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第64話 脱出、そして反撃
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「くそ! この檻が邪魔だな」
アルドはイーリスが捕らえられている檻を掴んで前後にゆすってみた。しかし、さび付いている鉄製の檻は頑丈でそう簡単に壊れそうにない。
「お父さん、ちょっと横にズレて?」
「ん? ああ。わかった」
アルドが横にズレるとイーリスは目を閉じて集中する。体中にあるマナを引き出して体に馴染ませてからそれを一気に放出する。
「ブリュレ!」
イーリスが基本的な炎の魔法を唱える。それを檻に向かって放ち、檻を溶かそうとする。
「んー!」
イーリスはがんばって炎を出し続ける。しかし、一向に檻の鉄が溶けることはなかった。
「はぁはぁ……」
数分程、炎を当て続けた結果……鉄はやっぱり溶けなかった。
「うーん……ダメなのかな」
「温度が足りなかったみたいだな。でも、イーリス。ナイスだ」
「え?」
アルドは疾風の刃を構える。
「イーリス離れていてくれ」
「うん……」
「旋風刃!」
アルドが疾風の刃でイーリスが熱した檻を斬る。カキンと金属がはじける音。やはり、一撃では檻を破壊するには至らない。だが、斬った箇所に旋風が巻き起こり、風の刃が熱された鉄を切り刻んでいく。
バキィとなにかが壊れる音が響き渡る。檻が破壊されて、イーリス程度の体の大きさなら通れるくらいの穴が開く。
「あ、壊れた……?」
「ああ。そうだな。鉄は確かに融点が高いけれど、熱によって強度が落ちやすいんだ。鉄を溶かすなら1500度以上必要だけれど、強度を落とす程度なら500度強で十分だ。意外かもしれないけれど、木の方が熱による強度の減少は緩やかな程なんだ」
「へー、そうなんだ。お父さん詳しいね!」
イーリスが目を輝かせる。父の知識の深さに感銘を受けてしまう。この知識はアルドが転生前に手に入れた知識である。
「さあ、イーリス。行こう。クララとミラが待ってる」
アルドがイーリスに向かって手を差し出す。イーリスはその手を見てくすっと笑い、アルドの手を取る。
「うん!」
アルドと手を繋ぎ、満面の笑みで一緒に地下室を進む。
◇
「食らえ! クラスターレイ!」
邪霊が魔法を唱える。8つの紫色の霊体が飛び出てきて、それがクララとミラを襲う。
「ミラ。当たらないでよ!」
「当然」
若干の追尾性能がある霊体をかわしていくクララとミラ。前方に立っているクララの方に多めに霊体が割り振られる。クララは持ち前の素早さで攻撃をかわしていく。
「アルドさんはこれを1人でどうにかしていたの?」
ミラと2人がかりでやっとなんとかかわしていたものを、かわしたり受け止めたりしてさばいていたアルド。攻撃を受けてみてクララは初めてその凄さを実感してしまう。
「ああ、そうだな。あの人は本当に盾役としてがんばってくれている」
アルドがいる状態の戦闘に慣れ切っている2人は彼がいないことによる辛さを感じてしまう。アルド並に信仰が低い人材は滅多にいるものではない。
「あ、しまった!」
クララの足元がもつれる。霊魂の内の1つがクララに命中する。
「ぐふぅ……!」
「クララ!」
クララの背中に命中した霊体は彼女の背中に焦げ跡を残す。クララはその場に倒れこんでしまうが、幸いにも他の霊体は曲がり切れずに壁にぶつかって消滅してしまったので、他の攻撃は当たらずに済んだ。
「立てるか? クララ!」
「だ、大丈夫!」
クララが立ち上がる。背中がとてもヒリヒリして痛いがここで怯むわけにはいかない。アルドがイーリスを救出して戻るまでに持ちこたえる。
「痛い……アルドさんはこれを全部受けたの?」
自分が見てない中でやったアルドのとんでもないことを実感してしまう。そんな時だった。
「ウィンド!」
イーリスが風の魔法を邪霊に向かって放った。
「ぐ……なんだこの風の威力は……」
