1歳児天使の異世界生活!

春爛漫

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事件の始まり

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 朝ラズに起こされた。
 よく寝た。
 起き上がると宝石の輝きが見える。
 うっとり。

 ラズに強制抱っこされた。
 ああ、宝石が~。

 部屋から出て、お家の中で朝の準備をしてから、宿屋の借りている部屋に出る。
 みんな出たら、サチがおうちを収納にしまって、1階の食堂に行く。
 泊まりの客だけなのか、中は半分ほど席が埋まっていたが、昨日ほど混んでいなかった。

 食堂で忙しく働いている宿の人にカイザーが朝食を頼む。

「食事を4人分頼む!」

「はい! 2階のお客様ですね。お待ちします」

 ラズの膝の上に抱っこされて待っていたら、パンと野菜と肉の炒め物とスープが出てきた。
 私の分は細かく刻んである。
 嬉しい。

 
 みんなでいただく。
 ラズも食事をしないといけないのでサチは隣の席に移動して能力を使いカトラリーを動かして料理を食べる。
 塩だけの味つけだけど、絶妙にうまい。
 料理の腕が大分いいな。
 私のパンにはジャムがつけてあった。
 嬉しいサービスだ。
 控えめな甘さだけど酸味のないジャムだ。
 サチの小さな口でもどんどんパンが食べられる。

 野菜も美味しい。
 この近くで育てているのだろうか? シャキシャキしてる。
 肉は昨日の肉だ。
 なんて名前だっけ? トドヤン、だったかな? 美味しい。
 最後にスープを飲む。
 口の中の油が流されて胃が落ち着く。

 ほぅ、と満足の息を吐き出す。
 ここは当たりの宿だ。
 頭の中の地図にマーキング出来ないかな? 出来た! また来よう。

 食べ終えた食器はそのままでみんなで立ち上がり、サチはラズに抱っこされて宿の受付まで行く。

「鍵、返すな。ありがとう」
「ありがとうごじゃいましゅた!」

「はい! こちらこそ、ありがとうございました! また、お越しください!」

 名前見た時はどんな宿かと思ったけど、良い宿で良かった。


 門を出てサチの収納から車を出す。
 みんな乗り込みラズが私をチャイルドシートに乗せてくれる。
 それを見届けてから車が発進する。
 神聖教国で過ごす最初の町は良い印象で終わった。

 サチの身分証が冒険者ギルド・商業ギルド・教会の身分証の3つになったから、神聖教国は教会の身分証を使うからいいとして、他の国に行ったら商業ギルド証を出そう。
 1番平凡で、サチの身バレがしにくく騒がれにくい。

 私はストローマグで麦茶を飲む。
 美味しい。
 やっぱり日本人は麦茶だわー。
 今は天使だけど。
 ラズがほっこりした顔で見てくる。
 私がストローマグを使うとこんな顔で見られる。
 ラズはいい父親になりそうだよ。

 カイザーが運転して車で魔物を吹っ飛ばしたりして、車は進んで行く。
 倒した魔物はサチの収納の中に仕舞う。
 地味に時間がかかるが、急ぐ旅でも無いのでのんびりでいいのだ。

 サチは何か物足りないと思い、車内に音楽をかける。
 みんないきなりした音にビクッとしていた。
 その反応に私が笑うと「サチ様の仕業か」と納得された。
 車は本当にサチのイメージのまま出来ている。
 あの人が生きていた時のように。
 懐かしい音楽を聴きながら車は走る。

 ふんふん鼻歌を歌っていたら、カイザーが速度を緩めたようだ。
 声に緊張が走る。

「サチ様、ちょっと緊急事態だ。馬車が潰されている。見てくるから待っていてくれ」

「わかりましゅた」

 車が止まり、カイザーとエレナが車から降りる。
 ラズと2人で車内に残った。
 さっきまで楽しかった音楽が物悲しく流れる。

「まもにょでしゅかにぇ?」

 サチが疑問に思いラズに問いかける。

「そうかもしれませんし、そうじゃないかもしれません」

 ラズにしては曖昧な表現だ。
 どういうことだろう?

