街中華『ちゃらんぽらん』

菊池昭仁

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その2

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 「ラオチュウ料理長、アイツら凶本興業のお笑い芸人たちですよ。
 あの金髪筋肉変態エロオヤジと田無犬太郎たなしけんたろう、そして過去田小路かこだこうじもいます。
 あれれ、『イエローハット』とか『反社の奥様たち』で儲けた生臭尼作家の「それいけ家田倉庫いえだそうこ」まで来てますよ。
 どうやら合コンしているみたいですよ。あの女の子たち、上納されちゃうのかなあ? かわいそうに」

 ジャイアント・パンダの料理長、ラオチュウは寡黙な男、じゃなかったオスである。
 そんなことに興味はなかった。

 「・・・」
 「ボク、ちょっと様子を見て来ます」

 ホール係のレッサーパンダ、ショウ・コウシュが彼らに近づいて行った。

 「お冷のお替りはいかがですか?」
 「うるせえタヌキやな? いらんいらん、邪魔や!」
 「ボク、タヌキじゃないです。レッサー・パンダです」
 「同じようなもんじゃボケ! おまえ、かわいい顔して腹は真っ黒やないけ!」
 「ボクが一番気にしていることをよくも言いましたね?」
 「おいタヌ吉、携帯はここに置いていけ。
 俺たちは芸能人だからな? 撮られるわけにはいかんのや」
 「そうしてこのパツキンの人に気に入られようと、女の子を差し出す魂胆ですね!
 よう知らんけど」
 「うるせえチビパンダやな! ほら、これをやるからあっちへ行っとけや。シッシッツ」
 「あっ、新潟の笹団子だ! ワーイ、ではどうぞごゆっくり」

 笹団子を貰い、ショウ・コウシュはスキップをして厨房へと戻って行った。

 「料理長。笹団子をもらっちゃいました。一緒に食べましょうよ」
 「俺はイヤなヤツからは笹団子ひとつだってもらいたくはねえ」
 「それじゃあボク、みんな食べちゃいますよ。ムシャムシャ
 美味い! ほっぺが落ちちゃいそう!」


 家田倉庫がみんなの前で金髪芸人を擁護していた。

 「ノコノコついていく女の方が悪いんですよ。梅本さんは悪くはありません。
 ついていかなければいいんだから」
 「俺が乱暴した? ふざけるんやないで、証拠がないやんか? クソ文秋」
 「田無犬たむけんタイム、入りまーす! はい、みんな脱いで脱いで!
 梅本さんによく見えるようにね?」

 そこへまた、レッサーパンダのショウ・コウシュがやって来た。

 「ハイハイ。もう脱いでますよー」
 「おまえはパンツを履け!」
 「Don't worry. I'm wearing!」

 それを聞いていたラオチュウ料理長がレバニラを炒めながら呟いた。

 「wearは他動詞だ。
 正しくは  I'm wearing Pants  だ」

 パンダのラオチュウは学があった。 
 
 
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