その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、共闘する18

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 頑なに考えを変えない幹部の女に、クリスは唇を噛む。
 そんなクリスを見て、幹部の女は目を細める。

「あなたは優しいのね。……あなたが私に希望を持たせようとしてくれるのはわかる。けど、長いこと身に染み込んだ考えはなかなか変わらないのよ」
「……わかった。でも、僕も自分の考えを変えるつもりはないよ。魔族だって安心して暮らせる方法を探してみせる!」

 真っ直ぐなクリスの視線に幹部の女は眩しそうにする。

「そう。頑張ってね……」

 幹部の女は大して期待していないように淡く微笑んだ。

「……それで、僕以外で違う世界から召喚された魔族の男って誰だい?」

 クリスは話題を変えた。これも気になっていたのである。

「あの男?  ……確か、マイクって名前よ」

 幹部の女から同じ世界から来た魔族の名前が出た時、クリスは目を見開き幹部の女に迫った。

「それって本当かい!? 本当にマイクなのかい!?」

 クリスの驚きように、幹部の女は呆気に取られる。

「え、ええ。話したのはずいぶん前だけど、確かよ」
「そうなんだ……。マイクがこの世界に……」
「ねぇ、あなたはマイクとどういう関係なの?」

 ただならぬ様子のクリスに不審を抱き、幹部の女は尋ねた。

「マイクは僕の友達だよ。唯一同い年の」
「ええ!?……ってことは、あなたがマイクが言っていた友人なの!?」
「マイクが言っていた友人?」

 幹部の女が気になることを言っていたので、クリスは繰り返した。

「ずっと前にマイクが言っていたの。魔王様を倒せるとしたら同い年の友人ぐらいだろうって」

 そしてクリスを真っ直ぐ見つめる。

「あなたがその友人なら、確かに可能かもね。けど、なんでこの世界に……」

 クリスは簡単にこの世界に来た経緯を話す。
 すると、幹部の女は目を丸くした。

「あなたが、勇者!?」
「いや、違う」

 反射的に否定するが、幹部の女は一瞬訝しそうにしただけで深く追求はしなかった。

「……まぁ、いいわ。旧友に会えて喜ぶのもいいけど、マイクに会っても協力は期待しない方がいいわよ」
「なぜだい?」

 首を傾げるクリスに、幹部の女は遠い目をしてため息をつく。

「私がマイクと彼の国の話したのは彼が召喚されてすぐのことよ。つまり、100年も前なの」
「100年……」
「そんな長い時間が経っているなら、状況は変わるわよ。彼、今は魔王に服従しているわ」

 クリスは絶句する。確かに100年は魔族にとっても短くはないし、大きく何かが変わってもおかしくはない。だが、それでもショックだった。

「なんで、マイクが……」
「元の世界に帰れないことがショックだったみたいね。魔王様以外にこの世界で頼れる者はいなかったし」

 確かにこの世界は魔族にとって厳しいところがある。クリスのように聖剣を持ってさえ、他の種族に受け入れてもらえるのは難しいのだから。

「マイクはずっと帰る方法を探していたわ。けど、全部徒労に終わった。彼を味方につけたいなら、帰る手段を示すことね」
「……あるよ」

 ポツリと呟かれた言葉に幹部の女は目を見開く。

「え……?」
「帰る方法ならあるよ」

 幹部の女は口をあんぐり開けた。

「え、ちょっと、マイクが100年かかっても見つからなかったのよ!?」
「だろうね。それは僕しかできない方法なんだから」
「え、え!?」
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