その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、選択する10

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 下りたところに重厚な金属でできた扉があり、鍵が掛けられている。
 扉を軽く叩いてみるがびくともしなかった。

「……シャルル、君には金属でも何でも斬れるって能力はないのかい?」
「……魔法だったら斬れた」

 残念ながら、聖剣も普通の剣と同じように固い金属は斬れないようだ。
 クリスは火魔法を使い、扉を溶かすことにした。
 熱気にやられないように自身の周囲に障壁を張り、慎重に扉を溶かしていく。
 そして扉の真ん中に向こう側へ通じる穴が開くと、「ぐぇぇぇー」「ごぉぉぉぉー」「ばりゃぁぁぁー」などの異音としか思えない鳴き声が聞こえた。

「少なくとも、魔物たちはこの向こうにいるみたいだね」

 クリスは作業を続け、ようやく鍵が壊れたことを確認すると、扉を押した。
 ギィーと音を立てながら、重たい扉は開く。

 扉の向こうの光景に、クリスは目を見開いて硬直した。
 そこには様々な魔物が鳥かごのような檻に入れられていた。
 それだけでなく、その魔物全てにラヌルと同じような人間の部位が生えている。

「なんで、こんな……」

 絶句するクリスに場違いな明るい声が掛けられた。

「おや、クリス殿ではありませんか」

 部屋の奥、檻に囲まれてこちらを向いて立っていたのは、満面の笑みを顔に張り付けたイリエだった。

「イリエ、これはどういうことだい?」

 クリスはイリエを睨み付けながら問う。
 いつでも戦えるように全身に力を入れながら。
 一方、イリエはリラックスした状態で手を拡げる。

「見ての通りですよ! すばらしいと思いませんか?」
「すばらしい? 何がだい?」

 眉をひそめるクリスにイリエは顔を向ける。
 その目は酔ったように恍惚としていた。

「魔物と人間の融合ですよ! 力ある魔物と知ある人間、この2つが合わさったのです! これをすばらしいと言わざるして何を言うのでしょう?」

 クリスの眉間のシワが深くなった。

「悪いけど、全くわからないね」

 イリエの肩がガックリと下がり、うつむく。
 その目は深い闇に覆われていた。

「どうして……わからないんだ……あいつらも……あの連中も……」

 ブツブツ呟いたあと、いきなりガバッと顔をあげた。
 その瞳にはもとの恍惚とした狂気が宿っている。

「この魔物たちはね、すごいんですよ!
 普通の魔物よりも能力が強化されていますし、何より、人語を理解し文字が読めるのですよ!」
……!」

 クリスの目が見開かれる。
 夕食後、他愛ない話をした少年の言葉が思い出される。

『文字を学ぶなんてこと、ここじゃなきゃできませんでした』

 嫌な予感で心臓の鼓動がうるさい。
 そんなことも知らず、イリエは目を輝かせて演説を続ける。

「そうです! 私が作り出した魔物たちは文字を解するんです!
 に、苦労して教えたかいがありました」

 クリスは頭が真っ白になる。
 気がついたら、クリスは魔力の球をイリエに放っていた。

「あ、危ないですね……」

 魔力の球はイリエの脇に逸れていた。
 クリスは頭を振り、冷静になろうとするがうまくいかない。

「……お前、何をしたんだ?」

 思考を阻害するような激情にクリスはくらくらする。
 頭が焼けるように熱いのに、声は場が凍るほど冷たい。

「は?」

 イリエはポカンと口を開ける。

「お前、何をしたんだって聞いているんだ!」

 クリスの魔力が地下室で膨れあがる。
 クリスの金色の瞳は怒りで爛々と輝いている。
 腕と右足の制御具は抑えきれない魔力でガタガタ震えている。

「ひぃ!?」
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