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狂信者
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「……あなた、届いたわ」
妙齢の女は気怠そうに石の床に無造作に置かれたクッションに寄りかかり、身体を横たえたまま、空中に向かって会話をしていた。女は念波で遠く離れた夫と会話が出来る、所謂『魔導士』という特殊な人間だ。
(うむ、急がせたからな)
女の頭には、遥か彼方にいる、夫である男性の声が響いていた。その耳に心地良いテノールの音に、女はうっとりとした表情を浮かべている。
「そっちは、忙しいんでしょ?」
彼女の口からは、熱の籠った息と声が同時に吐き出された。
(邪教徒を殲滅させなければ、我が神が安心して降臨してくださらぬからな)
遥か彼方の夫の声が、嬉しそうに歪んでいた。女には彼の顔が想像できたのだろう、淫靡な笑みを浮かべている。
「ふふ、大丈夫。あなた、たっぷり入ってるわ。あぁ、良いわぁ、この濃いぃの……」
女は、目を潤ませ、うっとりとしながら届いたばかりの小さな瓶を見つめていた。中にはドロッとした、白い、粘液じみた液体が、蓋一杯まで湛えられていた。
(くくく、お前を思って搾り取ったからな)
愉快そうな夫の言葉に女は舌で、ゆっくりと味わうように、その真っ赤に熟れた唇を舐めた。
「これなら、我が神を、この身にお迎え出来そうね」
この二人は夫婦ではあるのだ。だが、契りを交わしてはおらず、身体は清いままだった。
それは何故か。
この二人は、邪神を信奉する狂信者なのだ。
『処女生誕』
その意味するところは、邪神降臨。すなわち自らに神を宿らせ、この世界に産み落とすつもりなのだ。そのために夫から核となる精液を瓶に詰め、魔法で劣化を防ぎ、送り届けたのだ。
「あぁ、もう……はぁあ」
女の息遣いが妖しくなっていく。その艶めかしい呼吸の音が大きく、荒くなり、そして、嬌声へと変わっていく。
(おぃおぃ、一人で盛り上がってるのを聞くだけってのは、癪だなぁ……)
遠くでイラついているであろう夫を思い、更に身体は熱くなっていく。右手は、自らの意識とは別に、柔らかな身体の線をじりじりとなぞり、胸の頂きへと向かった。
(おぉ! 俺にも見えるぞ!)
男の嬉しそうな声が、空間に木霊した。
女の背後には、禍々しいとしか形容のしようが無い邪神像が、血塗れの赤に染まり、
悲鳴ともつかない共振音を発していた。
「あぁ……」
女の口からは快楽の溺れつつある声が零れ、愛しい人から送られた、邪神の為の子種が詰まった瓶を、愛おしむように、拭うように舌で味わっていた。
だが彼女の周りはには、邪神生誕の生贄となるのであろう、物言わぬ屍が、何百という数で、無造作に転がされていた。その悍(おぞ)ましい空気の中で、一人の雌が、夫を、崇拝する邪神を思い、身を捩(よじ)らせながら、悶え、喘いでいた。
妙齢の女は気怠そうに石の床に無造作に置かれたクッションに寄りかかり、身体を横たえたまま、空中に向かって会話をしていた。女は念波で遠く離れた夫と会話が出来る、所謂『魔導士』という特殊な人間だ。
(うむ、急がせたからな)
女の頭には、遥か彼方にいる、夫である男性の声が響いていた。その耳に心地良いテノールの音に、女はうっとりとした表情を浮かべている。
「そっちは、忙しいんでしょ?」
彼女の口からは、熱の籠った息と声が同時に吐き出された。
(邪教徒を殲滅させなければ、我が神が安心して降臨してくださらぬからな)
遥か彼方の夫の声が、嬉しそうに歪んでいた。女には彼の顔が想像できたのだろう、淫靡な笑みを浮かべている。
「ふふ、大丈夫。あなた、たっぷり入ってるわ。あぁ、良いわぁ、この濃いぃの……」
女は、目を潤ませ、うっとりとしながら届いたばかりの小さな瓶を見つめていた。中にはドロッとした、白い、粘液じみた液体が、蓋一杯まで湛えられていた。
(くくく、お前を思って搾り取ったからな)
愉快そうな夫の言葉に女は舌で、ゆっくりと味わうように、その真っ赤に熟れた唇を舐めた。
「これなら、我が神を、この身にお迎え出来そうね」
この二人は夫婦ではあるのだ。だが、契りを交わしてはおらず、身体は清いままだった。
それは何故か。
この二人は、邪神を信奉する狂信者なのだ。
『処女生誕』
その意味するところは、邪神降臨。すなわち自らに神を宿らせ、この世界に産み落とすつもりなのだ。そのために夫から核となる精液を瓶に詰め、魔法で劣化を防ぎ、送り届けたのだ。
「あぁ、もう……はぁあ」
女の息遣いが妖しくなっていく。その艶めかしい呼吸の音が大きく、荒くなり、そして、嬌声へと変わっていく。
(おぃおぃ、一人で盛り上がってるのを聞くだけってのは、癪だなぁ……)
遠くでイラついているであろう夫を思い、更に身体は熱くなっていく。右手は、自らの意識とは別に、柔らかな身体の線をじりじりとなぞり、胸の頂きへと向かった。
(おぉ! 俺にも見えるぞ!)
男の嬉しそうな声が、空間に木霊した。
女の背後には、禍々しいとしか形容のしようが無い邪神像が、血塗れの赤に染まり、
悲鳴ともつかない共振音を発していた。
「あぁ……」
女の口からは快楽の溺れつつある声が零れ、愛しい人から送られた、邪神の為の子種が詰まった瓶を、愛おしむように、拭うように舌で味わっていた。
だが彼女の周りはには、邪神生誕の生贄となるのであろう、物言わぬ屍が、何百という数で、無造作に転がされていた。その悍(おぞ)ましい空気の中で、一人の雌が、夫を、崇拝する邪神を思い、身を捩(よじ)らせながら、悶え、喘いでいた。
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