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最終話

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 翌朝、キャンディは勇気を持ってジャスティン王子に直接告白することにした。

 (ジャスティンは私の恋文を読んでくれた。
 そしてジュニアの話では、ジャスティンも私に好意がある様子。
 きちんと会って私の想いを伝えなきゃ!)



 ジャスティン王子は宮廷の薔薇園でバラたちに話し掛けていた。

 「おはよう、みんな元気かい?
 夕べは寒かっただろう? 風邪なんか引かなかったかい?」

 するとインペリアル・ローズが言った。

 「これは王子様、いつも温かいお気遣い、痛み入ります。
 夕べは美しいウルトラ・ムーンの夜でしたので、とても気持ちの良い月光浴が出来ました。
 おかげさまでこんなにきれいな朝露を結ぶことが出来ました」
 「そう、それは良かったね?
 みんな、今日もとても綺麗だよ、そしてとてもいい香りがする」

 するとバラたちから大きな歓声が湧き起こった。


 「ジャスティン王子、バンザイ! ジャスティン王子、バンザイ! われらがプリンス! ジャスティン様!」
 「ありがとう、ありがとうみんな」


 そこへキャンディがやって来た。

 「王子。私の手紙を読んでいただいたそうで・・・」
 「やあ、キャンディ、おはよう。
 ああ、あの白紙の手紙のことだよね?」
 「白紙?」
 「うん、ペドウィッグ.Jrが届けてくれた、あの白紙の手紙のことだろう?
 あの、会社が使う、請求書を入れる茶封筒みたいなラブレターのことだよね?」

 ジャスティン王子は眩しい白い歯を見せて笑っていた。

 (あのジュニアのヤロー、後でロースト・フクロウにしてやる!)

 キャンディはワナワナと怒りに震えていた。


 「ありがとう、キャンディ。
 何も言えないくらいにボクを愛してくれていたんだってね?
 ボクもキャンディが大好きだよ、愛しているよ、キャンディ」
 「王子・・・。
 私も愛しているわ、私と結婚して! お願い!」

 すると突然、王子の顔に翳りが出た。

 「ごめん、キャンディ。結婚は出来ない。結婚は出来ないんだ、キャンディ」
 「どうして? どうしてなの? だってお互いに好きで、お互いにやりたい盛りでしょう!
 私たちはさかりのついた猫ちゃんでしょう?
 すぐに結婚して、バンバンえっちして、たくさんのかわいい子猫ちゃんたちを作りましょうよ!」
 「キャンディ、ボクはキャンディが大好きだよ。
 でもそれは、ボクのとしてね・・・」

 キャンディは茫然とした。

 「実の妹? どうゆうことなの?」
 「ボクとキャンディは兄妹なんだ。
 ボクの父、ハーバー王国の国王が、シーナ王妃のお母さん、つまり君のママでもあるデヴィ夫人と浮気をして出来ちゃった子供なんだ、だからボクたちは道徳的にも、法律的にも結婚することが出来ないんだ」

 キャンディは何がどうなって、どういう事になっているのか理解出来ずにいた。

 「そんな、ジャスティンが私の本当のお兄ちゃんなの?
 お姉ちゃんは、シーナ妃は何も言っていなかったわよ、そんなことひと言も!」
 「それはボクと王様、そしてデヴィ夫人の3人しか知らない秘密だからね?
 ボクはシーナ王妃に愛され、大切に育てられたんだよ、実の子供のようにね? 本当は姉弟なのに」

 (確かにママはインドのネシア国王の第2夫人として、88歳の米寿になった今でも生理があると言っていたわ。
 するとジャスティンはママが60歳の時に産んだ子供なの?) 

 キャンディはショックのあまり、その場に倒れ込んでしまった。

 「でもねキャンディ? ボクはとってもうれしいんだ。 
 君のようなかわいい妹がいつも傍にいてくれて。
 だってそうだろう? 恋人同士は所詮他人だ、離婚してしまうことだってあるかもしれない。
 でもボクたちは血を分けた兄妹なんだ、この体には同じ血が流れているんだよ。
 たとえ離れていたとしても、ボクたちは他人じゃない、家族なんだ。
 だからこれからは仲のいい兄妹として、お互いに素敵な家族を作ろうじゃないか?
 そして休日には一緒にBBQをしたり、お正月にはワイハで芸能人と遊んだりしてね?
 どうだい、とっても素敵だとは思わないかい?」
 「ジャスティン・・・」

 キャンディはジャスティンに抱き付き、たくさん泣いた、いっぱい泣いた。
 だがその涙は悲しい失恋の涙ではなく、すばらしい家族としての喜びの涙だった。


 その後、ジャスティン王子とキャンディはそれぞれ結婚し、アキバ王国でみんなで仲良く暮らしましたとさ。

 めでたし めでたし

                              『メイドの私はジャスティン王子が大好き』完




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