34 / 34
第34話 旅の終わりとアパート同棲
しおりを挟む
私には従兄弟がいる。
そう言われて育ってきた。
一人っ子で、兄弟というものに憧れていた私は、半年に一度だけ届く、従兄弟の成長した姿を心待ちにしていた。
従兄弟に対する思いは、だんだんと大きくなっていった。
甘える存在がほしい。
会いたい。話したい。お兄ちゃんと呼びたい。
「まだかな……」
半年の節目に写真が送られてこなかった。
毎日ポストを確認したが、写真は入っていない。忙しくて遅れているのだろうか。
ほどなくして、テレビによく知る顔が映し出された。
隕石が民家に墜落したという大事件だった。
どうして……そう思った。信じられなかった。
皮肉なことにテレビで兄の名前を初めて知った。
一ヶ月以上、意気消沈した。
いい加減に、立ち直らなくてはいけない。
私は、母に頼み込み、兄の四十九日に花束を備えた。
兄は生きていた。
私は思わず「お兄ちゃん!?」と叫んでしまった。
しかし、兄、いや颯人さんは一人ではなかった。
ブロンドヘアの綺麗な女の人と一緒だった。
女神様って言葉がよく似合うと思う。
私の付け入る隙はなさそうだった。
それでも、颯人さんともっと話したい。もっと仲良くなりたい。
私は夕食の配膳を名乗り出た。
私のことを褒めてくれた。お礼を言ってくれた。
舞い上がった私は勇気を振り絞って、連絡先を聞いた。
「ごめん、俺、スマホもパソコンも持ってないんだよね……。家電とかもなくて」
嘘をつかれた。
颯人さんは、私のことなど眼中になかったのだ。
それでも、少しでも長く一緒にいたい。
そう考えた私は、戸籍の取得についていった。
「今度こそ行ってきます!」
「行ってらっしゃいませ!」
「行ってらっしゃい……」
祖父、母、颯人さんを役場に見送った私は、セラフィーラさんと二人きりになった。
気まずい時が流れる。
自販機のジュースを買ったり、役場の周りをふらふらと歩いて誤魔化した。
「何か言いたいことがあるのでしょうか?」
えっ、見透かされている。
「言いたいこと、というか聞きたいことが……」
「何でもお聞きください!」
「颯人さんの戸籍が戻ったら、お二人は結婚するんですか?」
「いえ、そうとはお聞きしていませんね」
釈然としない。
「セラフィーラさんは、颯人さんと結婚したいですか?」
「……申し訳ございません。私、勉強不足でして、まだ、よく分かっていないのです」
「あっ、すみません」
二人のペースで進めているのに、私なんかが口を出しするなんて、おこがましい。
そうだ、颯人さんはダメだったけど、せめて、セラフィーラさんと連絡先を。
「あ、あの、セラフィーラさん、SNSか何か交換しませんか?」
「SNSとは何でしょうか?」
「あっ、えっと、スマホの連絡が取れるアプリ? ソーシャル、ソーシャルなんだっけ」
「申し訳ございません。私、スマートフォンと呼ばれるものを触ったことがありません」
え!?!? 嘘にしては大袈裟すぎる。
「代わりに颯人さんのご連絡先を、と言いたいところですが、現在、颯人さんもお持ちではないのです……」
セラフィーラさんの顔は本当っぽい。
そっか、颯人さんは、ほんとにスマホ持ってなかったんだ。ホッとした。
「でも、スマホもなしにどうやって生活するんですか?」
「どう、と言われましても……。公園の段ボールテントで同棲しておりました」
「ホームレスじゃないですか!!! それ、同棲って言うんですか? 作品タイトル破綻してません!??」
「ホームレスとも、言うそうですね」
セラフィーラさんは、どうしてそんなに落ち着いていられるんだろう。
私は、セラフィーラさんにたくさん質問した。
薪割りをした話、二人で台風を凌いだ話、一緒に料理をした話、初めて缶ジュースを飲んだ話。
どう考えても、限界生活なのに、それらをとても楽しそうに語っていた。
セラフィーラさんは、私たちが見過ごす何気ないことにも、幸せを見出している。
きっと颯人さんは、セラフィーラさんのこういう面に惹かれたのだろう。
こうなった経緯はよくは分からないけど、二人を応援したいと思った。
幸せになってほしいと思った。
私は、自分の思いを明かした。
人に相談したのは、初めてだった。
「はやとさんなら、きっと許してくれます」
と、セラフィーラさんは背中を押してくれた。
◇
隕石に当たって死に、転生して女神、セラフィーラさんと同棲することになったはいいが、戸籍なしのホームレス生活。
一度死んで、戸籍がないから何もできない。
あげくの果てに、異世界から転移してきた女騎士に命を狙われる始末。
セラフィーラさんが発見した、戸籍を再取得できる認定死亡制度に縋って故郷の岐阜に戻り、楓さんたちと出会った。
ついに! この日が来た!!