邪霊がイーリスが出した風の魔法を受けて抑えつけられてしまう。
「イーリスちゃん!」
クララとミラがイーリスの姿を見て歓喜した。ここまで、イーリスを助けるためにやってきたのだ。その救出大賞がようやく姿を見せてくれて安堵の気持ちが大きい。
「今のは……なにかの間違いか? 私には魔法の耐性が……」
確かにこの邪霊は信仰が低いタイプである。しかし、イーリスの信仰の高さが大きいせいで、魔法が通ってしまうのだ。信仰が低くても決して魔法のダメージが通らないわけではない。
「クララさん! ミラさん!」
イーリスが2人を呼んでから手を振って無事をアピールした。それを見て2人は微笑んだ。
「小賢しい! クラスターレイ!」
邪霊がもう1度魔法を放った。
「イーリス下がって!」
信仰が高いイーリスが邪霊魔法を食らうわけにはいかない。アルドはイーリスを安全な位置に下げようとする。
「ファントムバレット!」
邪霊が更なる魔法をイーリスに向かって放った。対象物以外をすり抜けて進む霊魂の弾丸。これはアルドが盾になったところで防げるものではない。
2つの魔法を同時に攻略しなければならない。まずはアルドは8つの霊魂に向かって走り、全てをその身で受けて消滅させた。
「ぐっ……!」
邪霊魔法に強い耐性があるアルドでも流石に激痛を感じるが、そんなことを思っている暇はない。放たれたファントムバレットからイーリスを守るために雷神の槍を発動させた。
「迅雷!」
すぐさま、イーリスの下に移動して、彼女を抱きかかえる。そして、ファントムバレットの起動の外に出た。
「え、あ。お、お父さん。ありがとう」
アルドに抱きかかえられてイーリスは腰をもじもじと動かして照れている。しかし、まだ戦闘中アルドがイーリスを下すと再び戦闘モードに入る。
「お父さんに攻撃して許さないんだから! サイクロン!」
イーリスが風の魔法を唱える。邪霊はその強風を受けて身動きがとれなくなってしまう。
「くっ……な、なんだこの威力は……ぐっ……」
ダメージ自体は致命傷にはなりえない。が、いくらなんでも風量が凄すぎる。それに抑えつけられて身動きがとれない邪霊。クララとミラはこの状況に顔を見合わせて頷いた。
「ピクシード!」
2人が精霊魔法を放つ。相手の信仰に関わらずに安定したダメージを与えられる魔法。それが邪霊に直撃する。
「ぐ、グぬわああ! バ、バカな! もう少しでもう少しだったのに……! ぐわああああ!」
邪霊はクララとミラの魔法を受けて消滅してしまった。アルドがイーリスを守り、そのイーリスが相手の動きを止めて、回避できない状態にしてから、クララとミラが精霊魔法を叩きこむ。4人の連携が取れた勝利であった。
邪霊のボスが倒されたことでこの屋敷のダンジョンとしての機能は失われた。つまり、この屋敷はもう邪霊の存在がなくなった安全な場所となり、子供たちを襲う脅威がなくなったわけである。
「やったー! この屋敷が元の状態に戻ったよ」
クララがガッツポーズをして喜びを露わにする。ダンジョンが役割を終えたということは、そこに封印されていた精霊も解放されるということだ。アルドたちの目の前に羽根つき帽子を被り、緑色のベストをを着た青年が現れた。
「やあ。僕はこの地に封印されていた精霊。まずはお礼をさせてよ」
精霊は、イーリス、クララ、ミラの力を引き出してマナの器を強化した。そしてアルドの方を見る。
「ふむ。この疾風の刃という武器。僕の力を受けると新たなる技を習得できるみたいだね」
「本当か?」
今まで疾風一閃と旋風刃。この2つの技でやりくりしてきた疾風の刃。それに新たなる技が解放されるというのだ。
「うん。今までいっぱい色んな精霊の力を受けてきたからね。それも相まって、技が解放できる。ちょっと貸してみて」
精霊がアルドの疾風の刃に力を送り込む。見た目的には変わらないが、なにか新しい力をアルドは感じ取った。
「その技を活かすも殺すも使い手次第だね。あの邪霊を倒したキミたちなら使いこなせると信じているよ。それじゃあ、僕はそろそろ行くね。まだまだ邪霊に苦しむ人はいるから」
そう言うと精霊は去って行った。
アルドはイーリスが捕らえられている檻を掴んで前後にゆすってみた。しかし、さび付いている鉄製の檻は頑丈でそう簡単に壊れそうにない。
「お父さん、ちょっと横にズレて?」
「ん? ああ。わかった」
アルドが横にズレるとイーリスは目を閉じて集中する。体中にあるマナを引き出して体に馴染ませてからそれを一気に放出する。
「ブリュレ!」
イーリスが基本的な炎の魔法を唱える。それを檻に向かって放ち、檻を溶かそうとする。
「んー!」
イーリスはがんばって炎を出し続ける。しかし、一向に檻の鉄が溶けることはなかった。
「はぁはぁ……」
数分程、炎を当て続けた結果……鉄はやっぱり溶けなかった。
「うーん……ダメなのかな」
「温度が足りなかったみたいだな。でも、イーリス。ナイスだ」
「え?」
アルドは疾風の刃を構える。
「イーリス離れていてくれ」
「うん……」
「旋風刃!」
アルドが疾風の刃でイーリスが熱した檻を斬る。カキンと金属がはじける音。やはり、一撃では檻を破壊するには至らない。だが、斬った箇所に旋風が巻き起こり、風の刃が熱された鉄を切り刻んでいく。
バキィとなにかが壊れる音が響き渡る。檻が破壊されて、イーリス程度の体の大きさなら通れるくらいの穴が開く。
「あ、壊れた……?」
「ああ。そうだな。鉄は確かに融点が高いけれど、熱によって強度が落ちやすいんだ。鉄を溶かすなら1500度以上必要だけれど、強度を落とす程度なら500度強で十分だ。意外かもしれないけれど、木の方が熱による強度の減少は緩やかな程なんだ」
「へー、そうなんだ。お父さん詳しいね!」
イーリスが目を輝かせる。父の知識の深さに感銘を受けてしまう。この知識はアルドが転生前に手に入れた知識である。
「さあ、イーリス。行こう。クララとミラが待ってる」
アルドがイーリスに向かって手を差し出す。イーリスはその手を見てくすっと笑い、アルドの手を取る。
「うん!」
アルドと手を繋ぎ、満面の笑みで一緒に地下室を進む。
◇
「食らえ! クラスターレイ!」
邪霊が魔法を唱える。8つの紫色の霊体が飛び出てきて、それがクララとミラを襲う。
「ミラ。当たらないでよ!」
「当然」
若干の追尾性能がある霊体をかわしていくクララとミラ。前方に立っているクララの方に多めに霊体が割り振られる。クララは持ち前の素早さで攻撃をかわしていく。
「アルドさんはこれを1人でどうにかしていたの?」
ミラと2人がかりでやっとなんとかかわしていたものを、かわしたり受け止めたりしてさばいていたアルド。攻撃を受けてみてクララは初めてその凄さを実感してしまう。
「ああ、そうだな。あの人は本当に盾役としてがんばってくれている」
アルドがいる状態の戦闘に慣れ切っている2人は彼がいないことによる辛さを感じてしまう。アルド並に信仰が低い人材は滅多にいるものではない。
「あ、しまった!」
クララの足元がもつれる。霊魂の内の1つがクララに命中する。
「ぐふぅ……!」
「クララ!」
クララの背中に命中した霊体は彼女の背中に焦げ跡を残す。クララはその場に倒れこんでしまうが、幸いにも他の霊体は曲がり切れずに壁にぶつかって消滅してしまったので、他の攻撃は当たらずに済んだ。
「立てるか? クララ!」
「だ、大丈夫!」
クララが立ち上がる。背中がとてもヒリヒリして痛いがここで怯むわけにはいかない。アルドがイーリスを救出して戻るまでに持ちこたえる。
「痛い……アルドさんはこれを全部受けたの?」
自分が見てない中でやったアルドのとんでもないことを実感してしまう。そんな時だった。
「ウィンド!」
イーリスが風の魔法を邪霊に向かって放った。
「ぐ……なんだこの風の威力は……」
邪霊がイーリスが出した風の魔法を受けて抑えつけられてしまう。
「イーリスちゃん!」
クララとミラがイーリスの姿を見て歓喜した。ここまで、イーリスを助けるためにやってきたのだ。その救出大賞がようやく姿を見せてくれて安堵の気持ちが大きい。
「今のは……なにかの間違いか? 私には魔法の耐性が……」
確かにこの邪霊は信仰が低いタイプである。しかし、イーリスの信仰の高さが大きいせいで、魔法が通ってしまうのだ。信仰が低くても決して魔法のダメージが通らないわけではない。
「クララさん! ミラさん!」
イーリスが2人を呼んでから手を振って無事をアピールした。それを見て2人は微笑んだ。
「小賢しい! クラスターレイ!」
邪霊がもう1度魔法を放った。
「イーリス下がって!」
信仰が高いイーリスが邪霊魔法を食らうわけにはいかない。アルドはイーリスを安全な位置に下げようとする。
「ファントムバレット!」
邪霊が更なる魔法をイーリスに向かって放った。対象物以外をすり抜けて進む霊魂の弾丸。これはアルドが盾になったところで防げるものではない。
2つの魔法を同時に攻略しなければならない。まずはアルドは8つの霊魂に向かって走り、全てをその身で受けて消滅させた。
「ぐっ……!」
邪霊魔法に強い耐性があるアルドでも流石に激痛を感じるが、そんなことを思っている暇はない。放たれたファントムバレットからイーリスを守るために雷神の槍を発動させた。
「迅雷!」
すぐさま、イーリスの下に移動して、彼女を抱きかかえる。そして、ファントムバレットの起動の外に出た。
「え、あ。お、お父さん。ありがとう」
アルドに抱きかかえられてイーリスは腰をもじもじと動かして照れている。しかし、まだ戦闘中アルドがイーリスを下すと再び戦闘モードに入る。
「お父さんに攻撃して許さないんだから! サイクロン!」
イーリスが風の魔法を唱える。邪霊はその強風を受けて身動きがとれなくなってしまう。
「くっ……な、なんだこの威力は……ぐっ……」
ダメージ自体は致命傷にはなりえない。が、いくらなんでも風量が凄すぎる。それに抑えつけられて身動きがとれない邪霊。クララとミラはこの状況に顔を見合わせて頷いた。
「ピクシード!」
2人が精霊魔法を放つ。相手の信仰に関わらずに安定したダメージを与えられる魔法。それが邪霊に直撃する。
「ぐ、グぬわああ! バ、バカな! もう少しでもう少しだったのに……! ぐわああああ!」
邪霊はクララとミラの魔法を受けて消滅してしまった。アルドがイーリスを守り、そのイーリスが相手の動きを止めて、回避できない状態にしてから、クララとミラが精霊魔法を叩きこむ。4人の連携が取れた勝利であった。
邪霊のボスが倒されたことでこの屋敷のダンジョンとしての機能は失われた。つまり、この屋敷はもう邪霊の存在がなくなった安全な場所となり、子供たちを襲う脅威がなくなったわけである。
「やったー! この屋敷が元の状態に戻ったよ」
クララがガッツポーズをして喜びを露わにする。ダンジョンが役割を終えたということは、そこに封印されていた精霊も解放されるということだ。アルドたちの目の前に羽根つき帽子を被り、緑色のベストをを着た青年が現れた。
「やあ。僕はこの地に封印されていた精霊。まずはお礼をさせてよ」
精霊は、イーリス、クララ、ミラの力を引き出してマナの器を強化した。そしてアルドの方を見る。
「ふむ。この疾風の刃という武器。僕の力を受けると新たなる技を習得できるみたいだね」
「本当か?」
今まで疾風一閃と旋風刃。この2つの技でやりくりしてきた疾風の刃。それに新たなる技が解放されるというのだ。
「うん。今までいっぱい色んな精霊の力を受けてきたからね。それも相まって、技が解放できる。ちょっと貸してみて」
精霊がアルドの疾風の刃に力を送り込む。見た目的には変わらないが、なにか新しい力をアルドは感じ取った。
「その技を活かすも殺すも使い手次第だね。あの邪霊を倒したキミたちなら使いこなせると信じているよ。それじゃあ、僕はそろそろ行くね。まだまだ邪霊に苦しむ人はいるから」
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