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Ⅰ 未完のアスリート
22 トゥモロー イズ アナザーデイ
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昼休み、久しぶりに図書室へ行った。誰もいない所でぼんやり体を休めたい。
弁当は持って来ていない。最近は、少しの朝食とバイト先の夕食だけ。一日1.5食だ。
司書の浅岡先生がいた。
「倉本君、ずい分ご無沙汰していたね。本が読んでくれるのを待ってるよ。お茶飲んでいってね」
浅岡先生は、高校の先生の中で吉見先生の次に話ができる。
本を借りる時、よく話しかけられ親しくなった。
人がいない時はお茶やお菓子をよばれたこともある。
昨年、浅岡先生に図書室の蔵書を全部読むと宣言したことがある。
もちろん冗談だが、全ページ読むのは無理でも一部に目を通すくらいならできると思っていた。
図書館には、すっかり足が遠のいている。毎日来ては眺めていた本の背表紙をぼんやり眺めた。
「あなたにうちの娘、ここの高校で水泳部にいるって話したかしら。あの子、最近倉本先輩が来てくれないってとても心配していたわよ」
水泳部で浅岡さんという子はいたかな?首をかしげていると先生は笑みを浮かべた。
「あの子が中学の時、私は離婚して旧姓に戻ったの。でもあの子ね、名前を変えるのは嫌だって前のままなのよ。体の割に気が小さくてね」
「じゃあ、今、何ていう名前なんですか?」
「そんなこと君に教えたら、あの子にぶっ飛ばされてしまうわ。それでね、悪いけど吉見先生に君のこと聞いたのよ。最近どうしたんだろうって」
図書室に来ない方がよかったな。目をそらして唇をかんだ。
「おうちの事情で働きながら高校に来ているそうね。私ね、倉本君に何ができるか考えたの。それで君の貸し出し記録を見ていたら、私の好きな本をまだ読んでいないことが分かった。世界文学のコーナーにある本で『風と共に去りぬ』を知ってる?」
「昔、映画になった小説ですか?作者は女性だったかな」
「そう。その映画の一番最後にね、主人公が『トゥモロー イズ アナザデイ』と言うの。あなたなら意味がわかるでしょ?」
「明日は別の日。明日には新しい日が始まるということですか?」
「私、今まで何度もこの言葉で救われたの。おせっかいだと思うけど、君には覚えておいてほしいと思って」
お茶とクッキーをよばれてから図書室を出た。
俺にどう言えばいいか、ずっと本気で考えてくれていたんだろう。
この言葉で今の窮状が解決するとは思えない。
ともかくあきらめず希望を持って生きていけってことか。
そう言えば似たような言葉があったな。確か『開けない夜はない』だったか。
そうか、小6の担任がよく言っていた。
弁当は持って来ていない。最近は、少しの朝食とバイト先の夕食だけ。一日1.5食だ。
司書の浅岡先生がいた。
「倉本君、ずい分ご無沙汰していたね。本が読んでくれるのを待ってるよ。お茶飲んでいってね」
浅岡先生は、高校の先生の中で吉見先生の次に話ができる。
本を借りる時、よく話しかけられ親しくなった。
人がいない時はお茶やお菓子をよばれたこともある。
昨年、浅岡先生に図書室の蔵書を全部読むと宣言したことがある。
もちろん冗談だが、全ページ読むのは無理でも一部に目を通すくらいならできると思っていた。
図書館には、すっかり足が遠のいている。毎日来ては眺めていた本の背表紙をぼんやり眺めた。
「あなたにうちの娘、ここの高校で水泳部にいるって話したかしら。あの子、最近倉本先輩が来てくれないってとても心配していたわよ」
水泳部で浅岡さんという子はいたかな?首をかしげていると先生は笑みを浮かべた。
「あの子が中学の時、私は離婚して旧姓に戻ったの。でもあの子ね、名前を変えるのは嫌だって前のままなのよ。体の割に気が小さくてね」
「じゃあ、今、何ていう名前なんですか?」
「そんなこと君に教えたら、あの子にぶっ飛ばされてしまうわ。それでね、悪いけど吉見先生に君のこと聞いたのよ。最近どうしたんだろうって」
図書室に来ない方がよかったな。目をそらして唇をかんだ。
「おうちの事情で働きながら高校に来ているそうね。私ね、倉本君に何ができるか考えたの。それで君の貸し出し記録を見ていたら、私の好きな本をまだ読んでいないことが分かった。世界文学のコーナーにある本で『風と共に去りぬ』を知ってる?」
「昔、映画になった小説ですか?作者は女性だったかな」
「そう。その映画の一番最後にね、主人公が『トゥモロー イズ アナザデイ』と言うの。あなたなら意味がわかるでしょ?」
「明日は別の日。明日には新しい日が始まるということですか?」
「私、今まで何度もこの言葉で救われたの。おせっかいだと思うけど、君には覚えておいてほしいと思って」
お茶とクッキーをよばれてから図書室を出た。
俺にどう言えばいいか、ずっと本気で考えてくれていたんだろう。
この言葉で今の窮状が解決するとは思えない。
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そう言えば似たような言葉があったな。確か『開けない夜はない』だったか。
そうか、小6の担任がよく言っていた。
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