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第1章「夢破れて、大根マスター」

閑話「イオスの憂鬱…仕事が無い」

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 ※2020/05/27 書き直し

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 ギルドホールは冒険者で賑わっていた。
 カイユテにはおよそ数万の住民が住んでおり、貴族の邸宅や商家も多い為に、この都市内だけでも多くの依頼が舞い込むが、全国からもたくさんの依頼が集まってくる。
 ここ以外の都市にもギルドはあるが、この地こそが冒険者ギルド発祥の地であり、莫大な財宝が眠るマーテル地下墳墓へ夢と栄光を求めて腕利きの冒険者が集まる。
 そういった理由で、カイユテの冒険者ギルドはいつも依頼で溢れている。

「ほんと、あいつアデラールどこいきやがった?」
「あんた…まだ探してんの?」

 昼間から手持無沙汰で管をまくイオスを、揶揄うような目つきのリタがちょっかいを出している。

 くそ…! 昨日からあのグズ野郎アデラールの姿が見えない…あいつが居なかったら誰が溜まった雑用を始末するんだよ!
 いつもなら昼前には雑用に取り掛かっている。あいつは俺たちの召使い同然なんだ。パーティの予定が無いからって遊んでていいわけじゃない。
 それなのに、どこほっつき歩いてやがる…?

 カルロにあれだけやられて懲りてないのか?

「ったくよ…肝心なときに居ないのかよ…」

 イオスは腹立ちまぎれに椅子を蹴飛ばした。
 椅子は『ガタガタ』と大きな音を立てて倒れた。
 その音にギルドホールに集まる冒険者たちの視線が一気に集まった。

「おい、イオスちゃん、おもちゃが無くなってご機嫌ななめですかあ?」
「うるせえよ!」
「うるせえのはてめえだろ…?」
「なんだと! やんのかコラ!」

 畜生…どいつもこいつもクズばっかりで嫌気がさすぜ。

「やんのかコラってどこのチンピラだよ。ギャハハハハ」
「アデラールが居ないと、虐める相手が居ないんだろうけどな、ちっとは周りの迷惑も考えろ」
「お前らがどれだけ嫌われてるか、少しは考えてみたらどうなんだ? まあ、考える脳みそがあるならって話だけどな」
「あいつが役に立たないのはあいつの責任だけどな。だからって限度があるだろ? あんだけ好き勝手やってりゃ、あいつだって逃げるだろうが」
「はあ? お前らには関係ねえだろ。人のパーティの事情に口を出すなボケが!」

 虫の居所が悪く醜態を晒すイオスを、冒険者たちが口々に罵る。言われている内容が当たっているだけに、そばで聞いていたリタは口をつぐんでいる。 

 うるさい奴らだ…
 俺だって分かってるんだよ!
 ついカルロの奴に乗せられてやりすぎただけだ…
 アデラールが無抵抗だから加減を間違えただけだろ…?
 俺たちが悪いわけじゃない…抵抗しないあいつが悪いんだ。

 4年も一緒にやってきてんだ、そこまであいつを嫌いなわけじゃない。いいや、嫌ってはいないさ。利用してるだけだ。
 だいたいよ…他のパーティのやつらだっていろいろやってんじゃねえのか?
 それをウチだけが特別悪いみたいに言いやがって。
 まったく今日は朝からツイてねえな。

 いや、追い詰めたのはカルロだろ?
 それでなんで俺がアデラールをさがしてんだ。
 カルロを探してあいつにやらせよう。

 それに3日もすれば金が尽きて、あいつのほうから頭を下げて詫びを入れてくるはずだ。
 あいつに行くとこなんてありはしないんだ…あるわけがねえ。

 初心者でもあるまいし、採集とか解体とかは一流の俺たちがやる仕事じゃねえ。
 そういうのは”そういうやつアデラール”がやるんだよ。

 俺たちはあいつに居場所を提供して、ついでに金もやってたんだ。
 普通は感謝するところだぜ? それを文句を言って勝手にパーティ抜けるとかあり得ねえ。
 なんか、だんだんカルロの言い分が正しかったって気がしてきたぜ。

  ――それにしてもマジでどこ行きやがった…

 あいつが居ないと護衛くらいしか受けれる依頼がないだろうが!





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2020/05/27 加筆修正

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