24 / 26
第24話 落とし前
しおりを挟む
光一郎はロサンジェルスに向かう機内にいた。
今まで人と争うことを光一郎は避けて来た。
それが自分が傷付かない唯一の処世術だと思っていたからだ。
だが、今回、光一郎は初めて人を憎んだ。
怒りの炎に包まれた光一郎は、サンディエゴの冴島に会うことを決めたのだった。
五菱商事のサンディエゴ支店に光一郎は冴島を訪ねた。
受付の白人女性に光一郎は英語で用件を伝えた。
「冴島支店長にお会いしたい」
「アポイントメントはございますか?」
「君島遥の夫だと伝えてくれれば分かる」
するとすぐに冴島がやって来た。
「初めまして、冴島です」
その瞬間、光一郎は何も言わず、いきなり冴島の左頬を殴りつけた。
すぐにガードマンが駆け付けると、光一郎に銃を構えた。
「両手を挙げろ!」
「NO! 何も問題はない!」
冴島が叫んだ。
「申し訳ありませんでした。君島さん、すべての責任は私にあります、気が済むようにして下さい」
すると冴島はゆっくりと立ち上がり、光一郎の前に立った。
「私はあなたに会って謝罪すべきだった。だが信じて欲しいんです、私はあなたから逃げたのではなく、奥さんから、いや、奥さんを諦められなくなりそうな自分から逃げたのです。
償いはさせていただきます。本当に申し訳ありませんでした」
冴島はそう言うと、そのままそこに土下座をし、床に額を着けて光一郎に詫びた。
「私は遥に浮気されました。いや浮気ではなく本気だったのかもしれない。
私は遥を責める気はない、浮気される自分に男としての魅力がなかったからだ。
だが、あなたは許せなかった、だから日本からわざわざここまで来た。
私たち家族の平穏な日常を奪ったあんたを、俺は憎んだ」
冴島は頭を上げることはなかった。
光一郎は冴島の脇腹を蹴り上げた。するとガードマンがそれを制した。
「それくらいにしてやれ、もういいだろう?」
冴島は言った。
「いいんだ、その人を放してくれ、すべて俺のしたことだ、俺はこの人から罰を受けなればならないんだ!」
黒人のセキュリティは光一郎を放した。
「最初の1発は私の分、そしてさっきのは娘の紅葉の分だ。
立て! 顔を上げろ、そしてこれが遥の分だ! おまえに弄ばれ、捨てられた遥の!」
光一郎は冴島の胸倉を掴み、冴島の顔面を殴りつけた。
鼻血を出して俯く冴島。
冴島の血が、ポタポタと白い大理石の床に落ちた。
光一郎はそのままエントランスを出て行った。
西海岸のカリフォルニアシャワーの陽射しと、爽やかな海風が吹いていた。
光一郎は近くのハンバーガースタンドでコーラとハンバーガーを注文し、ビルの屋上にたなびくたくさんの大きな星条旗を眺め、泣きながらそれを食べた。
冴島を殴った右手の痛みを感じながら・・・。
今まで人と争うことを光一郎は避けて来た。
それが自分が傷付かない唯一の処世術だと思っていたからだ。
だが、今回、光一郎は初めて人を憎んだ。
怒りの炎に包まれた光一郎は、サンディエゴの冴島に会うことを決めたのだった。
五菱商事のサンディエゴ支店に光一郎は冴島を訪ねた。
受付の白人女性に光一郎は英語で用件を伝えた。
「冴島支店長にお会いしたい」
「アポイントメントはございますか?」
「君島遥の夫だと伝えてくれれば分かる」
するとすぐに冴島がやって来た。
「初めまして、冴島です」
その瞬間、光一郎は何も言わず、いきなり冴島の左頬を殴りつけた。
すぐにガードマンが駆け付けると、光一郎に銃を構えた。
「両手を挙げろ!」
「NO! 何も問題はない!」
冴島が叫んだ。
「申し訳ありませんでした。君島さん、すべての責任は私にあります、気が済むようにして下さい」
すると冴島はゆっくりと立ち上がり、光一郎の前に立った。
「私はあなたに会って謝罪すべきだった。だが信じて欲しいんです、私はあなたから逃げたのではなく、奥さんから、いや、奥さんを諦められなくなりそうな自分から逃げたのです。
償いはさせていただきます。本当に申し訳ありませんでした」
冴島はそう言うと、そのままそこに土下座をし、床に額を着けて光一郎に詫びた。
「私は遥に浮気されました。いや浮気ではなく本気だったのかもしれない。
私は遥を責める気はない、浮気される自分に男としての魅力がなかったからだ。
だが、あなたは許せなかった、だから日本からわざわざここまで来た。
私たち家族の平穏な日常を奪ったあんたを、俺は憎んだ」
冴島は頭を上げることはなかった。
光一郎は冴島の脇腹を蹴り上げた。するとガードマンがそれを制した。
「それくらいにしてやれ、もういいだろう?」
冴島は言った。
「いいんだ、その人を放してくれ、すべて俺のしたことだ、俺はこの人から罰を受けなればならないんだ!」
黒人のセキュリティは光一郎を放した。
「最初の1発は私の分、そしてさっきのは娘の紅葉の分だ。
立て! 顔を上げろ、そしてこれが遥の分だ! おまえに弄ばれ、捨てられた遥の!」
光一郎は冴島の胸倉を掴み、冴島の顔面を殴りつけた。
鼻血を出して俯く冴島。
冴島の血が、ポタポタと白い大理石の床に落ちた。
光一郎はそのままエントランスを出て行った。
西海岸のカリフォルニアシャワーの陽射しと、爽やかな海風が吹いていた。
光一郎は近くのハンバーガースタンドでコーラとハンバーガーを注文し、ビルの屋上にたなびくたくさんの大きな星条旗を眺め、泣きながらそれを食べた。
冴島を殴った右手の痛みを感じながら・・・。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる