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魔王、選択する10
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下りたところに重厚な金属でできた扉があり、鍵が掛けられている。
扉を軽く叩いてみるがびくともしなかった。
「……シャルル、君には金属でも何でも斬れるって能力はないのかい?」
「……魔法だったら斬れた」
残念ながら、聖剣も普通の剣と同じように固い金属は斬れないようだ。
クリスは火魔法を使い、扉を溶かすことにした。
熱気にやられないように自身の周囲に障壁を張り、慎重に扉を溶かしていく。
そして扉の真ん中に向こう側へ通じる穴が開くと、「ぐぇぇぇー」「ごぉぉぉぉー」「ばりゃぁぁぁー」などの異音としか思えない鳴き声が聞こえた。
「少なくとも、魔物たちはこの向こうにいるみたいだね」
クリスは作業を続け、ようやく鍵が壊れたことを確認すると、扉を押した。
ギィーと音を立てながら、重たい扉は開く。
扉の向こうの光景に、クリスは目を見開いて硬直した。
そこには様々な魔物が鳥かごのような檻に入れられていた。
それだけでなく、その魔物全てにラヌルと同じような人間の部位が生えている。
「なんで、こんな……」
絶句するクリスに場違いな明るい声が掛けられた。
「おや、クリス殿ではありませんか」
部屋の奥、檻に囲まれてこちらを向いて立っていたのは、満面の笑みを顔に張り付けたイリエだった。
「イリエ、これはどういうことだい?」
クリスはイリエを睨み付けながら問う。
いつでも戦えるように全身に力を入れながら。
一方、イリエはリラックスした状態で手を拡げる。
「見ての通りですよ! すばらしいと思いませんか?」
「すばらしい? 何がだい?」
眉をひそめるクリスにイリエは顔を向ける。
その目は酔ったように恍惚としていた。
「魔物と人間の融合ですよ! 力ある魔物と知ある人間、この2つが合わさったのです! これをすばらしいと言わざるして何を言うのでしょう?」
クリスの眉間のシワが深くなった。
「悪いけど、全くわからないね」
イリエの肩がガックリと下がり、うつむく。
その目は深い闇に覆われていた。
「どうして……わからないんだ……あいつらも……あの連中も……」
ブツブツ呟いたあと、いきなりガバッと顔をあげた。
その瞳にはもとの恍惚とした狂気が宿っている。
「この魔物たちはね、すごいんですよ!
普通の魔物よりも能力が強化されていますし、何より、人語を理解し文字が読めるのですよ!」
「文字が読める……!」
クリスの目が見開かれる。
夕食後、他愛ない話をした少年の言葉が思い出される。
『文字を学ぶなんてこと、ここじゃなきゃできませんでした』
嫌な予感で心臓の鼓動がうるさい。
そんなことも知らず、イリエは目を輝かせて演説を続ける。
「そうです! 私が作り出した魔物たちは文字を解するんです!
あんなものたちに、苦労して教えたかいがありました」
クリスは頭が真っ白になる。
気がついたら、クリスは魔力の球をイリエに放っていた。
「あ、危ないですね……」
魔力の球はイリエの脇に逸れていた。
クリスは頭を振り、冷静になろうとするがうまくいかない。
「……お前、何をしたんだ?」
思考を阻害するような激情にクリスはくらくらする。
頭が焼けるように熱いのに、声は場が凍るほど冷たい。
「は?」
イリエはポカンと口を開ける。
「お前、何をしたんだって聞いているんだ!」
クリスの魔力が地下室で膨れあがる。
クリスの金色の瞳は怒りで爛々と輝いている。
腕と右足の制御具は抑えきれない魔力でガタガタ震えている。
「ひぃ!?」
扉を軽く叩いてみるがびくともしなかった。
「……シャルル、君には金属でも何でも斬れるって能力はないのかい?」
「……魔法だったら斬れた」
残念ながら、聖剣も普通の剣と同じように固い金属は斬れないようだ。
クリスは火魔法を使い、扉を溶かすことにした。
熱気にやられないように自身の周囲に障壁を張り、慎重に扉を溶かしていく。
そして扉の真ん中に向こう側へ通じる穴が開くと、「ぐぇぇぇー」「ごぉぉぉぉー」「ばりゃぁぁぁー」などの異音としか思えない鳴き声が聞こえた。
「少なくとも、魔物たちはこの向こうにいるみたいだね」
クリスは作業を続け、ようやく鍵が壊れたことを確認すると、扉を押した。
ギィーと音を立てながら、重たい扉は開く。
扉の向こうの光景に、クリスは目を見開いて硬直した。
そこには様々な魔物が鳥かごのような檻に入れられていた。
それだけでなく、その魔物全てにラヌルと同じような人間の部位が生えている。
「なんで、こんな……」
絶句するクリスに場違いな明るい声が掛けられた。
「おや、クリス殿ではありませんか」
部屋の奥、檻に囲まれてこちらを向いて立っていたのは、満面の笑みを顔に張り付けたイリエだった。
「イリエ、これはどういうことだい?」
クリスはイリエを睨み付けながら問う。
いつでも戦えるように全身に力を入れながら。
一方、イリエはリラックスした状態で手を拡げる。
「見ての通りですよ! すばらしいと思いませんか?」
「すばらしい? 何がだい?」
眉をひそめるクリスにイリエは顔を向ける。
その目は酔ったように恍惚としていた。
「魔物と人間の融合ですよ! 力ある魔物と知ある人間、この2つが合わさったのです! これをすばらしいと言わざるして何を言うのでしょう?」
クリスの眉間のシワが深くなった。
「悪いけど、全くわからないね」
イリエの肩がガックリと下がり、うつむく。
その目は深い闇に覆われていた。
「どうして……わからないんだ……あいつらも……あの連中も……」
ブツブツ呟いたあと、いきなりガバッと顔をあげた。
その瞳にはもとの恍惚とした狂気が宿っている。
「この魔物たちはね、すごいんですよ!
普通の魔物よりも能力が強化されていますし、何より、人語を理解し文字が読めるのですよ!」
「文字が読める……!」
クリスの目が見開かれる。
夕食後、他愛ない話をした少年の言葉が思い出される。
『文字を学ぶなんてこと、ここじゃなきゃできませんでした』
嫌な予感で心臓の鼓動がうるさい。
そんなことも知らず、イリエは目を輝かせて演説を続ける。
「そうです! 私が作り出した魔物たちは文字を解するんです!
あんなものたちに、苦労して教えたかいがありました」
クリスは頭が真っ白になる。
気がついたら、クリスは魔力の球をイリエに放っていた。
「あ、危ないですね……」
魔力の球はイリエの脇に逸れていた。
クリスは頭を振り、冷静になろうとするがうまくいかない。
「……お前、何をしたんだ?」
思考を阻害するような激情にクリスはくらくらする。
頭が焼けるように熱いのに、声は場が凍るほど冷たい。
「は?」
イリエはポカンと口を開ける。
「お前、何をしたんだって聞いているんだ!」
クリスの魔力が地下室で膨れあがる。
クリスの金色の瞳は怒りで爛々と輝いている。
腕と右足の制御具は抑えきれない魔力でガタガタ震えている。
「ひぃ!?」
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