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第25話 女騎士の惚気話
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「ただいまー」
「おかえりなさいませ! お仕事お疲れ様です」
「おかえり、水谷殿」
セラフィーラさんとエリスは焚き火を囲っていた。
「エリス様が薪割りをしてくださいました! 一振りで八つ切りにしてしまうのです!」
「聖剣ジルベールの本来の使い方ではないのだがな……」
エリスは苦笑い。
「戸籍の件はどうなりましたか? お電話したのですよね?」
「それなんですが、成りすましの可能性もあるから現地に直接こい、と言われてしまいました。戸籍の管轄は役所で間違いないそうです」
「岐阜へ行かれるのですか?」
「はい。新幹線が一番早いのですが、お金がないので夜行バスで行こうかと……」
「…………」
セラフィーラさんは、期待の眼差しで俺を凝視していた。
「セ、セラフィーラさんも一緒に行きますか?」
「はい! ぜひ! 私もご一緒させてください!」
にっこにこのセラフィーラさんは、全方位に幸せのオーラを振りまいている。
お金足りるかなぁ。
「では、決定ですね。二人で岐阜に行きましょう!」
「はい! 楽しみです!」
セラフィーラさんや。遊びに行くわけではないからね?
「エリス様はどうなさるのですか?」
「私は、とにかく帰る方法を探す! 帰還が確定するまでは、とにかく鍛錬だ! もっと強くならなければ」
即答だった。
「それで問いたいのだが、侍と忍にはどこで会える? 手合わせ願いたい!」
「えっ」
現代に忍者とかいないよな。強いて言えば、映画村? 江戸村?
本当のことを言っていいのだろうか。
「申し訳ございません。存じ上げておりません」
「そうか……。水谷殿は何か知らないか? どんな些細な情報でもいい!」
「実は、侍と忍はもうこの世に存在しなくて……」
「んなっ! がっ……あぁ……」
エリスは銀髪を振り乱して、体育座りで突っ伏してしまった。
厳密にはいないことはないけれど、エリスが期待しているものとは違うだろう。
「そうか……そうか……」
鎧姿で剣を携えた強そうな騎士様が体育座りで黄昏ているギャップよ。
なんと声をかけてやれば。
「エリス様はなぜ、力にこだわるのですか?」
そう! それ気になってた! 流石セラフィーラさん!
「少し長い話になってもいいか?」
エリスがチワワのようなか細い声で聞くと、セラフィーラさんは粛然と頷いた。
「私には同い年の幼馴染がいた。彼は、領主の娘の私に物怖じせずに接してくれた数少ない友人だった。よく屋敷を抜け出しては、彼や従姉妹と野山を駆け回って遊んだ」
おぉ、幼馴染。俺には幼馴染が一人もいないからすっごく憧れる。
母さんと父さんが駆け落ちをしたせいで、どこかに存在しているらしい従姉妹には会ったことすらない。いつか会えないかな。
「あれは、たしか8つか9つの時だ。私たちは森の中で花畑を見つけたんだ。あいつったら、そこで花を摘んで冠を作ってくれてな。男勝りな私のことを女の子扱いしてくれたんだ。そこで約束をした」
お? 惚気かぁ?
