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14話 【ウワサ話】

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「いよいよ明日かぁ…… ねぇアオイ、いけそう?」

帰り道、同じ二年生のサヤが尋ねてきた。

サヤはトロンボーンを担当している。

「まぁ少しは……自信あるかな?」

たくさん練習したからね。

「マジで!? やるじゃん! なにか自主練でもしてたの?」

「うん。 日曜日の朝、港でね。」

私はコンビニで買ったバニラ味のソフトクリームを一舐めした。

「へぇ~…… すごいなぁアオイは……」

サヤはチョコレート味のソフトクリームを片手にため息をついた。

「別にすごくなんかないよ!」

「あっ! 港で思い出した! そろそろだね、"ミナト祭"!」


"ミナト祭"。

夏休みに入る前にこの町で開催される夏祭りだ。

「アオイはやっぱケンタと行くの?」

えっ?

ちょっと待って!

「な、なんでケンタが出てくるの!」

「なんでって…… だってアンタ達付き合ってるんでしょ?」

はぁ!?

なにそれ?

「いやいやいや! ケンタと付き合ってなんかないからっ!」

するとサヤはソフトクリームを一口だけ舐めて言った。

「ほらアオイさ、最近昼休みになるといつも屋上に行ってるじゃん? だからそんなウワサが流れてるんだよ!」

なるほど。

確かに最近毎日欠かさずに行ってた。

「でもさ……」

サヤはニヤニヤしながら続けた。

「小学生の頃、ケンタってアオイのこと好きだったよね。 まだ好きだったりして。」

えっ?

初耳なんですけど…

「そ、そうなの?」

「アオイ鈍すぎ! まぁ小学二年生とか三年生の時の話だけどね。」

そうなんだ。

全く知らなかったよ。

「でもさぁ…… 案外お似合いだったりして?」


サヤのその一言で

なぜだか

私の心臓はとくんってなった。
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