★未完成交響曲

菊池昭仁

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第59話

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 国際航路の航海士の話は拙著『センチメンタル・ジャーニー』と重複するので割愛することにした。
 腎臓透析も始まり、人生の終焉に近づいたのもその理由である。

 元妻は別れる時に言ってくれた。

 「私と結婚しないでお船に乗っていたらしあわせだったのにね」 


 だがそうではない、寂しがり屋の俺には外国航路の船乗りには向いていなかったのである。

 殆ど日本には帰って来ない船だった。
 成田から出て成田に帰って来る。その期間約1年、
 結婚の約束をして5年、彼女はずっと私を待っていてくれた。
 
 船長の試験にも合格し、私は現場から陸上勤務を命じられ、結婚したらニューヨーク支店に配属される予定だった。
 だが私は会社を辞めて田舎に帰ることを選択した。
 未練はなかった。妻と一緒なら仕事など何でも良かったのである。
 盛大な結婚式だったが私は無職だった。
 三か月間妻に養ってもらった。
 父親の会社の社長から誘われたが辞退して、外資系の半導体企業の研究員に応募したが不採用になり、地元の大手ゼネコンの資材係として採用された。

 貿易会社の商社マンから汗と埃に塗れた現場作業員として必死になって働いた。
 元船乗りとしてのプライドがあったからだ。
 誰にも負けたくなかった。
 それがスタートだった。
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