雨

第三章 愛していたのに

愛していたのに

第三章　愛していたのに

「もう一度、話せるなら…」
陽大はそう呟いた。

リビングの窓の外では、小雨が降り続いている。
濡れた木の葉が静かに揺れ、彼の胸の中も同じように揺れていた。

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あの夜、二人は言葉を交わさずにすれ違った。
口に出せなかった「ごめんね」と「ありがとう」が、
胸の奥で絡み合い、結ばれないままほどけていった。

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「君の好きな映画、もう一度観ようと思ったんだ」
陽大は一人呟き、リモコンを手に取った。
だけど、画面の中の物語は遠く感じてしまった。

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葵もまた、あの日の夜を思い出す。
彼の瞳に映った冷たさに、背を向けた自分。
優しさを求めることが、重荷になってしまったこと。

「愛していたのに」
言葉にできなかった、あの痛みが胸を締めつける。

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過ぎ去った時間は戻らない。
だけど、まだどこかで愛が溢れていることを、二人は知っている。

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「溢れた愛をまた掬いあげて、
解けた糸を結び直せたら」

願いは叶わないけれど、せめて、
過去の愛を抱きしめて前に進もうとする。

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雨の夜、静かに涙が頬を伝う。
「きみも忘れて幸せになってね」

別れの言葉は優しく、でもとても悲しい。