セラフィーラさん、山田さん、柿本社長、橘先輩、エリス、佐曽利家のみんな、俺を支えてくれた全員に感謝だ!
「お待たせしました!」
セラフィーラさんは、手を握って固唾を飲んで見守る。
「はやとさん、結果はいかがでしたか?……」
「戸籍が……復活しました!!!」
「おめでとうございます!!」
セラフィーラさんと楓さんと飛び跳ねて喜び合った。
人目なんか気にならない。
ようやく自由だ!!
「いろんな手続きをしたけど、どの担当の人もびっくりしてたね」
月江さんは苦笑している。
祖父と月江さんは俺が水谷颯人 本人だという証人になってくれた上に引越しに必要な手続きを手伝ってくれた。
「みなさん、本当にありがとうございます!」
その後は、戸籍復活祝いとしてみんなで飯を食べた。
ひとしきり騒いで、このまま佐曽利家の一員になってしまいたいくらいだが、柿本さんたちにしっかり恩返しをするためには、東京に帰らなくてはいけない。
あっという間に帰りのバスの時間になってしまった。
「それじゃあ、みなさん。本当にお世話になりました」
セラフィーラさんと二人で頭を下げた。
「こっちこそ楽しかったよ。また来てね」
なんてあったけぇ家族なんだ。
「楓様」
セラフィーラさんが、声をかけると、楓さんはハッとした表情を浮かべる。
手続きで待ってもらっている間に親睦を深めてくれたらしい。
「あ、あの、颯人さん」
「どうしました?」
「颯人さんのこと、えっと、最初みたいに、お兄ちゃん、って呼んでもいい?」
お、お兄ちゃん!!!!?
でも、よくよく考えたら、俺って万年一人っ子で姉とか妹に憧れがあったんだよな……。
「え、えーと、俺なんかでよければ……。じゃあ、俺は楓ちゃん、って呼んでもいいかな?」
「うん!! お兄ちゃん!」
楓ちゃんの満面の笑みが可愛らしかった。
「勇気を出してよかったですね。楓様!」
え、俺じゃなくて、楓さんに? ちょっと妬けるな……。
◇
帰宅後の佐曽利家にて。
「おじいちゃん、お母さん」
「なになに、改まってどうしたの?」
「私……東京の高校に行きたい。東京の高校を受験する!」
「ええええぇぇ!!!?」
◇
佐曽利家のみんなに別れを告げた俺たちは、バスターミナルでお土産を買い漁った。お土産はセラフィーラさんのチョイスだ。
「大荷物になってしまいました」
「そうですね、ちょっと荷物だけでも先にバスに入れられないか、相談してきましょうか」
俺はバスのチケットを取り出して、バスの番号をかくに……。
あ。
浮かれてた。
「セラフィーラさん……」
「はぁい?」
「このチケットのバス......昨日のバスでした……」
「た、た、大変です!! どどどどうしましょう!!」
セラフィーラさんと慌てふためいた。
そうだ、そもそも日帰りでサクッと戸籍を取得して帰る予定だったことを忘れていた......。
「と、とりあえず、二人分の新しいバスの座席を、やばい。金が足りない」
「私を担保にしたらお金が借りれるのではないでしょうか?」
「そんな人質制度ありませんよぉ。あぁ、どうしよう」
感動的な別れをしたが、恥を忍んで佐曽利家のみんなに助けを求めてもう一泊するか……。でも柿本建設の仕事もあるし……。
「はやとさん、一つだけ手段がございます」
「え?」
「また、目立ってもよろしいでしょうか?」
「ま さ か !?」
◇
「スゲェ!! 本当に飛んでますよ!!」
「ふふふ、安心安全、空の旅です」
俺たちは今、上空を優雅に飛んでいる。
俺の体は、魔法によって浮いている状態だ。セラフィーラさんは翼を広げ、手を繋いだ俺をエスコートしている。
セラフィーラさんに抱き抱えられるキメラアントスタイルではないので、絵面的には大丈夫そうだ。
「はやとさん」
「どうしました?」
「私に、下界を見せてくださり、本当にありがとうございます」
「はい。どういたしまして」
遠くに見えるのは、行きのバスの中で話題に上がった富士山。
「下界は美しく、素晴らしく、幸せで溢れています。やっぱり、私は下界が大好きです。もっともっと下界を知りたいです!」
190年間の間、天界に幽閉されていたセラフィーラさんの思いが滲み出ていた。
「はやとさん、これからも私にたくさんのことを教えてください! 経験させてください!」
「もちろんです!」
「約束ですよ!」
「はい、約束です!」
こうして俺たちは旅を終え、東京で6畳1Kのアパートを借りた。
新築、ではなかったが、これから俺たちの甘々同棲が幕を開けるのだ。
山田さんとエリスから引越し祝い(ホームレス卒業祝い?)をもらった。
「もう戻ってくるなよ。いつでも戻って来い」
と、山田さんから激励された。山田さんらしい、優しさを感じる言葉だった。
◇
今日はアパート同棲初日。
「ここが私たちの帰る場所、なのですね......」
「はい」
ようやくここまでこれた。
「これからの生活がとっても、楽しみです!」
正直に言って、これまでの同棲は、ただの同居と同義だった。
だから、俺はセラフィーラさんにきちんと告白して、想いを伝える。
そう言われて育ってきた。
一人っ子で、兄弟というものに憧れていた私は、半年に一度だけ届く、従兄弟の成長した姿を心待ちにしていた。
従兄弟に対する思いは、だんだんと大きくなっていった。
甘える存在がほしい。
会いたい。話したい。お兄ちゃんと呼びたい。
「まだかな……」
半年の節目に写真が送られてこなかった。
毎日ポストを確認したが、写真は入っていない。忙しくて遅れているのだろうか。
ほどなくして、テレビによく知る顔が映し出された。
隕石が民家に墜落したという大事件だった。
どうして……そう思った。信じられなかった。
皮肉なことにテレビで兄の名前を初めて知った。
一ヶ月以上、意気消沈した。
いい加減に、立ち直らなくてはいけない。
私は、母に頼み込み、兄の四十九日に花束を備えた。
兄は生きていた。
私は思わず「お兄ちゃん!?」と叫んでしまった。
しかし、兄、いや颯人さんは一人ではなかった。
ブロンドヘアの綺麗な女の人と一緒だった。
女神様って言葉がよく似合うと思う。
私の付け入る隙はなさそうだった。
それでも、颯人さんともっと話したい。もっと仲良くなりたい。
私は夕食の配膳を名乗り出た。
私のことを褒めてくれた。お礼を言ってくれた。
舞い上がった私は勇気を振り絞って、連絡先を聞いた。
「ごめん、俺、スマホもパソコンも持ってないんだよね……。家電とかもなくて」
嘘をつかれた。
颯人さんは、私のことなど眼中になかったのだ。
それでも、少しでも長く一緒にいたい。
そう考えた私は、戸籍の取得についていった。
「今度こそ行ってきます!」
「行ってらっしゃいませ!」
「行ってらっしゃい……」
祖父、母、颯人さんを役場に見送った私は、セラフィーラさんと二人きりになった。
気まずい時が流れる。
自販機のジュースを買ったり、役場の周りをふらふらと歩いて誤魔化した。
「何か言いたいことがあるのでしょうか?」
えっ、見透かされている。
「言いたいこと、というか聞きたいことが……」
「何でもお聞きください!」
「颯人さんの戸籍が戻ったら、お二人は結婚するんですか?」
「いえ、そうとはお聞きしていませんね」
釈然としない。
「セラフィーラさんは、颯人さんと結婚したいですか?」
「……申し訳ございません。私、勉強不足でして、まだ、よく分かっていないのです」
「あっ、すみません」
二人のペースで進めているのに、私なんかが口を出しするなんて、おこがましい。
