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Ⅲ ロンドンへの道
12 一緒に夢を見る
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次の日の朝、由佳が寺に来て、ロンドンへの道の表を新しく貼りなおした。
ジュン 日本記録 世界記録
1500 3分53秒 3分37秒 3分26秒
5000 13分49秒 13分13秒 12分37秒
10000 28分38秒 27分35秒 26分17秒
マラソン2時間15分6秒 2時間6分57秒 2時間3分2秒
これで表は埋まった。
日本記録に比較的近いのは千五百だが、後15秒も縮められるとは思えない。
今後伸びるとしたらマラソンか、一万か?
吉泉研究室に呼ばれた。広くもない部屋にエアロバイクやランニングマシンなどが置いてあり、床にはケーブルが這いまわっている。
部屋では説明もされず、細いチューブの付いたマスクをさせられ、自転車をこいだり走らされたりした。たっぷり運動した後、保健室へ行って採血までされ、ご苦労さんの一言だけでやっと解放。
先輩に聞くと、上位の記録を出した者がさせられるらしい。
人見さんから連絡があり、またシューズ工場を訪れた。
「倉本君、大活躍でしたね。びわ湖では区間賞をとって、まさか次の日のマラソンに出て2位なんてタフですね。駅伝に出てなかったら、2時間10分切ってたんじゃないのかな?」
「初マラソンだし、ビギナーズラックです」
「ビギナーズラックは出せる人しか出せませんよ。じゃあ今から質問に答えて下さい」
パソコンに向かって、淳一のデータを打ち込んでいった。
いつから陸上を始めて、その時のタイムとか今の練習内容などを細かく聞かれた。
朝夕、道路と山道を混ぜて30キロ走っていると話すと、キーボードの手を止めた。
「珍しい練習法ですね。確かに距離を稼ぐにはいいかもしれないけど、それは自分で考えたんですか」
「いや、知り合いのコーチに教わって」
「どこの学校の誰です?」
さすがに高校生の女の子とは言えず、三田島さんという人、とだけ答えた。
「倉本君とうちの会社、これからも末永くお付き合いしたいですね。大学1年で、この記録だったら、今後かなりのとこまで行くかもしれんと、うちの所長とも話していたんですよ」
所長さんとは前に会った白髪の人か。これまでトップアスリートの靴を作ってきた有名な人と聞いた。
「ただ問題点もあります。それは君が六甲大の学生だということです。例えば阪神体大生だったら練習漬けができるけど、君は国立でしょ?もちろん京大や広大とかも結構頑張っているけど、実業団に行く人、まずいないしね。とりあえず次の目標は何ですか?」
「来年3月のびわ湖マラソンと6月の陸上選手権に出ることです。一万か五千で」
人見さんはまじまじと淳一を見た。
「もしかしてロンドンを目指しているとか?」
何も言わず人見さんの顔を見返した。
彼は腕組みをしてしばらく考え込んだ。
「陸上を始めて一年でこの記録か。今19才とすると、伸びしろあるんだろうなあ。ひょっとするかなあ。うん。じゃあ、これから一緒に夢を見ましょうか。靴は四足では足りませんね。トラックで履くスパイクシューズも用意しておきますよ」
握手した後、会社のマークが入った大きな袋をもらった。シューズ四足分か。
「あの何でこれがもらえるんですか?監督の力なんですか?だったらお礼を言わないと」
人見さんは笑い出した。
「まあ産学提携というか、業界との癒着というか。トップ選手は宝物ですからね。ともかく君がロンドンでうちのシューズで走ってくれたら、まだいくらでも渡しますよ」
そんなものなのか。これで預金を減らさずに済んだ。
ジュン 日本記録 世界記録
1500 3分53秒 3分37秒 3分26秒
5000 13分49秒 13分13秒 12分37秒
10000 28分38秒 27分35秒 26分17秒
マラソン2時間15分6秒 2時間6分57秒 2時間3分2秒
これで表は埋まった。
日本記録に比較的近いのは千五百だが、後15秒も縮められるとは思えない。
今後伸びるとしたらマラソンか、一万か?
吉泉研究室に呼ばれた。広くもない部屋にエアロバイクやランニングマシンなどが置いてあり、床にはケーブルが這いまわっている。
部屋では説明もされず、細いチューブの付いたマスクをさせられ、自転車をこいだり走らされたりした。たっぷり運動した後、保健室へ行って採血までされ、ご苦労さんの一言だけでやっと解放。
先輩に聞くと、上位の記録を出した者がさせられるらしい。
人見さんから連絡があり、またシューズ工場を訪れた。
「倉本君、大活躍でしたね。びわ湖では区間賞をとって、まさか次の日のマラソンに出て2位なんてタフですね。駅伝に出てなかったら、2時間10分切ってたんじゃないのかな?」
「初マラソンだし、ビギナーズラックです」
「ビギナーズラックは出せる人しか出せませんよ。じゃあ今から質問に答えて下さい」
パソコンに向かって、淳一のデータを打ち込んでいった。
いつから陸上を始めて、その時のタイムとか今の練習内容などを細かく聞かれた。
朝夕、道路と山道を混ぜて30キロ走っていると話すと、キーボードの手を止めた。
「珍しい練習法ですね。確かに距離を稼ぐにはいいかもしれないけど、それは自分で考えたんですか」
「いや、知り合いのコーチに教わって」
「どこの学校の誰です?」
さすがに高校生の女の子とは言えず、三田島さんという人、とだけ答えた。
「倉本君とうちの会社、これからも末永くお付き合いしたいですね。大学1年で、この記録だったら、今後かなりのとこまで行くかもしれんと、うちの所長とも話していたんですよ」
所長さんとは前に会った白髪の人か。これまでトップアスリートの靴を作ってきた有名な人と聞いた。
「ただ問題点もあります。それは君が六甲大の学生だということです。例えば阪神体大生だったら練習漬けができるけど、君は国立でしょ?もちろん京大や広大とかも結構頑張っているけど、実業団に行く人、まずいないしね。とりあえず次の目標は何ですか?」
「来年3月のびわ湖マラソンと6月の陸上選手権に出ることです。一万か五千で」
人見さんはまじまじと淳一を見た。
「もしかしてロンドンを目指しているとか?」
何も言わず人見さんの顔を見返した。
彼は腕組みをしてしばらく考え込んだ。
「陸上を始めて一年でこの記録か。今19才とすると、伸びしろあるんだろうなあ。ひょっとするかなあ。うん。じゃあ、これから一緒に夢を見ましょうか。靴は四足では足りませんね。トラックで履くスパイクシューズも用意しておきますよ」
握手した後、会社のマークが入った大きな袋をもらった。シューズ四足分か。
「あの何でこれがもらえるんですか?監督の力なんですか?だったらお礼を言わないと」
人見さんは笑い出した。
「まあ産学提携というか、業界との癒着というか。トップ選手は宝物ですからね。ともかく君がロンドンでうちのシューズで走ってくれたら、まだいくらでも渡しますよ」
そんなものなのか。これで預金を減らさずに済んだ。
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