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Ⅰ 未完のアスリート
29 それぞれの進路
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センター試験は1月16日。これで失敗はできない。
一日のほとんどの時間、起きている間は勉強をした。
直前一週間は、疲れたら机にうつぶせて寝た。
さすがに前日は布団で寝て、久しぶりに枕の感触を思い出した。
これだけやって落ちたら仕方がないか。そんな気にもなった。
そういえば福沢諭吉の自伝に、適塾でオランダ語の猛勉強をした時病気になり、初めて自分の枕がない事に気付いたという話があった。俺なんかまだまだ及びもつかない。
本番では基本的な設問が多く、大失敗は無かった。前期試験に向けてもう一頑張りだ。
野路は関東にある国立鹿島大学にスポーツ推薦で早々と進学を決めていた。
「俺、もちろんサッカーをやるよ、あそこはレベル高いから、多分Bチームからスタートだけどな。お前みたいにあきらめず、やれるだけやるよ」
香奈さんは、女子大の栄養学部に行く。料理を作るのが趣味だったそうだ。
「倉本君には私の作ったもの、一度も食べてもらえなかったね。私、陸上はまだ続けたいと思っているの。また応援に来てほしいけど・・・」
角谷麗奈はネイルアートの専門学校に行くと知らせに来た。
思い付きではなく、前々からの夢を叶えるらしい。店に行けばサービスしてくれるそうだ。
別れ際に耳打ちしてきた。
「約束したこと忘れんといてね」
約束?以前うちに来た時、結婚しようと言われたことか。あれって約束だったかな?
何度か接点のあった萩田は、地元の福祉大に進み介護士を目指すらしい。
今までの言動とはどうも結びつかない。卒業式の前日、教室までやって来た。
「お前とはいろいろあったけど、これお詫びのしるし」
包装された小さな軽い箱を渡すとさっさと行ってしまった。教室で開けてみるとスキン1ダース。避妊具か。あわてて周りを見て机の中に入れた。
水泳部のお別れ会があった。
行く気などなかったが、2年の木ノ嶋さんが教室まで迎えに来た。
逡巡する淳一の手を引っ張り、無理やり連れて行かれた。
「やっと倉本先輩の手を握れた。先輩は、いつも仁志さんばっかり見て、私のことなんか知らんぷりやったでしょう。すごく傷ついてたんやから」
送別会では、ジュースで乾杯した後、先輩からひと言というコーナーがあった。
「俺、二年でやめてしまって本当に悪かった。仁志先輩から、水泳部を支えてあげてと言われたのに責任を果たせなかった」
部員達の戸惑ったような顔を見て、しまったと思った。雰囲気を暗くしてしまった。
「けど俺の高校生活の半分は水の中だった。水に流してもらえるかな」
我ながら下手な洒落れだと思いながら頭を下げた。頭を上げるとみんな笑っていた。
一日のほとんどの時間、起きている間は勉強をした。
直前一週間は、疲れたら机にうつぶせて寝た。
さすがに前日は布団で寝て、久しぶりに枕の感触を思い出した。
これだけやって落ちたら仕方がないか。そんな気にもなった。
そういえば福沢諭吉の自伝に、適塾でオランダ語の猛勉強をした時病気になり、初めて自分の枕がない事に気付いたという話があった。俺なんかまだまだ及びもつかない。
本番では基本的な設問が多く、大失敗は無かった。前期試験に向けてもう一頑張りだ。
野路は関東にある国立鹿島大学にスポーツ推薦で早々と進学を決めていた。
「俺、もちろんサッカーをやるよ、あそこはレベル高いから、多分Bチームからスタートだけどな。お前みたいにあきらめず、やれるだけやるよ」
香奈さんは、女子大の栄養学部に行く。料理を作るのが趣味だったそうだ。
「倉本君には私の作ったもの、一度も食べてもらえなかったね。私、陸上はまだ続けたいと思っているの。また応援に来てほしいけど・・・」
角谷麗奈はネイルアートの専門学校に行くと知らせに来た。
思い付きではなく、前々からの夢を叶えるらしい。店に行けばサービスしてくれるそうだ。
別れ際に耳打ちしてきた。
「約束したこと忘れんといてね」
約束?以前うちに来た時、結婚しようと言われたことか。あれって約束だったかな?
何度か接点のあった萩田は、地元の福祉大に進み介護士を目指すらしい。
今までの言動とはどうも結びつかない。卒業式の前日、教室までやって来た。
「お前とはいろいろあったけど、これお詫びのしるし」
包装された小さな軽い箱を渡すとさっさと行ってしまった。教室で開けてみるとスキン1ダース。避妊具か。あわてて周りを見て机の中に入れた。
水泳部のお別れ会があった。
行く気などなかったが、2年の木ノ嶋さんが教室まで迎えに来た。
逡巡する淳一の手を引っ張り、無理やり連れて行かれた。
「やっと倉本先輩の手を握れた。先輩は、いつも仁志さんばっかり見て、私のことなんか知らんぷりやったでしょう。すごく傷ついてたんやから」
送別会では、ジュースで乾杯した後、先輩からひと言というコーナーがあった。
「俺、二年でやめてしまって本当に悪かった。仁志先輩から、水泳部を支えてあげてと言われたのに責任を果たせなかった」
部員達の戸惑ったような顔を見て、しまったと思った。雰囲気を暗くしてしまった。
「けど俺の高校生活の半分は水の中だった。水に流してもらえるかな」
我ながら下手な洒落れだと思いながら頭を下げた。頭を上げるとみんな笑っていた。
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