そうだ、颯人さんはダメだったけど、せめて、セラフィーラさんと連絡先を。
「あ、あの、セラフィーラさん、SNSか何か交換しませんか?」
「SNSとは何でしょうか?」
「あっ、えっと、スマホの連絡が取れるアプリ? ソーシャル、ソーシャルなんだっけ」
「申し訳ございません。私、スマートフォンと呼ばれるものを触ったことがありません」
え!?!? 嘘にしては大袈裟すぎる。
「代わりに颯人さんのご連絡先を、と言いたいところですが、現在、颯人さんもお持ちではないのです……」
セラフィーラさんの顔は本当っぽい。
そっか、颯人さんは、ほんとにスマホ持ってなかったんだ。ホッとした。
「でも、スマホもなしにどうやって生活するんですか?」
「どう、と言われましても……。公園の段ボールテントで同棲しておりました」
「ホームレスじゃないですか!!! それ、同棲って言うんですか? 作品タイトル破綻してません!??」
「ホームレスとも、言うそうですね」
セラフィーラさんは、どうしてそんなに落ち着いていられるんだろう。
私は、セラフィーラさんにたくさん質問した。
薪割りをした話、二人で台風を凌いだ話、一緒に料理をした話、初めて缶ジュースを飲んだ話。
どう考えても、限界生活なのに、それらをとても楽しそうに語っていた。
セラフィーラさんは、私たちが見過ごす何気ないことにも、幸せを見出している。
きっと颯人さんは、セラフィーラさんのこういう面に惹かれたのだろう。
こうなった経緯はよくは分からないけど、二人を応援したいと思った。
幸せになってほしいと思った。
私は、自分の思いを明かした。
人に相談したのは、初めてだった。
「はやとさんなら、きっと許してくれます」
と、セラフィーラさんは背中を押してくれた。
◇
隕石に当たって死に、転生して女神、セラフィーラさんと同棲することになったはいいが、戸籍なしのホームレス生活。
一度死んで、戸籍がないから何もできない。
あげくの果てに、異世界から転移してきた女騎士に命を狙われる始末。
セラフィーラさんが発見した、戸籍を再取得できる認定死亡制度に縋って故郷の岐阜に戻り、楓さんたちと出会った。
ついに! この日が来た!!
セラフィーラさん、山田さん、柿本社長、橘先輩、エリス、佐曽利家のみんな、俺を支えてくれた全員に感謝だ!
「お待たせしました!」
セラフィーラさんは、手を握って固唾を飲んで見守る。
「はやとさん、結果はいかがでしたか?……」
「戸籍が……復活しました!!!」
「おめでとうございます!!」
セラフィーラさんと楓さんと飛び跳ねて喜び合った。
人目なんか気にならない。
ようやく自由だ!!
「いろんな手続きをしたけど、どの担当の人もびっくりしてたね」
月江さんは苦笑している。
祖父と月江さんは俺が水谷颯人 本人だという証人になってくれた上に引越しに必要な手続きを手伝ってくれた。
「みなさん、本当にありがとうございます!」
その後は、戸籍復活祝いとしてみんなで飯を食べた。
ひとしきり騒いで、このまま佐曽利家の一員になってしまいたいくらいだが、柿本さんたちにしっかり恩返しをするためには、東京に帰らなくてはいけない。
あっという間に帰りのバスの時間になってしまった。
「それじゃあ、みなさん。本当にお世話になりました」
セラフィーラさんと二人で頭を下げた。
「こっちこそ楽しかったよ。また来てね」
なんてあったけぇ家族なんだ。
「楓様」
セラフィーラさんが、声をかけると、楓さんはハッとした表情を浮かべる。
手続きで待ってもらっている間に親睦を深めてくれたらしい。
「あ、あの、颯人さん」
「どうしました?」
「颯人さんのこと、えっと、最初みたいに、お兄ちゃん、って呼んでもいい?」
お、お兄ちゃん!!!!?
