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最終回
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その頃、地上ではてんやわんやの大騒ぎであった。
病室にはみんなが集まっていたからだ。
「もう今日で3日目ですが意識が戻りません。
残念ですが、極めて危険な状態です」
「どうして公園なんかに行ったの? あなた・・・」
「パパ! 返事してよパパ・・・」
「係長、部長が専務に掛け合ってくれて、「さいたま」のヤマネコ・パッケージへの出向は取止めになったんですよ!
だから目を覚まして下さい!」
「小川君、死んではダメだ! 戻って来い!」
「死ンデハダメ! チンポ!」
静枝と乃亜、飯島課長と部長、そしてヤマネコ運輸の社員たち、そして『源五郎』の店長とジュリアまでもが小川係長を見守っていた。
「私が悪いんです、もう少しお小遣いを上げてあげれば良かった。
貯金をしていたのは定年になったら家族で海外旅行をするためだったんです。
私たちの新婚旅行は熱海だったので、パリやベルリン、ローマとかに行きたかったんです。
転勤だって、そんなに嫌なら私と娘もついて行くつもりでした。
この家を処分して、そこがたとえ「さいたま」の深谷であろうとも、覚悟はしていたんです。
それなのに、それなのに・・・」
「パパごめんなさい、いつもテレビを独占して。
今度はパパの好きな「笑点」と「サザエさん」でも我慢するから。
だからお願い、目を覚まして!」
静枝と乃亜は抱きあって泣き崩れていた。
一方、係長は魔王に食べられる寸前だった。
「このワシに反論したのはお前が初めてじゃ。
さぞや美味かろうて。
では遠慮なく、いただきまーす!」
「うわー、助けてー! 静枝! 乃亜っー!」
係長は思わず女房と娘の名を叫んでしまった。
すると今まで意識がなかった小川係長の目が突然開いた。
「あなた!あなた!」
「パパ、パパッー!」
「小川係長!」
「よかったあ! わかりますか小川さん? あなたは助かったんですよ!」
何やら周りが騒がしい。
そこは沢山の人がいる病室だった。
医師やナースの姿も見える。
「あなたごめんなさい、これからはもっとあなたを大切にするわね?
これからも親子三人で仲良く暮らしましょう。
お小遣いも乃亜と同じ3万円にしますからね!」
「パパの好きなテレビ、見てもいいよ!」
「係長、ヤマネコ・パッケージにはもう行かなくても良くなりましたからね!」
小川係長は何がなんだかわからなかったが、取り敢えずみんなにお礼を言った。
「みんな、ありがとう」
メフィストは魔王の前でオモチャ売場の子供のように床に寝っ転がり、手足をばたつかせて暴れていた。
「魔王のバカバカバカバカ! せっかくの魂がー! ヤダヤダ絶対にヤダー!」
「仕方あるまい、あいつは人間じゃない、使徒じゃ」
「魔王があんな余計なこと言うからだよ! ああ、もったいないもったいない!
ファウストより旨そうな魂だったのに!」
「そのうちまたいい魂が見つかるはずじゃ」
「無理無理無理無理、絶対に無理!」
「ワシは久しぶりに楽しかったがのう。
人間の中にも、ひたむきに感謝して生きている奴もおるんじゃなあ?」
メフィストはようやくシルクハットを拾い上げ、立ち上がると言った。
「人間どもがみな、小川のようになったら人間社会は天国になってしまう。
今のような地獄じゃないと私は困る」
「安心しろメフィスト。そう簡単にはならんよ」
メフィストはマントを翻し、ステッキを高々と上げて王宮を去って行った。
『パパさんの魂を悪魔が買いにやって来た』完
病室にはみんなが集まっていたからだ。
「もう今日で3日目ですが意識が戻りません。
残念ですが、極めて危険な状態です」
「どうして公園なんかに行ったの? あなた・・・」
「パパ! 返事してよパパ・・・」
「係長、部長が専務に掛け合ってくれて、「さいたま」のヤマネコ・パッケージへの出向は取止めになったんですよ!
だから目を覚まして下さい!」
「小川君、死んではダメだ! 戻って来い!」
「死ンデハダメ! チンポ!」
静枝と乃亜、飯島課長と部長、そしてヤマネコ運輸の社員たち、そして『源五郎』の店長とジュリアまでもが小川係長を見守っていた。
「私が悪いんです、もう少しお小遣いを上げてあげれば良かった。
貯金をしていたのは定年になったら家族で海外旅行をするためだったんです。
私たちの新婚旅行は熱海だったので、パリやベルリン、ローマとかに行きたかったんです。
転勤だって、そんなに嫌なら私と娘もついて行くつもりでした。
この家を処分して、そこがたとえ「さいたま」の深谷であろうとも、覚悟はしていたんです。
それなのに、それなのに・・・」
「パパごめんなさい、いつもテレビを独占して。
今度はパパの好きな「笑点」と「サザエさん」でも我慢するから。
だからお願い、目を覚まして!」
静枝と乃亜は抱きあって泣き崩れていた。
一方、係長は魔王に食べられる寸前だった。
「このワシに反論したのはお前が初めてじゃ。
さぞや美味かろうて。
では遠慮なく、いただきまーす!」
「うわー、助けてー! 静枝! 乃亜っー!」
係長は思わず女房と娘の名を叫んでしまった。
すると今まで意識がなかった小川係長の目が突然開いた。
「あなた!あなた!」
「パパ、パパッー!」
「小川係長!」
「よかったあ! わかりますか小川さん? あなたは助かったんですよ!」
何やら周りが騒がしい。
そこは沢山の人がいる病室だった。
医師やナースの姿も見える。
「あなたごめんなさい、これからはもっとあなたを大切にするわね?
これからも親子三人で仲良く暮らしましょう。
お小遣いも乃亜と同じ3万円にしますからね!」
「パパの好きなテレビ、見てもいいよ!」
「係長、ヤマネコ・パッケージにはもう行かなくても良くなりましたからね!」
小川係長は何がなんだかわからなかったが、取り敢えずみんなにお礼を言った。
「みんな、ありがとう」
メフィストは魔王の前でオモチャ売場の子供のように床に寝っ転がり、手足をばたつかせて暴れていた。
「魔王のバカバカバカバカ! せっかくの魂がー! ヤダヤダ絶対にヤダー!」
「仕方あるまい、あいつは人間じゃない、使徒じゃ」
「魔王があんな余計なこと言うからだよ! ああ、もったいないもったいない!
ファウストより旨そうな魂だったのに!」
「そのうちまたいい魂が見つかるはずじゃ」
「無理無理無理無理、絶対に無理!」
「ワシは久しぶりに楽しかったがのう。
人間の中にも、ひたむきに感謝して生きている奴もおるんじゃなあ?」
メフィストはようやくシルクハットを拾い上げ、立ち上がると言った。
「人間どもがみな、小川のようになったら人間社会は天国になってしまう。
今のような地獄じゃないと私は困る」
「安心しろメフィスト。そう簡単にはならんよ」
メフィストはマントを翻し、ステッキを高々と上げて王宮を去って行った。
『パパさんの魂を悪魔が買いにやって来た』完
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