「その約束とは?」
セラフィーラさんは聞き入っていた。
エリスは気恥ずかしそうな顔をした。
「ずっと一緒にいよう。と、ただそれだけだ。でも私にはそれがとても嬉しくて、あいつを支えていきたいと子供ながらに思ったんだ。でも、できなかった」
流れ変わったな。
「12歳の誕生日に、あいつは村から忽然と姿を消した。村中を探したが見つからなかった。大雨が降っていたから足跡も見つからなかった」
「なぜ姿を?」
「分からない。数日後に知らせが届いた。あいつが、王都の1万人の囚人たちを脱獄させたと。それからしばらくして、あいつは魔王として名を轟かせた。ただの人間が、あの悪烈非道な魔王になってしまったんだ。だから私は決意した。私が必ずあいつを殺すと」
俺たちは息を呑んでしまった。
「それからは必死に鍛錬をして剣技を磨いた。私の家は、領主であり、騎士の家系だった。女の私は騎士になる必要はなかったが、父上に頼み込んでルテリア騎士団に入団した。実戦で成果を上げて、小隊長になった。誰も死なせたくなかった。それでもたくさんの仲間が死んだ。私は隊長になった。魔族に襲われた村の生き残りの少女、フレデリカも仲間になってくれた。そして、気がつけば私はルテリア騎士団 団長になっていた」
エリスは幼馴染の彼のために、全力で強くなろうとしたのか。
「私たちは魔王討伐作戦を決行した。大隊の陽動のおかげで私はようやく、あいつに再開することができた。10年ぶりだった。説得を試みたが、ダメだった。私は、その瞬間まで希望を捨てきれなかった自分を恥じた。全力で戦ったが、あいつの方がうわてだった。私は、謎の赤い魔法陣で身動きを封じられ、気がついたらここに。私は最後の最後で失敗したのだ……。すまない、話しすぎたな」
「そんなことありません! 打ち明けてくださりありがとうございます」
セラフィーラさんは目に涙を浮かべていた。
「だから私は、力をつけたい。次は絶対に殺す。スタン系か、呪い系か、まだ分からないが、あの赤い魔法陣も対策する」
エリスはまだ、諦めていなかった。もう次の一手を考えている。
ん? 呪い?
「あっ、そういえば【賢者の目】で鑑定した時に、呪いLv2ってありました」
「本当か!? 水谷殿の見間違いではないのか?」
「いや、たしかに」
目に意識を注ぐ。
================
【基礎ステータス】
生命力 S
攻撃力 S
防御 A
魔力量 B
魔力放出 B
状態異常耐性 D
幸運度 A
状態異常
呪いLv2
================
「やっぱり、呪いLv2があります」
「【賢者の目】に間違いはありません。私が保証します」
それからセラフィーラさんが、いくつかの解呪魔法をかけたが効果はなかった。
「状態異常のレベルは1~5となっております。今はLv2なのでそれほど影響はないようですが、進行するとどうなるか……」
「そうか。すまないが水谷殿。私の呪いを定期的に診断してくれないか?」
「分かりました!」
俺のハズレスキルが人の役に立った。
「水谷殿、敬語はやめてくれ。むず痒い。これまで通りため口で話してくれ」
「わ、わかった」
無意識に敬語で話していた。
「では、私は、エリス様帰還のための転移魔法陣の構築に挑戦してみます!」
「本当か!?」
「でも、ちょっと前に転移魔法陣の発動にはとんでもない数の魂が必要だって。しかも成功率はわずかだって言ってましたよね!?」
「あれは、1度も訪れていない場所に転移したい場合の話です。エリス様の世界に帰還するための魔法陣であれば、ずいぶん先になるとは思いますが、なんとかなるかもです」
たしかに、空を飛ぶやルーラでも未開の地にはいけないもんな。俺は大人しく現代で暮らすか……。
「てんか、以前はよく転移魔法陣を構築していましたから。この土地ではまた勝手が違うので確実とは行きませんが、善処します!」
「天下? ああ、ありがとう、セラフィーラ殿! 恩に着る」
二人はガシッと握手した。
こうして一気にやることが増えた。
岐阜旅行(戸籍の復活)。
エリスの呪いの解明。
転移魔法陣の構築。
できる限りのことを頑張ろう!
まずは、金を貯めて、岐阜へ行くための夜行バスを予約しなくては。
そんなこんなで話がまとまったので、昔、母さんに習った野菜たっぷりカレーを振る舞った。
二人とも、感激してくれた。
俺だって多少は料理を作れるのだ。
食後のドラム缶風呂には俺、セラフィーラさん、エリスの順で入った。うん、一番無難だね。
寝床をどうするのか疑問だったのだが、エリスは万が一に備えると言って、テントを作らずに池のほとりに腰掛けるそうだ。
明日は山田さんが帰ってくる。
エリスの斬撃で木がいくつも斬り倒されているが、大丈夫だろうか。
俺は、いつものようにセラフィーラさんの睡眠魔法で眠りに落ちた。
「おかえりなさいませ! お仕事お疲れ様です」
「おかえり、水谷殿」
セラフィーラさんとエリスは焚き火を囲っていた。
「エリス様が薪割りをしてくださいました! 一振りで八つ切りにしてしまうのです!」
「聖剣ジルベールの本来の使い方ではないのだがな……」
エリスは苦笑い。
「戸籍の件はどうなりましたか? お電話したのですよね?」
「それなんですが、成りすましの可能性もあるから現地に直接こい、と言われてしまいました。戸籍の管轄は役所で間違いないそうです」
「岐阜へ行かれるのですか?」
「はい。新幹線が一番早いのですが、お金がないので夜行バスで行こうかと……」
「…………」
セラフィーラさんは、期待の眼差しで俺を凝視していた。
「セ、セラフィーラさんも一緒に行きますか?」
「はい! ぜひ! 私もご一緒させてください!」
にっこにこのセラフィーラさんは、全方位に幸せのオーラを振りまいている。
お金足りるかなぁ。
「では、決定ですね。二人で岐阜に行きましょう!」
「はい! 楽しみです!」
セラフィーラさんや。遊びに行くわけではないからね?
「エリス様はどうなさるのですか?」
「私は、とにかく帰る方法を探す! 帰還が確定するまでは、とにかく鍛錬だ! もっと強くならなければ」
即答だった。
「それで問いたいのだが、侍と忍にはどこで会える? 手合わせ願いたい!」
「えっ」
現代に忍者とかいないよな。強いて言えば、映画村? 江戸村?
本当のことを言っていいのだろうか。
「申し訳ございません。存じ上げておりません」
「そうか……。水谷殿は何か知らないか? どんな些細な情報でもいい!」
「実は、侍と忍はもうこの世に存在しなくて……」
「んなっ! がっ……あぁ……」
エリスは銀髪を振り乱して、体育座りで突っ伏してしまった。
厳密にはいないことはないけれど、エリスが期待しているものとは違うだろう。
「そうか……そうか……」
鎧姿で剣を携えた強そうな騎士様が体育座りで黄昏ているギャップよ。
なんと声をかけてやれば。
「エリス様はなぜ、力にこだわるのですか?」
そう! それ気になってた! 流石セラフィーラさん!
「少し長い話になってもいいか?」
エリスがチワワのようなか細い声で聞くと、セラフィーラさんは粛然と頷いた。
「私には同い年の幼馴染がいた。彼は、領主の娘の私に物怖じせずに接してくれた数少ない友人だった。よく屋敷を抜け出しては、彼や従姉妹と野山を駆け回って遊んだ」
おぉ、幼馴染。俺には幼馴染が一人もいないからすっごく憧れる。
母さんと父さんが駆け落ちをしたせいで、どこかに存在しているらしい従姉妹には会ったことすらない。いつか会えないかな。
「あれは、たしか8つか9つの時だ。私たちは森の中で花畑を見つけたんだ。あいつったら、そこで花を摘んで冠を作ってくれてな。男勝りな私のことを女の子扱いしてくれたんだ。そこで約束をした」
お? 惚気かぁ?
