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第2話 ステラおばさん

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 オジサンとアルパカのジョニーが歩いていると、いい匂いがしてきました。

 「なんだろう、この甘い香りは?」

 ふたりはここ3日間、何も食べていませんでした。


 その香りは近くの小さなお家から漂っていました。

 その家はお菓子の家だした。

 屋根はチョコレート、壁はホイップクリーム、玄関ドアはアーモンドチョコレートで出来ていました。


 「あの屋根のチョコレートを分けてもらおう」

 オジサンが言いました。

 オジサンはそのお菓子の家に近づいて行くと、そのアーモンドチョコのドアを3回ノックしました。


 「すみませーん、誰かいませんかあー!」

 「はーい、どちら様ですの?」


 家の中から太ったおばさんが出て来ました。


 アルパカのジョニーは驚きました。なんとそのおばさんは『ステラおばさん』だったからです。


 「ギター弾きます。その代わりに屋根のチョコレートを一枚分けて下さいませんか?」

 「屋根は困るわ、だって雨漏りがしてしまうもの。
 その代わり、素敵な演奏だったら私がさっき焼いたチョコチップ・クッキーをあげる。
 それでどうかしら?」

 「ありがとうございます!」


 オジサンがギターを弾き始めると、ステラおばさんは大粒の涙を流しました。


 「なんて悲しい曲なの?」


 ステラおばさんは家に戻ると、カゴいっぱいのクッキーを持って来てくれました。


 「さあ全部召し上がれ」

 「ありがとうございます。いただきます!」

 
 サクサク ムシャムシャ


 オジサンとジョニーは仲良くクッキーを食べました。

 
 「うまいよな? このクッキー?」

 「それはそうですよ、なにしろステラおばさんのクッキーですから」


 ステラおばさんは満足そうに微笑んでいました。


 「美味しいでしょう? 私が焼いたクッキーは?」

 「こんな美味しいクッキーは食べたことがありません!」

 「じゃあ、これもおみやげにどうぞ」


 ステラおばさんは袋一杯のクッキーをくれました。


 「こんなにたくさん!」

 「お店の残り物でごめんなさいね? でも味は確かよ」

 「助かります。長旅の途中なので」


 ジョニーがクッキーの袋を受け取ると、ステラおばさんにお礼を言いました。



 「これからどこに行くおつもり?」

 「ボクたち、愛を探して旅をしているんです。
 ステラさんは愛を見たことはおありですか?」

 「愛? 愛ねえー、子供の頃にお母さんがそんな話をしてくれた気がするけど、見たことはないわねー」

 「そうですか? やはり愛は簡単には見つけられないものなんですね?」

 「ごめんなさいね、お役に立てなくて」

 「とんでもありません、こんなにたくさんのクッキーをいただいて、本当に助かります。
 ありがとうございました」

 「そういえば、隣町に『銀だこ』というタコ焼きを売っている、銀次郎さんというお爺さんがいるから、寄ってみるといいわ。
 ステラから聞いたと言えば、何かの手掛かりを教えてくれるかもしれないから」

 「ありがとうございます。ぜひ訪ねてみます」

 「元気でね? それからこの先の森に、『どうしてウサギ』がいるから気をつけるのよ。そのウサギはすぐに「どうして?、どうして?」て、しつこいから」

 「わかりました。ご忠告、ありがとうございます。
 ではステラさん、さようなら」


 オジサンとジョニーはまた旅を続けました。

 
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