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Ⅱ 君とオリンピックに行きたい
18 恋の力は偉大
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9月に熊本で日本インカレが行われるそうだ。
マネージャーさんに交通費と宿泊費の記された用紙を渡された。
東田をはじめ、六甲大は過去最多の8人が出場するという。
参加費は7万円と書いてあった。手持ちの金が無くなってしまう。
用事があるということで、参加を辞退したが、東田に「なぜ行かん」と猛烈に責められた。
学生食堂で彼に、今の生活状況を打ち明けた。
「せっかく陸上競技部でデビューしたけど、しばらく休むよ。今続けるためには金がないし、家も出される寸前だ。とりあえずバイトで稼いで、次に住むところを探すよ。大学から納入金の還付が出たら、ひと月位で復帰できると思う」
東田は考え込んだ。
「俺が金を貸すといっても、君は受け取らんのだろうな?」
「まあな。今までも綱渡りの生活をしてきたけど、何とか切り抜けてきた。明けない夜はないからな。今度も何とかなると思う」
確かに状況は厳しいが、以前のような追い詰められている感じはしない。
「それならうちに来てよ。都会ではルームシェアっていうのかな。知っての通り、うちは広くはないが狭くもない。月五千円でどうかな?一部屋提供するよ」
それもいいな。二人で合宿するみたいで楽しそうだ。
「また遊びに行くよ。実は一部屋二万五千円というのを見つけて、見に行こうと思っている。それに学生課で相談したら、寮が空いたら最優先で入れてくれることになった」
次の日に安い部屋を見に行ったが、あまりの狭さと汚さに諦めた。ワンルームで共同便所ではなあ。
やはり学生寮の空きを待とうか。
今の家にぎりぎりまで粘り、出される事になったら東田の部屋を貸してもらうしかないか。
気落ちして帰る途中、彼女からメールが来た。
「家に寄ってくれる?父が話したいって」
診察時間が終わった医院のドアを緊張しながら開けた。白衣の医師は手を洗っていた。
「わざわざ悪いな。足はもういいんだろう?それより家を探しているって言っていたけど、どうなった?」
「安いところをまだ探しています。学生寮には空きが出れば入れそうなんですが、いつになるか分かりません」
ため息をついた。こんな話はしたくない。
「わしの兄が住職をしているのは知っているな?電話したら君なら来てもらって構わんということだ。部屋は余っているから一部屋でも二部屋でもいいそうだ。朝食をつけて3万円。そのかわり寺の掃除とかはしてもらいたいらしい。どうかな?」
ものすごい好条件だ。一つ返事で答えた。
「ぜひお願いします。よければ明日にでも先方に伺います」
母親から食事を誘われたが、まだ食べていないのに断ってしまった。
いつもながら、いらん遠慮をするのも、その後で後悔するのも俺の駄目なところだ。
由佳が淳一を送りに行っている間、浩輔はビールを飲んでいた。
「ちょっと強引だったかな。兄貴も初めは渋っていたが、倉本君の名前を出すと、彼ならいいということになった。ということで多分決まりだな。しかし毎日、線香の匂いからは逃げられないな。君も覚えているだろう?」
美智子は、料理を分けながら言った。
「彼がまじめでいい人だというのは分かるけど、六甲大の学生でしょう?きれいで優秀な女の子がまわりにいるのに、何で聞こえない由佳を選んだの?それに私には遠慮ばかりして打ち解けないみたい」
「由佳は、愛想はあんまりよくないが、親の欲目でもそこそこ可愛い方だろう。それに君の前で彼がびくびくするのは分からんでもない。まあそれは冗談だが、二人が長く続くことを祈るのみだ。そういえば由佳は最近出かけることが多いが、どこに行っているんだ?」
「図書館や本屋さんに行って陸上に関係する本を集めていますよ。本当にオリンピックなんて夢を持たせてどうするのかしら」
