1歳児天使の異世界生活!

春爛漫

文字の大きさ
7 / 70

教会からの迎え

しおりを挟む
「サチちゃん、ちょっとの間、食堂にいてね」

 お昼寝部屋に向かおうとしたら、マリー先生に止められた。
 隣を歩いていたマグちゃんと別れて食堂の椅子に座る。

 1人で待っているとマリー先生の硬い声が聞こえた。

「サチちゃん、今から行く場所では大人しくしていてね。うるさくしては駄目よ?」

「はい」

 座っていた椅子から下ろしてもらってマリー先生と歩いて行くと、見知った道に出た。
 ここは孤児院に来た時に通った道じゃないか? てことは院長室に行くってことか。
 何かあったのかな?

 ◇◇◇

 【院長】

 朝食後の孤児院。

 孤児院の受付係の者が院長に報告に来た。

「院長! 大司教様と司教様たちが院長に用事があると、正装でいらしています! どうしますか?」

 大司教様と司教様達が、正装?

「あなたはちょっと落ち着きなさい。正装で来たとのことはよほどの用事があるのでしょう。お通ししなさい」

「はい!わかりました!」

 司教に大司教が孤児院に何の用事かしら? 教会と孤児院は隣なのだから気楽にこればいいものを。
 何だか嫌な予感がするわ。
 事前連絡も無しにくるなんて初めてじゃないかしら。

 トントントン

「院長、ご案内いたしました」

「入っていいですよ!」

 院長室に白色の服に、金と銀で豪華に刺繍された服を着た大司教様が入って来た。

「院長、朝からすまぬな。教会で神託があったのだ。それで慌てて孤児院まで来てしまった」

「ようこそ、おかけになってください」

 孤児院長は立ったまま大司教様とそのお連れを出迎えた。

「おお、すまんの。神託で教会全体が湧き立っておるのだ。もちろん私もな」

 院長と大司教が2人共席についた所で要件に入る。

「それでご用件はなんでございましょうか?」

「孤児院に居るサチ・スメラギ様の身柄を教会に移して欲しい」

 院長の目元がぴくりと動く。

「サチは家族の行方がわからない、ただの幼児ですが、渡して欲しいと言われて子供を孤児院から出すのは、人を売買するのと同じですわ。ちゃんとあの子の身元保証人だという証拠を持ってきてもらわないことには孤児院から出せません。子供を守るのが孤児院です」

 大司教様が「おっと、うっかり」という顔をした。

「おお、すまない。気持ちが落ち着かずに正規の手続きもせずに、人1人渡して貰おうなどと浅はかなことをしてしまった。
 今から警備隊の本館と領主館に行って許しをもらってくる。
 また、午後から伺ってもよろしいですかな?」

「正規の手続きをふんでいただけるなら構いません。午後からお待ちしています」

 そう告げると、辞去の挨拶をして大司教と司教達が出て行った。

 警備隊と領主様に許しを貰いに行くと言っていた。
 大司教様と司教様が正装で行けば断られないだろう。
 『神託』と言っていたのも気になる。
 あれは大司教様がぽろりと溢してしまった言葉だろう。
 いつもの大司教様とどこか違った。
 ……うかれているというか。

 昨日来たばかりの子供サチ。
 あなたに何が降りかかろうとしているのかしら?
 可愛すぎたり綺麗すぎたりする子はどこか不幸になりやすいわ。
 サチ、あなたは可愛すぎたのかしら。

 ◇◇◇

 ー午後ー

 大司教様とその御付きがぞろぞろと孤児院にやって来た。

「領主様と警備隊の許可を得てきましたぞ。見て確認をしてくだされ」

 書類が2枚、院長に差し出される。
 院長は間違いがないか隅から隅まで読んでいく。
 不備はないわ。

「問題ありません。マリー、サチちゃんを呼んできてくれるかしら?」

「わかりました」

 マリーが硬い声を出して出て行った。
 新しく来た可愛い子供が権力者に取られるのが嫌なのだろう。

「大司教様が、なぜサチちゃんを望むのか伺ってもよろしいですか?」

「ふむ、教会も領主様もご存じのことですしな。院長だけならばお話しましょう。ですが他言無用ですよ。その覚悟がお有りですかな?」

「わかりました。他言無用にして私の心の中だけに留めておきます」

「よろしい。今朝の礼拝で神託が私に下されましてな。創造神様からです。恐れ多すぎて倒れてしまいました。怪我はすぐに治しましたがな。それから神のマントまで祭壇に創造神様が降ろしてくださいまして、神託は『孤児院にいる創造神の使徒サチ・スメラギを自由に行動出来るようにはからえ』でした。
 サチ・スメラギ様は創造神様の使徒だったのですよ! これが興奮せずにいられるでしょうか? いや、いられません! それで先走って朝に訪問してご迷惑をかけました。お詫びします」

 興奮気味に話す大司教様に、孤児院長の指先が震える。
 身体も揺れてるんじゃないかしら。
 孤児院から創造神様の使徒が現れるなんて。
 サチちゃんはどんな運命を与えられたのかしら? 大変なことだわ。

「お、お詫びはいりませんわ。教会あっての孤児院ですもの。線引きはいたしますけども。教会の慶事、お慶びいたします」

「院長ならそう言ってくれると思いましたよ。本当におめでたい! ああ、早くサチ・スメラギ様にお会いしたい!」

 トントントン

「院長、サチをお連れしました」

「入りなさい!」

 ああ、可愛いサチ。
 昨日この腕に抱き上げたのが嘘のようだわ。
 あなたに過酷な運命が降りかかりませんように。

 扉を開けて入って来たマリーとサチに、大司教と護衛達がサチに向かってザッと跪く。
 マリーとサチはビクッと驚いた。

「サチ・スメラギ様。お会い出来て光栄です。尊きお方から貴女のことを自由にせよとのお言葉を賜りました。お迎え出来る名誉に心が震えております」

 大司教様がサチをガン見して話しかけた。
 そこで少し混乱しているマリーとサチに院長が話しかける。

「サチちゃん。今から説明するから怖がらなくてもいいのよ。マリーは持ち場に戻りなさい。
 ああ、サチちゃんは今日で孤児院から出て行くからお別れをしたければしなさい」

 急なことでマリーも動揺しているけれど子供を見送るのは初めてでは無いわ。
 サチちゃんを抱きしめてお別れを言っている。
 あら、サチちゃんが何かマリーに渡したわ。
 何かしら。
 マリーの驚いた顔。
 サチちゃんにお礼を言って出て行ったわ。

 それではサチちゃんに話しましょうか。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……

ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。  そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。 ※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。 ※残酷描写は保険です。 ※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆1/19〜1/27まで、予約投稿を1話ずつ行います。 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】 千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。 月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。 気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。 代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。 けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい…… 最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。 ※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。

気弱令嬢の悪役令嬢化計画

みおな
ファンタジー
 事故で死んだ私が転生した先は、前世の小説の世界?  しかも、婚約者に不当に扱われても、家族から冷たくされても、反論ひとつ出来ない気弱令嬢?  いやいやいや。 そんなことだから、冤罪で処刑されるんでしょ!  せっかく生まれ変わったんだから、処刑ルートなんて真っ平ごめん。  屑な婚約者も冷たい家族も要らないと思っていたのに・・・?

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

処理中です...