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第52話
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本船は地中海を進み、ジブラルタル海峡に入った。最も狭い箇所は14km程度しかない。
初めての地中海、ジブラルタル海峡だった。
ジブラルタル海峡は軍事、船舶交通の要所であるため、実はあまり知られてはいないことだが南はモロッコ、北のイベリア半島はスペインになっているのだが、ジブラルタルだけは北側はイギリス領であり、南のセウタはスペイン領になっている。
ヘラクレスが陸地を割って作った海峡だという神話が残っている。
船舶の交通量が多く、私は初めてのジブラルタル海峡の航海当直に、三等航海士である私はかなり緊張していた。
ベテラン操舵手の須山さんと夜、20時から24時までペアの航海当直だった。
須山さんはやさしい海の男で、上司とは言え、新米の何もわからない三等航海士の私を見守ってくれていた。
「サードオフィサー、あの船、少し近いようですねえ」
「そうですね? ではあの船の右舷を追い抜くようにしましょう」
当直中の全責任は三等航海士の自分にある。ドキドキした。
私はVHFで前方の船を呼び出し、右舷を通過する旨の連絡をした。
「Starboard easy!(右舵約7°に取れ)」
「Starboard easy,Sir(右舵7°了解)」
「Starboard easy,Sir(右舵7°になりました)」
「Midship(舵戻せ)」
「Midship,Sir(舵戻します)」
「Midship,Sir(舵戻しました)」
「Course,283(針路283°に取れ)」
「Course,283,Sir(針路283°了解)」
「Course,283,Sir(針路283°完了)」
国際航路では操舵号令等はすべて英語で行い、命令を受けたら必ずそれを復唱し、それが実行されると再び復唱してオーダーミスを防ぐシステムが完成している。
もちろん航海日誌もすべて英語で記入する。
そこにもう一人、非番の操舵手がブリッジに上がって来た。
少し酒に酔っていることもあり、私は少し彼にたしなめなれた。
「どうです? サードオフィサー。初めてのジブラルタルは?」
すると須山さんが言ってくれた。
「坂元さん、今サードオフィサーは仕事中だから話し掛けないで」
「ああ すみません。黙っていますね? あはははは」
これが海の男だと思った。こんなピンチは日常だったのである。
ジブラルタル海峡を抜けて大西洋へ出た。
大西洋にはアトランティス大陸があったという伝説がある。ゆえに大西洋のことを英語で「Atlantic Ocean」と呼ぶらしい。
次の港はガテマラのプエルト・バリオス、スペイン語圏であるため、船内ではスペイン語が飛び交っていた。
クルーは何度かプエルト・バリオスを訪れており、馴染みの女もいるようだった。
「サードオフィサーはラッキーだよ、処女航海がプエルト・バリオスだなんて」
クウォーター・マスターの須山さんがそう言った。須山さんもスペイン語が堪能だった。
航海当直中、私は須山さんからスペイン語のレッスンを受けた。
10日ほどでプエルト・バリオスに到着した。
検疫や税関、様々な入港審査を経て接岸。まさにここはジャングルであった。
早速チョフサーや現地スタッフと荷役の打ち合わせをした。
「よし、サードオフィサー。後は俺がやっておくからみんなと上陸して来い」
一等航海士は私が長期の航海で疲れていることを労い、みんなと町へ飲みに行くことを勧めてくれた。
タクシーを呼び、私たちはプエルト・バリオスの町に出た。
そこはまさに「地上最後の楽園」であった。
初めての地中海、ジブラルタル海峡だった。
ジブラルタル海峡は軍事、船舶交通の要所であるため、実はあまり知られてはいないことだが南はモロッコ、北のイベリア半島はスペインになっているのだが、ジブラルタルだけは北側はイギリス領であり、南のセウタはスペイン領になっている。
ヘラクレスが陸地を割って作った海峡だという神話が残っている。
船舶の交通量が多く、私は初めてのジブラルタル海峡の航海当直に、三等航海士である私はかなり緊張していた。
ベテラン操舵手の須山さんと夜、20時から24時までペアの航海当直だった。
須山さんはやさしい海の男で、上司とは言え、新米の何もわからない三等航海士の私を見守ってくれていた。
「サードオフィサー、あの船、少し近いようですねえ」
「そうですね? ではあの船の右舷を追い抜くようにしましょう」
当直中の全責任は三等航海士の自分にある。ドキドキした。
私はVHFで前方の船を呼び出し、右舷を通過する旨の連絡をした。
「Starboard easy!(右舵約7°に取れ)」
「Starboard easy,Sir(右舵7°了解)」
「Starboard easy,Sir(右舵7°になりました)」
「Midship(舵戻せ)」
「Midship,Sir(舵戻します)」
「Midship,Sir(舵戻しました)」
「Course,283(針路283°に取れ)」
「Course,283,Sir(針路283°了解)」
「Course,283,Sir(針路283°完了)」
国際航路では操舵号令等はすべて英語で行い、命令を受けたら必ずそれを復唱し、それが実行されると再び復唱してオーダーミスを防ぐシステムが完成している。
もちろん航海日誌もすべて英語で記入する。
そこにもう一人、非番の操舵手がブリッジに上がって来た。
少し酒に酔っていることもあり、私は少し彼にたしなめなれた。
「どうです? サードオフィサー。初めてのジブラルタルは?」
すると須山さんが言ってくれた。
「坂元さん、今サードオフィサーは仕事中だから話し掛けないで」
「ああ すみません。黙っていますね? あはははは」
これが海の男だと思った。こんなピンチは日常だったのである。
ジブラルタル海峡を抜けて大西洋へ出た。
大西洋にはアトランティス大陸があったという伝説がある。ゆえに大西洋のことを英語で「Atlantic Ocean」と呼ぶらしい。
次の港はガテマラのプエルト・バリオス、スペイン語圏であるため、船内ではスペイン語が飛び交っていた。
クルーは何度かプエルト・バリオスを訪れており、馴染みの女もいるようだった。
「サードオフィサーはラッキーだよ、処女航海がプエルト・バリオスだなんて」
クウォーター・マスターの須山さんがそう言った。須山さんもスペイン語が堪能だった。
航海当直中、私は須山さんからスペイン語のレッスンを受けた。
10日ほどでプエルト・バリオスに到着した。
検疫や税関、様々な入港審査を経て接岸。まさにここはジャングルであった。
早速チョフサーや現地スタッフと荷役の打ち合わせをした。
「よし、サードオフィサー。後は俺がやっておくからみんなと上陸して来い」
一等航海士は私が長期の航海で疲れていることを労い、みんなと町へ飲みに行くことを勧めてくれた。
タクシーを呼び、私たちはプエルト・バリオスの町に出た。
そこはまさに「地上最後の楽園」であった。
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