雨

最終章 忘れゆく温もり

忘れゆく温もり

雨

最終章　忘れゆく温もり

雨はやむことなく、静かに降り続けていた。
陽大は広い部屋の窓際に立ち、外の景色を見つめている。
手には、もう使われることのないあの指輪があった。

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過ぎ去った日々の断片が頭をよぎる。
笑い合った朝、寄り添った夜、争いも涙もすべて。
そのすべてが愛だった。

だが、もう二人の間には戻れない時間が流れている。

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一人になった部屋は、寂しくて冷たい。
彼女の香りは風と共に消え、
暖かかったはずの温もりも今はもう遠い記憶。

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葵もまた、新しい部屋の片隅で雨音を聞いていた。
陽大が好きだった映画を一人で観ながら、
「さよなら」と言ったあの言葉の重みをかみしめている。

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心の奥底にまだ残る、繋がっていたはずの糸。
結び直せると思っていた希望も、
静かにほどけて消えていった。

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「きみは忘れて幸せになってね」
そう願うことしかできなかった。

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ふたりはもう、同じ空の下にいても、
交わることはない。

それでも、
いつか愛した記憶が癒しとなって、
別々の未来を歩んでいく。

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窓の外、雨がやみ、夕焼けが空を染める。
新しい日が来る。
でも、あの頃のぬくもりはもう戻らない。

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「さよなら」
その言葉が、永遠の別れとなった。

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— 終 —