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「鬼が嗤うよ」
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「謙三にもっと早く会いたかったなあ」
そう言って晴れ着姿の琴音は笑った。
俺と腕を組んで近くの神社に初詣にやって来た。
「かなり並んでいるなあ?」
「そりゃそうよ、元日だもの」
「寒くないか?」
「大丈夫だよ。謙三は?」
「俺は大丈夫だ」
最近、不整脈が続いていたこともあり、私は十分すぎるほど厚着をしてカイロも左胸に貼っていた。
「カイロ、握っていろよ」
私は予備に持って来たホッカイロを琴音に袋を破って渡した。
「ありがとう。そういうところが謙三は大人だよね?」
琴音は無意識に以前付き合っていた男と私を比較しているようだった。
私と琴音は17歳も歳が離れていた。
琴音は23で私は40歳。まるで親子のようだった。
ようやく私たちの番になり、私たちはお賽銭を入れて鈴を鳴らした。
琴音が何を願っているのかは想像がつくが、彼女は私が何を祈ったのかは知らない。
「ねえ、おみくじ引こうよ」
琴音がおみくじを引いた。「凶」だった。
琴音は落胆した。
「もう一回引いてみる!」
二度目は「末吉」だった。
「末吉かあ~、もう一回・・・」
私はそれを制した。
「末吉はね? これから良くなって行くという暗示だからそれでいいんだよ。
さあ、あの枝に結んでおいで」
「謙三はおみくじ、引かないの?」
「俺はロマンチストじゃないからね」
私はおみくじを引くのが怖かった。
大晦日の晩には軽い心臓発作が起きたからだ。
私は一休禅師の言葉を思い出していた。
元旦は 冥土の旅の一里塚
めでたくもあり めでたくもなし
私は神に祈ったのではなく、感謝したのだ。
琴音と新年を迎えることが出来たしあわせに。
「ねえ、来年もまた来ようね?」
「そうだな。でも来年の話をすると、「鬼が嗤う」ぞ」
「来年は謙三と一緒に暮らしているといいなあ」
私はただ微笑んでいた。
たぶんそれは叶わないだろう。
ちらちらと雪が舞い降りて来た。
私は琴音の肩を抱いて泣いた。
そう言って晴れ着姿の琴音は笑った。
俺と腕を組んで近くの神社に初詣にやって来た。
「かなり並んでいるなあ?」
「そりゃそうよ、元日だもの」
「寒くないか?」
「大丈夫だよ。謙三は?」
「俺は大丈夫だ」
最近、不整脈が続いていたこともあり、私は十分すぎるほど厚着をしてカイロも左胸に貼っていた。
「カイロ、握っていろよ」
私は予備に持って来たホッカイロを琴音に袋を破って渡した。
「ありがとう。そういうところが謙三は大人だよね?」
琴音は無意識に以前付き合っていた男と私を比較しているようだった。
私と琴音は17歳も歳が離れていた。
琴音は23で私は40歳。まるで親子のようだった。
ようやく私たちの番になり、私たちはお賽銭を入れて鈴を鳴らした。
琴音が何を願っているのかは想像がつくが、彼女は私が何を祈ったのかは知らない。
「ねえ、おみくじ引こうよ」
琴音がおみくじを引いた。「凶」だった。
琴音は落胆した。
「もう一回引いてみる!」
二度目は「末吉」だった。
「末吉かあ~、もう一回・・・」
私はそれを制した。
「末吉はね? これから良くなって行くという暗示だからそれでいいんだよ。
さあ、あの枝に結んでおいで」
「謙三はおみくじ、引かないの?」
「俺はロマンチストじゃないからね」
私はおみくじを引くのが怖かった。
大晦日の晩には軽い心臓発作が起きたからだ。
私は一休禅師の言葉を思い出していた。
元旦は 冥土の旅の一里塚
めでたくもあり めでたくもなし
私は神に祈ったのではなく、感謝したのだ。
琴音と新年を迎えることが出来たしあわせに。
「ねえ、来年もまた来ようね?」
「そうだな。でも来年の話をすると、「鬼が嗤う」ぞ」
「来年は謙三と一緒に暮らしているといいなあ」
私はただ微笑んでいた。
たぶんそれは叶わないだろう。
ちらちらと雪が舞い降りて来た。
私は琴音の肩を抱いて泣いた。
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