「その約束とは?」
セラフィーラさんは聞き入っていた。
エリスは気恥ずかしそうな顔をした。
「ずっと一緒にいよう。と、ただそれだけだ。でも私にはそれがとても嬉しくて、あいつを支えていきたいと子供ながらに思ったんだ。でも、できなかった」
流れ変わったな。
「12歳の誕生日に、あいつは村から忽然と姿を消した。村中を探したが見つからなかった。大雨が降っていたから足跡も見つからなかった」
「なぜ姿を?」
「分からない。数日後に知らせが届いた。あいつが、王都の1万人の囚人たちを脱獄させたと。それからしばらくして、あいつは魔王として名を轟かせた。ただの人間が、あの悪烈非道な魔王になってしまったんだ。だから私は決意した。私が必ずあいつを殺すと」
俺たちは息を呑んでしまった。
「それからは必死に鍛錬をして剣技を磨いた。私の家は、領主であり、騎士の家系だった。女の私は騎士になる必要はなかったが、父上に頼み込んでルテリア騎士団に入団した。実戦で成果を上げて、小隊長になった。誰も死なせたくなかった。それでもたくさんの仲間が死んだ。私は隊長になった。魔族に襲われた村の生き残りの少女、フレデリカも仲間になってくれた。そして、気がつけば私はルテリア騎士団 団長になっていた」
エリスは幼馴染の彼のために、全力で強くなろうとしたのか。
「私たちは魔王討伐作戦を決行した。大隊の陽動のおかげで私はようやく、あいつに再開することができた。10年ぶりだった。説得を試みたが、ダメだった。私は、その瞬間まで希望を捨てきれなかった自分を恥じた。全力で戦ったが、あいつの方がうわてだった。私は、謎の赤い魔法陣で身動きを封じられ、気がついたらここに。私は最後の最後で失敗したのだ……。すまない、話しすぎたな」
「そんなことありません! 打ち明けてくださりありがとうございます」
セラフィーラさんは目に涙を浮かべていた。
「だから私は、力をつけたい。次は絶対に殺す。スタン系か、呪い系か、まだ分からないが、あの赤い魔法陣も対策する」
エリスはまだ、諦めていなかった。もう次の一手を考えている。
ん? 呪い?
「あっ、そういえば【賢者の目】で鑑定した時に、呪いLv2ってありました」
「本当か!? 水谷殿の見間違いではないのか?」
「いや、たしかに」
目に意識を注ぐ。
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【基礎ステータス】
生命力 S
攻撃力 S
防御 A
魔力量 B
魔力放出 B
状態異常耐性 D
幸運度 A
状態異常
呪いLv2
================
「やっぱり、呪いLv2があります」
「【賢者の目】に間違いはありません。私が保証します」
それからセラフィーラさんが、いくつかの解呪魔法をかけたが効果はなかった。
「状態異常のレベルは1~5となっております。今はLv2なのでそれほど影響はないようですが、進行するとどうなるか……」
「そうか。すまないが水谷殿。私の呪いを定期的に診断してくれないか?」
「分かりました!」
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「水谷殿、敬語はやめてくれ。むず痒い。これまで通りため口で話してくれ」
「わ、わかった」
無意識に敬語で話していた。
「では、私は、エリス様帰還のための転移魔法陣の構築に挑戦してみます!」
「本当か!?」
「でも、ちょっと前に転移魔法陣の発動にはとんでもない数の魂が必要だって。しかも成功率はわずかだって言ってましたよね!?」
「あれは、1度も訪れていない場所に転移したい場合の話です。エリス様の世界に帰還するための魔法陣であれば、ずいぶん先になるとは思いますが、なんとかなるかもです」
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「てんか、以前はよく転移魔法陣を構築していましたから。この土地ではまた勝手が違うので確実とは行きませんが、善処します!」
「天下? ああ、ありがとう、セラフィーラ殿! 恩に着る」
二人はガシッと握手した。
こうして一気にやることが増えた。
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転移魔法陣の構築。
できる限りのことを頑張ろう!
まずは、金を貯めて、岐阜へ行くための夜行バスを予約しなくては。
そんなこんなで話がまとまったので、昔、母さんに習った野菜たっぷりカレーを振る舞った。
二人とも、感激してくれた。
俺だって多少は料理を作れるのだ。
食後のドラム缶風呂には俺、セラフィーラさん、エリスの順で入った。うん、一番無難だね。
寝床をどうするのか疑問だったのだが、エリスは万が一に備えると言って、テントを作らずに池のほとりに腰掛けるそうだ。
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