俺は公衆の面前で、社会を混乱させた史上最悪の魔法使いとして、検挙された。
 一つ嬉しかったことは、俺を非難する人間は、もう一人も居なくなっていたということだ。

     * * *

    被告を極刑に処す。

 調停者の振り下ろすガベルが俺に生の啓示を言い渡した。
 俺の脳は、この言葉をすんなり受け入れた。
 まるで、それが自分の使命であるかのように

      * * *


 赤錆
 コンクリートのヒビ
 光のささぬ場所
 
 赤黒い廊下の平行線はどこまでも伸びている。
 私は祖父から、本堂の使命と能力者を受け継いだモノだ。
 訳あってこんなカビ臭い場所まで足を運んでいる。
 監獄の奥深く、最深部に彼は座り込んでいた。
 私たち平等社会人なら誰もが知っている。
 史上最悪のテロリスト、北条力。
 彼は両手両足の枷にぎっちり縛りつけられていて、ピクリともしない。
 本当に彼は『魔法使い』なのだろうか?
「聞きなさい。私は公安課から派遣された本堂倫です。」
 怪物は、その言葉を聞くと、自力で枷を解放し、手足が動くか確認してから、監獄の外へと歩き出した。
「勝手行動は、よしなさい。私は貴方の監視役です。能力でいつでも貴方を拘束できるんですよ? 」
「ううん? アンタがココに来たってことは……俺の力が必要になったからだろ? 」
「それはそうですけど…… 」
「コレまでのは全部演技だったんですね。私はパフォーマーが一番嫌いなんです。」
「政治なんで大体そんなもんだよ。キミはもう少し社会を勉強した方がいい。」
「何年もシャバに出ていなかった人には言われたくないです。」
 彼は私のその話を聞くと、咳払いをした。
「ううん……せいぜい、俺が暴走しないように見張っておくことだな。」

 この男の第一印象は最悪だった。





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