由佳がご機嫌で帰って来た。部屋に戻る階段の音がとんとんと楽しそうだ。恋の力は偉大だな。
マネージャーさんに交通費と宿泊費の記された用紙を渡された。
東田をはじめ、六甲大は過去最多の8人が出場するという。
参加費は7万円と書いてあった。手持ちの金が無くなってしまう。
用事があるということで、参加を辞退したが、東田に「なぜ行かん」と猛烈に責められた。
学生食堂で彼に、今の生活状況を打ち明けた。
「せっかく陸上競技部でデビューしたけど、しばらく休むよ。今続けるためには金がないし、家も出される寸前だ。とりあえずバイトで稼いで、次に住むところを探すよ。大学から納入金の還付が出たら、ひと月位で復帰できると思う」
東田は考え込んだ。
「俺が金を貸すといっても、君は受け取らんのだろうな?」
「まあな。今までも綱渡りの生活をしてきたけど、何とか切り抜けてきた。明けない夜はないからな。今度も何とかなると思う」
確かに状況は厳しいが、以前のような追い詰められている感じはしない。
「それならうちに来てよ。都会ではルームシェアっていうのかな。知っての通り、うちは広くはないが狭くもない。月五千円でどうかな?一部屋提供するよ」
それもいいな。二人で合宿するみたいで楽しそうだ。
「また遊びに行くよ。実は一部屋二万五千円というのを見つけて、見に行こうと思っている。それに学生課で相談したら、寮が空いたら最優先で入れてくれることになった」
次の日に安い部屋を見に行ったが、あまりの狭さと汚さに諦めた。ワンルームで共同便所ではなあ。
やはり学生寮の空きを待とうか。
今の家にぎりぎりまで粘り、出される事になったら東田の部屋を貸してもらうしかないか。
気落ちして帰る途中、彼女からメールが来た。
「家に寄ってくれる?父が話したいって」
診察時間が終わった医院のドアを緊張しながら開けた。白衣の医師は手を洗っていた。
「わざわざ悪いな。足はもういいんだろう?それより家を探しているって言っていたけど、どうなった?」
「安いところをまだ探しています。学生寮には空きが出れば入れそうなんですが、いつになるか分かりません」
ため息をついた。こんな話はしたくない。
「わしの兄が住職をしているのは知っているな?電話したら君なら来てもらって構わんということだ。部屋は余っているから一部屋でも二部屋でもいいそうだ。朝食をつけて3万円。そのかわり寺の掃除とかはしてもらいたいらしい。どうかな?」
ものすごい好条件だ。一つ返事で答えた。
「ぜひお願いします。よければ明日にでも先方に伺います」
母親から食事を誘われたが、まだ食べていないのに断ってしまった。
いつもながら、いらん遠慮をするのも、その後で後悔するのも俺の駄目なところだ。
由佳が淳一を送りに行っている間、浩輔はビールを飲んでいた。
「ちょっと強引だったかな。兄貴も初めは渋っていたが、倉本君の名前を出すと、彼ならいいということになった。ということで多分決まりだな。しかし毎日、線香の匂いからは逃げられないな。君も覚えているだろう?」
美智子は、料理を分けながら言った。
「彼がまじめでいい人だというのは分かるけど、六甲大の学生でしょう?きれいで優秀な女の子がまわりにいるのに、何で聞こえない由佳を選んだの?それに私には遠慮ばかりして打ち解けないみたい」
「由佳は、愛想はあんまりよくないが、親の欲目でもそこそこ可愛い方だろう。それに君の前で彼がびくびくするのは分からんでもない。まあそれは冗談だが、二人が長く続くことを祈るのみだ。そういえば由佳は最近出かけることが多いが、どこに行っているんだ?」
「図書館や本屋さんに行って陸上に関係する本を集めていますよ。本当にオリンピックなんて夢を持たせてどうするのかしら」
由佳がご機嫌で帰って来た。部屋に戻る階段の音がとんとんと楽しそうだ。恋の力は偉大だな。
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