沈黙のメダリスト

友清 井吹

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Ⅰ 未完のアスリート

6 駅伝メンバー

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11月から駅伝の練習が始まった。
顔合わせの日、グラウンドに12人のメンバー全員が集められ、陸上部の顧問が説明をした。

「さて選ばれしアスリートの諸君。この駅伝大会は神戸市と阪神地域から23チームが参加する。ちなみに去年本校は18位だ。何も入賞しろとは言わん。無理に決まっている。隣の西高にさえ勝てばいい。ここ三年続けて負けているからな。合同練習は毎週金曜日の一回だけだ。今日は3キロのタイムを測る。それで10人選んで、2人の補欠を決める。以上だ」

そうか、補欠になればいいんだな。そう考えていると声をかけられた。
「倉本、やっぱり出るんか。お前、中学の時、千五百ですごかったもんな」
中3の体育で一緒に走った荻田だ。高校でも陸上部に入っていると言う。
「水泳部の先輩がみんな逃げて押しつけられた。今日はお前を追いかけるよ」

ホイッスルで12人が走り出した。
淳一は小柄な萩田の後ろに付き、彼の背中だけを見て走った。前から6番目だ。
このままいくとメンバーに入ってしまう。でも駅伝ならいいか。

半分も来ないのに、萩田は初めの軽快な足取りが見られなくなり、肩も上下に揺れるようになってきた。彼を抜くというより仕方なくという感じで順位を上げる。さらに二人抜くと、トップまで10mの3位になった。息は苦しいがついていけないこともない。

ラスト1周。前の2人に追いついたが、抜かすことなくそのまま3人が固まってフィニッシュ。1位の陸上部の先輩が10分を切れなかったと悔しがっていた。
なんだ、これで終わりかと思った。
1年の選手は後1人、同じクラスでサッカー部の野路だ。萩田は失速して補欠になった。

雨がぽつぽつ降ってきた。
駅伝のメンバーになったことを確認し、すぐに家に走って帰る。洗濯物を取り入れないと。

その日から登下校の往復とも走るようにした。こんなふうに走るのは母が入院していた時以来だ。
走っていると頭の中が透明になっていき、学校で嫌な思いをしたことが消えていくような気がする。
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