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比志城
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通信たちが比志城に入ってから、五日が過ぎた。
比志城は見晴らしの良い場所にある。城の裏手には肱川が流れ、海から舟を使い兵糧や武器を運び入れることが容易だ。高縄城のような山城ではないため、館の周囲は板塀でかこまれており、さらにその向こう側には堀が巡らされていた。城のある一帯は拓けており田畑が広がっているが、四方は山に閉ざされている。いわゆる盆地であった。
水軍をもつ田口勢は山を越えての行軍はせず、舟を用い海側から川を伝ってやってくるだろうと通信は考えていた。忠員に命じ籠城に備え堀の幅を広くし、垣根を高くし、逆茂木などを設置した。また、見張り櫓も造らせた。木材はすべて肱川を使って運び入れた。
城を無傷で手に入れられた一番の収穫は、城にいた雑人らも手にいれられたことである。飯炊きの女や荷運びの男手などは役にたつ。
信家は兵を四隊にわけ、訓練と雑事を交互に行わせていた。景高や景平とは和解をしたらしく、騎馬を主力とする用兵について色々と聞いていたようだ。はじめは坂東の馬や弓の扱いかたに音をあげていた伊予の兵らも次第に馴れてきている。
港にいる七郎の伝令兵が慌てた様子であらわれたのは、そんなときだった。伝令兵曰く、沖に赤の旗を掲げた大舟団が、こちらに向かって迫っているのだという。通信はすぐに主だったものを招集した。
「早すぎませんか。高市らが夜通し駆けて逃げたとしても、阿波に着くには四日程かかります。田口勢がこちらにあらわれるまで、最短でもあと三日はかかるはずです」
「身内に裏切ったものがいるのか」
「おれの帰還を田口は知っていたはずだ。高縄城を攻めるために、あらかじめ準備を整えていたのかもしれない」
ざわつく信家ら郎等をなだめて座に着かせる。通信は一度、深呼吸をした。想定していたよりも早いとはいえ、田口勢が伊予にあらわれたのである。つまり全体を俯瞰して見れば、策は上手く運んでいるといって良いだろう。
「土佐からの援軍はまだか」
「いや、おれも詳しくは……」
「肱川が抑えられてしまうと、土佐勢がこちらに来ることが難しくなります」
言い淀む景高を信家が睨みつけた。景高は、ばつが悪そうに顔をそむける。
「とはいえ聞く限りでは規模が違いすぎる。水軍を出しても肱川を守れるとは思えないな。浅瀬のある川で無理に戦をして舟を消耗するくらいならば、七郎たちは海で待たせておいたほうが賢明だ」
忠員が落ち着いた様子で言う。通信は待たせておいた七郎の伝令兵に、舟を隠して待機するように伝えた。同時に、景時宛に田口勢の出現を知らせるための伝令も走らせた。
「まあ、言ってもしかたがないだろ。籠城して持ちこたえるしかない。ようは半月ばかり引きとめれば良いだけさ」
通信は可能な限り鷹揚に構えた。いま自分がするべきことは、兵たちを不安にさせないことである。
「信家、忠員。堀に渡してある橋は、正面以外のすべてを落とせ。速やかに門を閉ざし、籠城にそなえよ」
忠員と信家が一礼し、慌ただしく去る。
「どうするの」
河野勢がそれぞれの持ち場に戻ったのを確認して、景平が言った。
「どうしようね」
通信は頭をかく。
「すまん。土佐の叔父には、こっちが比志城にいるってのは伝わってると思うんだが、おれが伝令に使ったやつ郎等も戻ってきてねぇ」
「まあ、土佐だしね。しかたがないと思う。あそこ、同じ四国とは思えないもん」
土佐国は三方が山にかこまれており一方は海という天然の山城のような国である。そのために他国との往来が困難であった。海路での交流はあるが陸路を行くのはそれこそ修験者くらいだろう。実のところ通信は土佐国に足を踏み入れたことがない。
「おれらはどうすれば良い」
めずらしく景高が指示を仰ぐ。この男はこの男なりに、責任を感じているのかもしれないと通信は感じた。
「田口勢の攻城包囲がどういうものかによるけど、いきなり城から討って出て、騎馬でかき乱したりとか」
通信の申し出を聞いた景高が、いびつに笑った。
「まあ、こんな所で死にたかねぇけど暴れるのは悪くねぇ。つきあいますよ、お殿様」
いつものように軽薄に言うと、景高は立ち去っていった。
夜が明けると肱川の水面を赤い旗を掲げた舟が覆っていた。
「田口の本陣は」
「肘川の対岸に山を背にして張ったようです」
「ふむ」
「兵は舟を使って、こちら側に寄せてきます。城を包囲するでしょう」
信家が淡々と言った。
「下手に動かずに、包囲させてしまいましょう。どのみち相手は兵の数で押してきます」
消極的な忠員の主張に、信家が口元を歪ませる。通信は、そばに控えていた郎等に言って景高を呼びだした。
「田口の兵が城を包囲したら、行ける?」
景高は一瞬、なんのことやらという表情を浮かべたが、すぐに察しがついたのだろう。両手を胸の前で重ねると、にぎにぎと揉んだ。
「ん、ああ。悪くない。大内殿、兵を見繕っておれにつけてもらえるか」
「なにをする気ですか、梶原殿」
「いやぁ、なに。舐められる前に、ちったぁ殺しとかないと」
景高が顎をしゃくった。
「いかほど」
「そうさね。おれの郎等もいるから、十ちょっと。馬の扱いの上手いの、寄こしてくれ」
「承知いたしました」
小さく頭をさげた信家の口角が、三日月のようにつりあがっている。おそらく自らが鍛えあげた兵を試してみたいという気持ちがあるのだろう。信家は通信とは違って、ずっと伊予にいたのだ。そのぶん燻っているものが大きい。
「正気じゃない」
「もとから正気じゃないだろ、おれたち」
忠員のつぶやきを通信は軽くいなした。
昼過ぎには赤旗を掲げた田口の軍勢が城をとりかこんだ。整然とした隊列は引き締まっており見事である。凡下たちに掻盾を背負わせて、みっちりと隙間なく構える様子は、陣そのものが一個の城であるような雰囲気さえあった。大将は田口成良の嫡子、田口教能だという。
比志城内は緊張に満ちていた。空気がぴりぴりとして重い。そのなかで景高が河原毛の馬に跨がり一人悠々としていた。大鎧は白糸の威である。郎等から兜を受けとると、目深にかぶった。
景高の背後には彼の従える郎等たちと、河野勢から選ばれた、特に馬の扱いが上手なもの十騎ばかりが控えていた。
通信は兜のみを着けて、景平とともに物見櫓の上へと登った。弓を持ち、雑人に矢を運ばせる。
景高が兵たちに、なにか指示をしたようだ。彼らは小さく固まって、城門のすぐ内側へと並んだ。
信家が手を振り兵らが門扉を開ける。次の瞬間――景高が馬の腹を蹴っていた。
土煙をまといながら、小さくまとまった二十騎が一斉に駆ける。田口勢はそこに矢を射かけるが、景高たちのほうが早かった。景高は馳射で敵兵らを威嚇すると、並べられた掻盾ごと馬の蹄で蹴散らした。
「伊予の兵だと思った? 残念でしたぁ。坂東式でまいりまぁす」
そのまま軍勢を縦に切り裂く。閉じこめようとする敵騎兵を、景平がすかさず櫓から狙い撃った。通信も矢をつがえる。
景高は矢を握り、ぶつかってきた敵兵をそのまま刺し貫いていた。なんとも荒っぽい戦いかただ。狙いは敵陣の中央後方にいる大鎧を着けた騎馬武者だろう。
横から景高を狙っていた弓兵を、通信は射貫いた。一矢で二人が地面に縫いつけられる。
景高が太刀を抜く。狙いをさだめ騎馬武者に迫ると、迷いなく首を突いた。千切れかかった武者の首を、景高の背後についていた郎等が、ねじりきる。そのままそれを太刀の切っ先に突き刺し敵陣中で掲げた。
ざわり、と田口勢が気圧される。
景高が馬首を返した。櫓の上からそれを眺めていた景平が、信家に合図する。手を振ってこたえた信家は、兵たちに門扉を細く開かせた。郎等ともども馳射を繰り返しながら、景高たちは、どっと城門のうちに駆けこんだ。
場内に、どっと歓声があがる。
「悪ぃ。二騎やられちまった」
荒い息をはく馬を宥めたのちに、景高が通信と信家のもとに歩みきて言った。
「あの働きで二騎の損失であれば上出来でしょう」
信家が目を輝かせている。通信は、景高のとった武将の首を城門の横に晒した。見せしめであると同時に、田口の兵を躍起にさせる罠でもある。こちらの精強さと残忍さを見せつけて、田口勢を引き留めておく意図もあった。
深夜、この首を取り返そうと、城壁に縋りついたものどもがいたが、すべて捕らえて首を刎ねた。主人を思う気持ちゆえの行動なのだろうという心意気は買って、そのものたちの首も横に並べて晒してやった。
比志城は見晴らしの良い場所にある。城の裏手には肱川が流れ、海から舟を使い兵糧や武器を運び入れることが容易だ。高縄城のような山城ではないため、館の周囲は板塀でかこまれており、さらにその向こう側には堀が巡らされていた。城のある一帯は拓けており田畑が広がっているが、四方は山に閉ざされている。いわゆる盆地であった。
水軍をもつ田口勢は山を越えての行軍はせず、舟を用い海側から川を伝ってやってくるだろうと通信は考えていた。忠員に命じ籠城に備え堀の幅を広くし、垣根を高くし、逆茂木などを設置した。また、見張り櫓も造らせた。木材はすべて肱川を使って運び入れた。
城を無傷で手に入れられた一番の収穫は、城にいた雑人らも手にいれられたことである。飯炊きの女や荷運びの男手などは役にたつ。
信家は兵を四隊にわけ、訓練と雑事を交互に行わせていた。景高や景平とは和解をしたらしく、騎馬を主力とする用兵について色々と聞いていたようだ。はじめは坂東の馬や弓の扱いかたに音をあげていた伊予の兵らも次第に馴れてきている。
港にいる七郎の伝令兵が慌てた様子であらわれたのは、そんなときだった。伝令兵曰く、沖に赤の旗を掲げた大舟団が、こちらに向かって迫っているのだという。通信はすぐに主だったものを招集した。
「早すぎませんか。高市らが夜通し駆けて逃げたとしても、阿波に着くには四日程かかります。田口勢がこちらにあらわれるまで、最短でもあと三日はかかるはずです」
「身内に裏切ったものがいるのか」
「おれの帰還を田口は知っていたはずだ。高縄城を攻めるために、あらかじめ準備を整えていたのかもしれない」
ざわつく信家ら郎等をなだめて座に着かせる。通信は一度、深呼吸をした。想定していたよりも早いとはいえ、田口勢が伊予にあらわれたのである。つまり全体を俯瞰して見れば、策は上手く運んでいるといって良いだろう。
「土佐からの援軍はまだか」
「いや、おれも詳しくは……」
「肱川が抑えられてしまうと、土佐勢がこちらに来ることが難しくなります」
言い淀む景高を信家が睨みつけた。景高は、ばつが悪そうに顔をそむける。
「とはいえ聞く限りでは規模が違いすぎる。水軍を出しても肱川を守れるとは思えないな。浅瀬のある川で無理に戦をして舟を消耗するくらいならば、七郎たちは海で待たせておいたほうが賢明だ」
忠員が落ち着いた様子で言う。通信は待たせておいた七郎の伝令兵に、舟を隠して待機するように伝えた。同時に、景時宛に田口勢の出現を知らせるための伝令も走らせた。
「まあ、言ってもしかたがないだろ。籠城して持ちこたえるしかない。ようは半月ばかり引きとめれば良いだけさ」
通信は可能な限り鷹揚に構えた。いま自分がするべきことは、兵たちを不安にさせないことである。
「信家、忠員。堀に渡してある橋は、正面以外のすべてを落とせ。速やかに門を閉ざし、籠城にそなえよ」
忠員と信家が一礼し、慌ただしく去る。
「どうするの」
河野勢がそれぞれの持ち場に戻ったのを確認して、景平が言った。
「どうしようね」
通信は頭をかく。
「すまん。土佐の叔父には、こっちが比志城にいるってのは伝わってると思うんだが、おれが伝令に使ったやつ郎等も戻ってきてねぇ」
「まあ、土佐だしね。しかたがないと思う。あそこ、同じ四国とは思えないもん」
土佐国は三方が山にかこまれており一方は海という天然の山城のような国である。そのために他国との往来が困難であった。海路での交流はあるが陸路を行くのはそれこそ修験者くらいだろう。実のところ通信は土佐国に足を踏み入れたことがない。
「おれらはどうすれば良い」
めずらしく景高が指示を仰ぐ。この男はこの男なりに、責任を感じているのかもしれないと通信は感じた。
「田口勢の攻城包囲がどういうものかによるけど、いきなり城から討って出て、騎馬でかき乱したりとか」
通信の申し出を聞いた景高が、いびつに笑った。
「まあ、こんな所で死にたかねぇけど暴れるのは悪くねぇ。つきあいますよ、お殿様」
いつものように軽薄に言うと、景高は立ち去っていった。
夜が明けると肱川の水面を赤い旗を掲げた舟が覆っていた。
「田口の本陣は」
