8 / 80
第1章「夢破れて、大根マスター」
閑話「イオスの憂鬱…仕事が無い」
しおりを挟む
/////////////////////////////////
※2020/05/27 書き直し
/////////////////////////////////
ギルドホールは冒険者で賑わっていた。
カイユテにはおよそ数万の住民が住んでおり、貴族の邸宅や商家も多い為に、この都市内だけでも多くの依頼が舞い込むが、全国からもたくさんの依頼が集まってくる。
ここ以外の都市にもギルドはあるが、この地こそが冒険者ギルド発祥の地であり、莫大な財宝が眠るマーテル地下墳墓へ夢と栄光を求めて腕利きの冒険者が集まる。
そういった理由で、カイユテの冒険者ギルドはいつも依頼で溢れている。
「ほんと、あいつどこいきやがった?」
「あんた…まだ探してんの?」
昼間から手持無沙汰で管をまくイオスを、揶揄うような目つきのリタがちょっかいを出している。
くそ…! 昨日からあのグズ野郎の姿が見えない…あいつが居なかったら誰が溜まった雑用を始末するんだよ!
いつもなら昼前には雑用に取り掛かっている。あいつは俺たちの召使い同然なんだ。パーティの予定が無いからって遊んでていいわけじゃない。
それなのに、どこほっつき歩いてやがる…?
カルロにあれだけやられて懲りてないのか?
「ったくよ…肝心なときに居ないのかよ…」
イオスは腹立ちまぎれに椅子を蹴飛ばした。
椅子は『ガタガタ』と大きな音を立てて倒れた。
その音にギルドホールに集まる冒険者たちの視線が一気に集まった。
「おい、イオスちゃん、おもちゃが無くなってご機嫌ななめですかあ?」
「うるせえよ!」
「うるせえのはてめえだろ…?」
「なんだと! やんのかコラ!」
畜生…どいつもこいつもクズばっかりで嫌気がさすぜ。
「やんのかコラってどこのチンピラだよ。ギャハハハハ」
「アデラールが居ないと、虐める相手が居ないんだろうけどな、ちっとは周りの迷惑も考えろ」
「お前らがどれだけ嫌われてるか、少しは考えてみたらどうなんだ? まあ、考える脳みそがあるならって話だけどな」
「あいつが役に立たないのはあいつの責任だけどな。だからって限度があるだろ? あんだけ好き勝手やってりゃ、あいつだって逃げるだろうが」
「はあ? お前らには関係ねえだろ。人のパーティの事情に口を出すなボケが!」
虫の居所が悪く醜態を晒すイオスを、冒険者たちが口々に罵る。言われている内容が当たっているだけに、そばで聞いていたリタは口をつぐんでいる。
うるさい奴らだ…
俺だって分かってるんだよ!
ついカルロの奴に乗せられてやりすぎただけだ…
アデラールが無抵抗だから加減を間違えただけだろ…?
俺たちが悪いわけじゃない…抵抗しないあいつが悪いんだ。
4年も一緒にやってきてんだ、そこまであいつを嫌いなわけじゃない。いいや、嫌ってはいないさ。利用してるだけだ。
だいたいよ…他のパーティのやつらだっていろいろやってんじゃねえのか?
それをウチだけが特別悪いみたいに言いやがって。
まったく今日は朝からツイてねえな。
いや、追い詰めたのはカルロだろ?
それでなんで俺がアデラールをさがしてんだ。
カルロを探してあいつにやらせよう。
それに3日もすれば金が尽きて、あいつのほうから頭を下げて詫びを入れてくるはずだ。
あいつに行くとこなんてありはしないんだ…あるわけがねえ。
初心者でもあるまいし、採集とか解体とかは一流の俺たちがやる仕事じゃねえ。
そういうのは”そういうやつ”がやるんだよ。
俺たちはあいつに居場所を提供して、ついでに金もやってたんだ。
普通は感謝するところだぜ? それを文句を言って勝手にパーティ抜けるとかあり得ねえ。
なんか、だんだんカルロの言い分が正しかったって気がしてきたぜ。
――それにしてもマジでどこ行きやがった…
あいつが居ないと護衛くらいしか受けれる依頼がないだろうが!