でも、よくよく考えたら、俺って万年一人っ子で姉とか妹に憧れがあったんだよな……。
「え、えーと、俺なんかでよければ……。じゃあ、俺は楓ちゃん、って呼んでもいいかな?」
「うん!! お兄ちゃん!」
楓ちゃんの満面の笑みが可愛らしかった。
「勇気を出してよかったですね。楓様!」
え、俺じゃなくて、楓さんに? ちょっと妬けるな……。
◇
帰宅後の佐曽利家にて。
「おじいちゃん、お母さん」
「なになに、改まってどうしたの?」
「私……東京の高校に行きたい。東京の高校を受験する!」
「ええええぇぇ!!!?」
◇
佐曽利家のみんなに別れを告げた俺たちは、バスターミナルでお土産を買い漁った。お土産はセラフィーラさんのチョイスだ。
「大荷物になってしまいました」
「そうですね、ちょっと荷物だけでも先にバスに入れられないか、相談してきましょうか」
俺はバスのチケットを取り出して、バスの番号をかくに……。
あ。
浮かれてた。
「セラフィーラさん……」
「はぁい?」
「このチケットのバス......昨日のバスでした……」
「た、た、大変です!! どどどどうしましょう!!」
セラフィーラさんと慌てふためいた。
そうだ、そもそも日帰りでサクッと戸籍を取得して帰る予定だったことを忘れていた......。
「と、とりあえず、二人分の新しいバスの座席を、やばい。金が足りない」
「私を担保にしたらお金が借りれるのではないでしょうか?」
「そんな人質制度ありませんよぉ。あぁ、どうしよう」
感動的な別れをしたが、恥を忍んで佐曽利家のみんなに助けを求めてもう一泊するか……。でも柿本建設の仕事もあるし……。
「はやとさん、一つだけ手段がございます」
「え?」
「また、目立ってもよろしいでしょうか?」
「ま さ か !?」
◇
「スゲェ!! 本当に飛んでますよ!!」
「ふふふ、安心安全、空の旅です」
俺たちは今、上空を優雅に飛んでいる。
俺の体は、魔法によって浮いている状態だ。セラフィーラさんは翼を広げ、手を繋いだ俺をエスコートしている。
セラフィーラさんに抱き抱えられるキメラアントスタイルではないので、絵面的には大丈夫そうだ。
「はやとさん」
「どうしました?」
「私に、下界を見せてくださり、本当にありがとうございます」
「はい。どういたしまして」
遠くに見えるのは、行きのバスの中で話題に上がった富士山。
「下界は美しく、素晴らしく、幸せで溢れています。やっぱり、私は下界が大好きです。もっともっと下界を知りたいです!」
190年間の間、天界に幽閉されていたセラフィーラさんの思いが滲み出ていた。
「はやとさん、これからも私にたくさんのことを教えてください! 経験させてください!」
「もちろんです!」
「約束ですよ!」
「はい、約束です!」
こうして俺たちは旅を終え、東京で6畳1Kのアパートを借りた。
新築、ではなかったが、これから俺たちの甘々同棲が幕を開けるのだ。
山田さんとエリスから引越し祝い(ホームレス卒業祝い?)をもらった。
「もう戻ってくるなよ。いつでも戻って来い」
と、山田さんから激励された。山田さんらしい、優しさを感じる言葉だった。
◇
今日はアパート同棲初日。
「ここが私たちの帰る場所、なのですね......」
「はい」
ようやくここまでこれた。
「これからの生活がとっても、楽しみです!」
正直に言って、これまでの同棲は、ただの同居と同義だった。
だから、俺はセラフィーラさんにきちんと告白して、想いを伝える。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる