にゃおーん「我輩は猫である」

t村

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にゃおーん「我輩は猫である」

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 吾輩は猫である。名前はまだない。

 そんな吾輩は今、昼飯を待っているところである。

 私に背を向け、キッチンと対峙した彼女はいそいそと肉を刻み、コンロの上にあるフライパンに入れた。

 フライパンからは、タンパク質が焼ける香ばしい匂いが漂ってくる。

 ふむ今日の昼飯はおそらく近所のおばちゃんを使ったなにかなのだろう。

 太もも辺りだと嬉しい。

 思わず涎が出てしまい、床が汚れてしまった。
このびちゃびちゃな汚れた床を飼い主に見られてしまっては怒られてしまう。

 仕方ないのでその上で脱糞をし、カモフラージュをすることにした。

 「ちょっとー!またウンチしてるじゃないですか!」

やはり気づかれてしまったか。

 まあ当然だな。
 吾輩のような高尚な存在がする脱糞たどは、そうそうお目にかかれないのだ。

 飼い主はウンチなどと言うが、我輩から出ているのでもはや同胞と呼ぶべきだな。
 
 なんなら我が同胞を「高いたか~い」させてやっても良い。

 しかし、まだ昼飯を食べていないので出てしまった同胞を再び身体に取り込まなければ、生命維持に支障をきたしてしまうだろう。

 「仕方のないけつ穴だ」

 吾輩は緩くなってしまった自らのけつ穴に叱咤をし、先程放出された糞をバキュームカーの如く口から吸い上げる。

 ふむ。なかなか口あたりが良い。
 今度は味わうようにゆっくりと咀噛する。

 「ん?」

 なんだこれは? 吾輩の口内に異変が生じたようだ。

 これは……。

 そうか、これが俗に言う『美味しい』というやつか! 
 なんとも不思議な感覚だ。

 この味を知ってしまったらもう後戻り出来ない。

 しかし先程我が同胞を捻り出したばかり。すでにケツ穴は悲鳴を上げているところである。

 ならば……

 もう一度ねじ込むまでよ!!!

「ふんぬぅおおおおぉぉっ!!」

「きゃああぁぁぁ!!何やってんですか!?」
「何をしているだと?見てわからないのか?」
「わかりませんよ!わかるわけがないでしょう!」
「わからぬかこのゲスめ!」

 吾輩は飼い主を叱咤し、そのまま彼女のけつ穴目がけ一直線に走った。

 吾輩の糞が美味しいので有れば、彼女の糞もさぞかし美味しいのだろう。

 吾輩はユートピアを見つけるのだ。
そしてそこの主に君臨をする。
 「くそったれぇええ!!!」

 吾輩は飼い主に突き飛ばされ、そのままキッチンの角へと叩きつけられた。
「ぐあっ……」
「まったく、あなたって人は……」

飼い主はそのまま、包丁を手に持ちこちらへ歩み寄ってきた。

そして吾輩を素通りし、キッチンへ戻った。
「な、なぜ殺さない?」
「別に殺す理由なんてありませんからね」
「な、なら何故吾輩を突き飛ばしたりしたのだ!」
「うるさいですね。ご飯食べますよ」
「ご、ごはん……?」

 彼女は冷蔵庫の中から何かを取り出した。
 あれは何だろうか。

 こっそりと覗いてみる。

 それは昨日食べた近所のおじちゃんの残りだった。
 それを見た瞬間、吾輩のお腹がぐるると音を立てた。
「ほら、食べてもいいですよ」
「い、いいのか?」
「はい。今日だけ特別です」
「あ、ありがとう」

 吾輩は目の前に置かれた皿に乗った餌に飛びついた。
そして飛び退いた。
「な、なんじゃこりゃあああ!!!」

そこには見たこともない物体があった。

白濁した粘液の中に沈むそれは、まるで生ゴミのように異臭を放っている。
「なんだこれ!?」
「あなたの大好きなおじちゃんの残り物ですよ」
「これが食べ物だと?腐っているではないか!」

ふざけやがって。
この飼い主はイカれてやがる。

吾輩は自身のケツ穴を飼い主に向け、糞捻り出した。
「食らえクソ野郎!」
「汚いっ!」

飼い主はすぐさましゃがみ込み、吾輩の肛門に指を差し込んだ。
「ぎゃあぁぁぁぁ!!!」
「これでよしっと」
「な、なにをしたんだ?」
「ふふ、知りたい?尻だけに」
「な、なんだよそれ」
「あはは、冗談だよ」

彼女は立ち上がり、再びキッチンに向かった。

「まあそんなことはどうでも良いのです」
「ど、どうでも良くはないぞ」
「じゃあ言いましょう。これは私の作ったスペシャル料理なんです」
「にゃ~ん」

 そう言われてみると確かに先程の臭いとは違うような気がする。

 むしろ良い匂いだ。

「食べてみてくださいよ」
「た、食べる?」
「うん」
「これを?」
「そうそう」
「無理だろ」
「なんで?」
「だってこんな…」

調理されたおばあちゃんは綺麗なアップルパイになっていた。
とても綺麗で美味しそうだ。
吾輩にはもったいない。

「大丈夫です。味見しましたけど美味しかったですよ」
「本当か?」
「はい。自信作です」
「わかった」

 吾輩は恐る恐る口に運ぶ。

「あむ」
「どうですか?」
「まぁ、おばあちゃんだな。おばあちゃんの味だ」

素材に使っているのだ。当然といえば当然である。

「そうですか?私的にはもっとこう、なんかあると思うんですよね」
「具体的に言うとなんだ?」
「えーっと、まず食感が気持ち悪い」
「それは作った側が言っていいことなのか?!」
「あと臭い」
「だからそれ自分で言うか?
というか、おばあちゃんを否定しすぎだろう!」
「それと色々混ざってカオスになってるところかなーって思います」
「なんだよそのよくわかんない感想!結局なんなのだ!全然わからないぞ!」
「そうですね。私もよくわからないですね。とりあえず食べちゃってくださいよ」
「お、おう」
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