*****
2020/05/27 加筆修正
*****
※2020/05/27 書き直し
/////////////////////////////////
ギルドホールは冒険者で賑わっていた。
カイユテにはおよそ数万の住民が住んでおり、貴族の邸宅や商家も多い為に、この都市内だけでも多くの依頼が舞い込むが、全国からもたくさんの依頼が集まってくる。
ここ以外の都市にもギルドはあるが、この地こそが冒険者ギルド発祥の地であり、莫大な財宝が眠るマーテル地下墳墓へ夢と栄光を求めて腕利きの冒険者が集まる。
そういった理由で、カイユテの冒険者ギルドはいつも依頼で溢れている。
「ほんと、あいつどこいきやがった?」
「あんた…まだ探してんの?」
昼間から手持無沙汰で管をまくイオスを、揶揄うような目つきのリタがちょっかいを出している。
くそ…! 昨日からあのグズ野郎の姿が見えない…あいつが居なかったら誰が溜まった雑用を始末するんだよ!
いつもなら昼前には雑用に取り掛かっている。あいつは俺たちの召使い同然なんだ。パーティの予定が無いからって遊んでていいわけじゃない。
それなのに、どこほっつき歩いてやがる…?
カルロにあれだけやられて懲りてないのか?
「ったくよ…肝心なときに居ないのかよ…」
イオスは腹立ちまぎれに椅子を蹴飛ばした。
椅子は『ガタガタ』と大きな音を立てて倒れた。
その音にギルドホールに集まる冒険者たちの視線が一気に集まった。
「おい、イオスちゃん、おもちゃが無くなってご機嫌ななめですかあ?」
「うるせえよ!」
「うるせえのはてめえだろ…?」
「なんだと! やんのかコラ!」
畜生…どいつもこいつもクズばっかりで嫌気がさすぜ。
「やんのかコラってどこのチンピラだよ。ギャハハハハ」
「アデラールが居ないと、虐める相手が居ないんだろうけどな、ちっとは周りの迷惑も考えろ」
「お前らがどれだけ嫌われてるか、少しは考えてみたらどうなんだ? まあ、考える脳みそがあるならって話だけどな」
「あいつが役に立たないのはあいつの責任だけどな。だからって限度があるだろ? あんだけ好き勝手やってりゃ、あいつだって逃げるだろうが」
「はあ? お前らには関係ねえだろ。人のパーティの事情に口を出すなボケが!」
虫の居所が悪く醜態を晒すイオスを、冒険者たちが口々に罵る。言われている内容が当たっているだけに、そばで聞いていたリタは口をつぐんでいる。
うるさい奴らだ…
俺だって分かってるんだよ!
ついカルロの奴に乗せられてやりすぎただけだ…
アデラールが無抵抗だから加減を間違えただけだろ…?
俺たちが悪いわけじゃない…抵抗しないあいつが悪いんだ。
4年も一緒にやってきてんだ、そこまであいつを嫌いなわけじゃない。いいや、嫌ってはいないさ。利用してるだけだ。
だいたいよ…他のパーティのやつらだっていろいろやってんじゃねえのか?
それをウチだけが特別悪いみたいに言いやがって。
まったく今日は朝からツイてねえな。
いや、追い詰めたのはカルロだろ?
それでなんで俺がアデラールをさがしてんだ。
カルロを探してあいつにやらせよう。
それに3日もすれば金が尽きて、あいつのほうから頭を下げて詫びを入れてくるはずだ。
あいつに行くとこなんてありはしないんだ…あるわけがねえ。
初心者でもあるまいし、採集とか解体とかは一流の俺たちがやる仕事じゃねえ。
そういうのは”そういうやつ”がやるんだよ。
俺たちはあいつに居場所を提供して、ついでに金もやってたんだ。
普通は感謝するところだぜ? それを文句を言って勝手にパーティ抜けるとかあり得ねえ。
なんか、だんだんカルロの言い分が正しかったって気がしてきたぜ。
――それにしてもマジでどこ行きやがった…
あいつが居ないと護衛くらいしか受けれる依頼がないだろうが!
*****
2020/05/27 加筆修正
*****
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,305
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる