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魔王、共闘する22
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――クリスが泣き止み、再び魔王の城を目指して旅立った日から数日後。
ツバイは魔王の住む古城へたどり着いていた。
クリスたちのように歩いて進めばさらに時間はかかるが、ツバイはほとんど飛行魔法を使って空を駆けたため、この日数で済んだ。
ツバイが大広間に行くと、魔王は玉座に片肘を付けて座っていた。
魔王は黒いマントと黒い仮面をつけた金色の髪の男で、素顔を見た者は少ない。ツバイも魔王の顔を見たことがなかった。
「何の用だ?」
仮面に開いた2つの穴から赤い瞳がギロリとツバイを睨む。
「ゆ、勇者についてわかったことがあるので、報告します!」
緊張でツバイの額に汗が浮かぶ。
「勇者? お前たちはエルフの村に行ったのではなかったか?」
「その村に聖剣に選ばれた勇者がいたのです!」
魔王は目を細めてツバイを睨んだ。
「そしてお前は勇者がいたのにも関わらず、倒しもせずに逃げ帰ってきたのか?」
ツバイは硬直する。確かに天敵である勇者を目前にしてツバイは逃亡していたからだ。
「こ、こここれには訳が……」
「……まぁいい、それは許そう。
それで、勇者についてわかったこととは何だ?」
ツバイはあからさまにほっとする。そして息を吸い込むと、顔を上げて魔王をしっかり見る。
「今回の勇者は異世界から来た魔族なのです!」
ツバイの言葉を聞いた瞬間、魔王の頭が上がり、目を見開いて彼を凝視する。
そして少し顔を伏せた。
「ま、魔王様?」
ツバイは何か失言しただろうかと心配になった。そして、伏せた魔王の口から「ククク……」と笑い声が聞こえて目を見開く。
魔王が頭をガバッと上げた。
「はーはっはっ! 面白い! なんてふざけた運命だ! …………の魔王に魔族の勇者とはな!」
後半は小声で聞き取れなかったが、とにかく魔王の機嫌を損ねなかったことにツバイは安堵する。
「それで、そやつをどうしましょうか?」
「ふむ、そうだな……」
魔王は手を顎に当てて考える。仮面から覗く目には好奇心と嗜虐心が混じっていた。
「会ってみたいが、弱い奴だとつまらん。マイクと戦わせてみるか」
「マイクですか……」
ツバイは苦虫を噛み潰したような顔をする。彼は異世界から来たこの魔族が気にくわなかった。
「ああ。奴すら退けられない者に用はないからな」
ツバイは唖然とする。魔王はそう言うが、マイクはここでは魔王を除けば1、2を争う実力の持ち主だ。そのマイクを切り札としてではなく相手の実力を量るために使うというのか。
「さて、次の勇者こそ私を楽しませてくれるだろうか?」
そんなツバイの心中を知ることもなく、魔王は愉快そうに呟くのだった。
ツバイは魔王の住む古城へたどり着いていた。
クリスたちのように歩いて進めばさらに時間はかかるが、ツバイはほとんど飛行魔法を使って空を駆けたため、この日数で済んだ。
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魔王は黒いマントと黒い仮面をつけた金色の髪の男で、素顔を見た者は少ない。ツバイも魔王の顔を見たことがなかった。
「何の用だ?」
仮面に開いた2つの穴から赤い瞳がギロリとツバイを睨む。
「ゆ、勇者についてわかったことがあるので、報告します!」
緊張でツバイの額に汗が浮かぶ。
「勇者? お前たちはエルフの村に行ったのではなかったか?」
「その村に聖剣に選ばれた勇者がいたのです!」
魔王は目を細めてツバイを睨んだ。
「そしてお前は勇者がいたのにも関わらず、倒しもせずに逃げ帰ってきたのか?」
ツバイは硬直する。確かに天敵である勇者を目前にしてツバイは逃亡していたからだ。
「こ、こここれには訳が……」
「……まぁいい、それは許そう。
それで、勇者についてわかったこととは何だ?」
ツバイはあからさまにほっとする。そして息を吸い込むと、顔を上げて魔王をしっかり見る。
「今回の勇者は異世界から来た魔族なのです!」
ツバイの言葉を聞いた瞬間、魔王の頭が上がり、目を見開いて彼を凝視する。
そして少し顔を伏せた。
「ま、魔王様?」
ツバイは何か失言しただろうかと心配になった。そして、伏せた魔王の口から「ククク……」と笑い声が聞こえて目を見開く。
魔王が頭をガバッと上げた。
「はーはっはっ! 面白い! なんてふざけた運命だ! …………の魔王に魔族の勇者とはな!」
後半は小声で聞き取れなかったが、とにかく魔王の機嫌を損ねなかったことにツバイは安堵する。
「それで、そやつをどうしましょうか?」
「ふむ、そうだな……」
魔王は手を顎に当てて考える。仮面から覗く目には好奇心と嗜虐心が混じっていた。
「会ってみたいが、弱い奴だとつまらん。マイクと戦わせてみるか」
「マイクですか……」
ツバイは苦虫を噛み潰したような顔をする。彼は異世界から来たこの魔族が気にくわなかった。
「ああ。奴すら退けられない者に用はないからな」
ツバイは唖然とする。魔王はそう言うが、マイクはここでは魔王を除けば1、2を争う実力の持ち主だ。そのマイクを切り札としてではなく相手の実力を量るために使うというのか。
「さて、次の勇者こそ私を楽しませてくれるだろうか?」
そんなツバイの心中を知ることもなく、魔王は愉快そうに呟くのだった。
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