恋人たちの旅路

菊池昭仁

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天の川を見に行こう

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 「天の川って見たことあるか?」
 「日本でそんなの見えるの?」
 「もちろん! 今度一緒に見に行こうよ」
 「行きたい行きたい! どこに行けば見えるの?」
 「いろんなところで見えるよ、空気がきれいなところなら。
 海とか山とか」
 「お船は怖いから山がいいなあ」
 「それなら今度の連休、立山に登ろう」
 「立山って富山の?」
 「そうだ、俺の第二のふる里だ。
 でも、見えるかどうかは紀子の普段の行い次第だな? ほら、君は雨女だから」
 「そうかもね? 私、雨女だからちょっと心配だなあ。
 結婚式も雨だったもんね?」

 私たちは夜の街をドライブしながら笑った。



 だがその日は素晴らしく晴れ、雲ひとつない新月の夜だった。

 「いいかい、俺がいいというまで目を開けてはいけないよ」

 私は立山の山岳ホテルから妻の紀子の手を引いて、屋外へ出た。
 恐る恐る歩みを進める紀子。


 「もういいよ、目を開けてごらん」

 紀子が叫んだ。

 「うわーっ! 星が降って来そう!」

 
 彼女は息を飲んで満天の星空を見上げた。


 「あっ、流れ星。 またあそこにも!」
 「ほら、見えるかなあ? あれが人工衛星だよ。ツッーって流れて行くだろう?」
 「うん、見える見える! そしてこの星の大河が天の川なのね? きれい・・・」
 「この空にはこんなにも沢山の星が隠れているんだよ。
 すごいよね? 宇宙って」
 「宇宙もすごいけど、この星のページェントを見せてくれたあなたはもっと素敵よ!
 ありがとう、あなた」
 「どういたしまして」

 私たちは体を寄せ合いながら、この無限の星たちの競演をいつまでも眺めていた。

 ピンと張りつめた山の空気が心地良かった。

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