「肘川の対岸に山を背にして張ったようです」
「ふむ」
「兵は舟を使って、こちら側に寄せてきます。城を包囲するでしょう」
信家が淡々と言った。
「下手に動かずに、包囲させてしまいましょう。どのみち相手は兵の数で押してきます」
消極的な忠員の主張に、信家が口元を歪ませる。通信は、そばに控えていた郎等に言って景高を呼びだした。
「田口の兵が城を包囲したら、行ける?」
景高は一瞬、なんのことやらという表情を浮かべたが、すぐに察しがついたのだろう。両手を胸の前で重ねると、にぎにぎと揉んだ。
「ん、ああ。悪くない。大内殿、兵を見繕っておれにつけてもらえるか」
「なにをする気ですか、梶原殿」
「いやぁ、なに。舐められる前に、ちったぁ殺しとかないと」
景高が顎をしゃくった。
「いかほど」
「そうさね。おれの郎等もいるから、十ちょっと。馬の扱いの上手いの、寄こしてくれ」
「承知いたしました」
小さく頭をさげた信家の口角が、三日月のようにつりあがっている。おそらく自らが鍛えあげた兵を試してみたいという気持ちがあるのだろう。信家は通信とは違って、ずっと伊予にいたのだ。そのぶん燻っているものが大きい。
「正気じゃない」
「もとから正気じゃないだろ、おれたち」
忠員のつぶやきを通信は軽くいなした。
昼過ぎには赤旗を掲げた田口の軍勢が城をとりかこんだ。整然とした隊列は引き締まっており見事である。凡下たちに掻盾を背負わせて、みっちりと隙間なく構える様子は、陣そのものが一個の城であるような雰囲気さえあった。大将は田口成良の嫡子、田口教能だという。
比志城内は緊張に満ちていた。空気がぴりぴりとして重い。そのなかで景高が河原毛の馬に跨がり一人悠々としていた。大鎧は白糸の威である。郎等から兜を受けとると、目深にかぶった。
景高の背後には彼の従える郎等たちと、河野勢から選ばれた、特に馬の扱いが上手なもの十騎ばかりが控えていた。
通信は兜のみを着けて、景平とともに物見櫓の上へと登った。弓を持ち、雑人に矢を運ばせる。
景高が兵たちに、なにか指示をしたようだ。彼らは小さく固まって、城門のすぐ内側へと並んだ。
信家が手を振り兵らが門扉を開ける。次の瞬間――景高が馬の腹を蹴っていた。
土煙をまといながら、小さくまとまった二十騎が一斉に駆ける。田口勢はそこに矢を射かけるが、景高たちのほうが早かった。景高は馳射で敵兵らを威嚇すると、並べられた掻盾ごと馬の蹄で蹴散らした。
「伊予の兵だと思った? 残念でしたぁ。坂東式でまいりまぁす」
そのまま軍勢を縦に切り裂く。閉じこめようとする敵騎兵を、景平がすかさず櫓から狙い撃った。通信も矢をつがえる。
景高は矢を握り、ぶつかってきた敵兵をそのまま刺し貫いていた。なんとも荒っぽい戦いかただ。狙いは敵陣の中央後方にいる大鎧を着けた騎馬武者だろう。
横から景高を狙っていた弓兵を、通信は射貫いた。一矢で二人が地面に縫いつけられる。
景高が太刀を抜く。狙いをさだめ騎馬武者に迫ると、迷いなく首を突いた。千切れかかった武者の首を、景高の背後についていた郎等が、ねじりきる。そのままそれを太刀の切っ先に突き刺し敵陣中で掲げた。
ざわり、と田口勢が気圧される。
景高が馬首を返した。櫓の上からそれを眺めていた景平が、信家に合図する。手を振ってこたえた信家は、兵たちに門扉を細く開かせた。郎等ともども馳射を繰り返しながら、景高たちは、どっと城門のうちに駆けこんだ。
場内に、どっと歓声があがる。
「悪ぃ。二騎やられちまった」
荒い息をはく馬を宥めたのちに、景高が通信と信家のもとに歩みきて言った。
「あの働きで二騎の損失であれば上出来でしょう」
信家が目を輝かせている。通信は、景高のとった武将の首を城門の横に晒した。見せしめであると同時に、田口の兵を躍起にさせる罠でもある。こちらの精強さと残忍さを見せつけて、田口勢を引き留めておく意図もあった。
深夜、この首を取り返そうと、城壁に縋りついたものどもがいたが、すべて捕らえて首を刎ねた。主人を思う気持ちゆえの行動なのだろうという心意気は買って、そのものたちの首も横に並べて晒してやった。
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