テンプルム・ベルルム(聖域戦争)

ちょちょいのよったろー/羽絶 与鎮果

文字の大きさ
12 / 12

終章 そして……

しおりを挟む
 【一郎太】達の冒険は順調だった。
 少しずつではあるが【仲間】を増やし、絆を深めて行った。
 優しすぎるきらいがある【一郎太】だったが、そんな彼を中心に、それなりのパーティーが出来ていった。
 その様子を【ミステール】が距離を置いて見ていた。
 【ミステール】は、
「……意外に生き残っていたな。
 てっきりもう、とっくに死んでいると思っていたが……」
 とつぶやいた。
 彼は冒険を始めたばかりの【一郎太】と【ガラティア】に取り入り、何も知らなかった【一郎太】から【ガラティア】の【本名】を聞きだそうとしていた。
 怪しい男。
 彼の正体は何なのか?
 それは、【暗躍者(あんやくしゃ)】と言われる存在だった。
 【ミュステリウム(謎、神秘)】の【聖域】にある【怪物】の【石像核(せきぞうかく)】を削って食べた【呪われた存在】だった。
 【怪物】の【石像核】は強い【パワー】を持っている。
 昔は、その【怪物】の【石像核】を食べると【超人】になれると信じられていた。
 だが、それは誤った情報で、【石像核】を削って食べるとその人間は【呪われる】のだ。
 普通の人間の【100分の1】の遅さで【年】を取る様になり、【年】をおうごとに、【痛み】が増す。
 そして、その苦しみから最終的には【新たなる怪物】になってしまうという【呪い】だった。
 【ミステール】は、752年前に【怪物】の【石像核】を削ったものを煎じた【お茶】を飲み、【呪われた】のだ。
 当時、彼は19歳だったため、年齢的には、現在、26歳から27歳の肉体となっているが、その身体には常に激痛が起こっている。
 もう、その痛みにも慣れているので、行動するのにそんなに不自由は無いが、彼が【痛み】に負けた時、彼は人間から【怪物】に変化するのだ。
 そんな彼の【呪い】を解く方法。
 それは、【女神】の【本名】を【呪った怪物】の【石像核】に捧げる事だった。
 【女神】の【本名】や情報を書いた【紙】などを【怪物】の【石像核】に張ると、【石像核】は該当する【女神】を食べる事が出来る。
 そうなれば、人間(もどき)である【ミステール】には用はない。
 彼は【呪い】から解放される事になる。
 ただし、それは、彼の【死】を意味する。
 彼は本来、19+752で771歳なのだ。
 771歳の人間が生きていられる訳はない。
 たちまち彼の身体は腐り落ち、風化するだろう。
 それについては彼は気付いていない。
 ただ、自分の【呪い】を解く事に執着しているのだ。
 そんな彼は新たな獲物を探して、【暗躍者】として、【聖戦】を影で操作しようとしていたのだった。
 【ミステール】だけではない。
 【颯人(はやと)】と【将人(まさと)】の双子も、【力】をつけて、【一郎太】に復讐しようと行動していた。
 【颯人】は、
「どうだ、【将人】?
 これなら、あのバカ(【一郎太】)共もだませるんじゃないか?」
 と言った。
 【将人】は、
「どうだかな?
 なんか、あのバカ(【一郎太】)、仲間増やしたみたいじゃねぇか。
 生意気にもな。
 俺らも仲間増やさないと返り討ちに合うかも知れねぇぜ。
 さすがのあのお人好しも二度目はねぇだろ?
 二回も襲ったとあったら、今度は許さないかも知れねぇ。
 だから、確実にやれる方法を見つけるまで、待った方が良い。
 何せ、【女神】が目を光らせてるからな。
 【英雄】を所有している俺らじゃ全然、歯が立たねぇぜ。
 それより……」
 と言った。
 【颯人】は、
「それより、何だよ?」
 と聞くと、【将人】は、
「【漁夫の利】ってのが一番良い。
 誰かと戦わせて、どっちも疲弊した所でまとめて叩く。
 それが良いんだよ」
 と言った。
 【颯人】は、
「だなっ。
 俺らのやり方だとそれが一番だ。
 じゃあ、バカ(戦わせる相手)共の情報を集めようぜ」
 と言った。
 この双子の悪巧みも気になる所だった。
 他にも数多くの【刺客】達が手ぐすねを引いて待ちかまえているのだった。
 そんな暗雲立ちこめる【一郎太】達のパーティーだが、
「良い天気だね。
 今日も晴れるな」
 と【一郎太】は明るく振る舞っていた。
 この先、どんな敵が現れるかわからない。
 不安材料は山ほどある。
 だが、彼は争いたくて【仲間】を集めている訳ではない。
 【女神】達との交流。
 一緒に旅をして、
 一緒に笑い、
 一緒に感動し、
 一緒に泣いて、
 一緒の食事を食べて、
 一緒に話して、
 一緒に歌って、
 一緒に眠って、
 一緒に作る。
 そんな毎日を過ごしたくて、【仲間】を探しているのだ。
 【戦力強化】をしたい訳ではない。
 【戦力強化】と言うよりも、【女神】達が増える事で、【敵】からの襲撃を受けにくくするという目的でもある。
 【防御】目的と言う方が正しい表現だった。
 【ガラティア】は、
「旦那様。
 今朝の分の食事が出来ました」
 と言った。
 【一郎太】は、
「へぇ。
 何かな?」
 と聞いた。
 【ガラティア】は、
「今日は【シェリア】さんと一緒に作りました。
 【水パン】と【山菜サラダ】と【キノコスープ】になります」
 と言った。
 【シェリア】も、
「私も頑張らせていただきました、ご主人様。
 【山菜サラダ】は私があえました」
 と言った。
 【一郎太】は、
「へぇ~。
 美味しそうだね。
 じゃあ、みんなで食事にしようか」
 と言った。
 【ガラティア】は、
「では、旦那様に感謝して……」
 と言うと、【ガラティア】、
 【シェリア】、
 【ヴィエーラ】、
 【ヴェリアブル】、
 ――の4名は目をつぶり、手を握って胸元に当てた。
 祈りのポーズである。
 それを見た【一太郎】は、
「……幸せだな。
 僕は、こうしてみんなで食事を取っている時が一番幸せだよ。
 ホント、感謝しかない。
 良い出会いをくれて天に感謝だね」
 と言った。
 【ガラティア】は、目を開けて、
「私も感謝いたします。
 旦那様と出会えて幸せです。
 ありがとうございます」
 と言った。
 【シェリア】も、
「私もご主人様に仲間にしてもらって感謝です。
 ありがとうございます」
 と言った。
 それに【ヴィエーラ】と【ヴェリアブル】も続く。
 【テンプルム・ベルルム(聖域戦争)】はまだ、始まったばかりだ。
 これまでの戦いは序盤に過ぎない。
 これから、戦いは激化していくはずだ。
 これまでの様には、勝ち進む事が出来ないかも知れない。
 時には負けるかも知れない。
 そうなった場合、【一郎太】達がそうした様に、【敵】は彼等を見逃してくれるだろうか?
 いや……それは無いだろう。
 【敵】は【一郎太】達を殺す可能性が高い。 
 【敵】の方にかける情けは無いだろう。
 これまで犠牲者を出さずにやってこれたのは情けをかける【一郎太】達が勝ったからだ。
 勝ったからこそ、死者を出さずに済んだ。
 負けていたら、死者を出していただろう。
 現に、【一郎太】は何度か暗殺されかかっている。
 それが成功していたら、彼は死んでいた。
 生きていられたのは運が良かったのだ。
 これからは今までの様には行かないかも知れない。
 そう、肝に銘じる【ガラティア】だった。
 彼女は、
(旦那様。
 旦那様のお命は私がお守りいたします。
 この命に賭けても……)
 と思うのだった。
 これから彼女の覚悟が試される……時が来るかも知れない。


完。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

処理中です...