「サチ様、人の死体もあるが、全て収納に入れてくれるか? 多分だが事件だ。次の街で通報する」

 ラズがサチのベルトを外してくれる。
 飛んで車の外に出ると、嫌な匂いがする。
 血の匂い。

 壊された馬車と死んだ人が3人、親子だろう。
 成人した男女に7歳くらいの女の子。
 カイザーとエレナが死体の身なりを整えてくれたのだろうが、匂いは隠せない。
 これは女性が乱暴された匂いだ。
 とても濃く独特の臭いがする。
 それに母親と子供の女の子の顔がぶよぶよに腫れている。
 強く何度も叩かれたか殴られたのだろう。

 それを見たサチに猛烈な怒りが湧いてきた。
 犯人を許さない! 絶対に! 女と子供の敵だ!
 父親は無念だったことだろう。

 サチは手を合わせてから収納に全てを収めた。
 犯罪の証拠は持って帰るからね。

 まさか、3人は私が気がついていると思って無いだろう。
 私は自分の子供も成人した、いい大人だったんだ。
 性の知識ぐらいある。

 まだ新しく、死んでからそれほど時間がたっていない死体のように見えた。
 馬車の進行方向から見ても私達が今から行く街に犯人がいるだろう。

 〈索敵よ! 犯人達を探せ!〉

 サチの頭の中の地図に赤点が8つ見えた。
 街の中でバラけている。
 これで絶対に見失わない。

 全員で車内に戻ると、サチはチャイルドシートに座って麦茶を静かに飲む。
 許さないからね。
 敵、かたきは取るから。
 安らかに眠れ。


 車内は音楽の音だけ聞こえて、みんな無言だ。
 みんなどんな目的で犯行が行われたかは知らないが、死んだ一家が殺される前にどんな扱いを開けたのかを知っている。

 父親が惨たらしく殺されていたのも、母親が乱暴されていたのも許せないが、小学校に入ったばかりくらいの年齢の子供が乱暴されていたのが、最も許せない。

 創造神様、今回だけは許せないんです。
 人の行いにもとる行動を取ります。
 許してください。
 私は『復讐をします』

【許そう、サチよ。犯人を八つ裂きにするのだ】

 創造神様のお声が、神託が聞こえた。
 私だけだろうか? 車を運転していたカイザーが車を止めた。

「今の聞こえた、か?」

 慎重に緊張した声を出した。
 カイザーの声はかすれている。

「聞こえたわ。サチ様を許すって、犯人を八つ裂きにしろって」

 エレナが真面目な顔で同意する。
 「誰が」とは言わないが、サチと関係してこんな事ができるモノは限られている。
 車の中は緊迫した空気だ。

 ラズがサチに詰め寄った。

「サチ様! 危ない事をなさってはいけません! 我々が後始末をしますので!」

 ラズが慌てているが、私は手を出して静める。

「わたちはしってましゅ。おんなのひとが、りゃんぼうしゃれたにょを。
 しょうじょうしんしゃまは、わたちが、はんにんをやちゅじゃきにしても、ゆりゅちてくりぇましゅ。こりぇはゆじゅりぇましぇん」

 3人が息を呑んだ。
 母親と娘が乱暴されていたのをサチ様に知られていた。
 何故? どうしてわかったのか? 創造神様の許しがあったと言うのなら、先に願ったのはサチ様では?

 みんな言いたい事を飲み込んで、静かに車が走り出す。
 ラズは手が震えてきた。
 サチ様がいつものサチ様じゃない。
 神託を聞いたカイザーとエレナも同じ気持ちだった。
 『恐れ多い』
 言葉のとおりだ。
 恐ろしい。
 このまま街についてもいいんだろうか?
 犯人は許せないが、今は得体の知れないサチの怒りの方が恐ろしい。

 サチに対してこんな事を思ったのは、まんな初めてだった。

 車は走る。
 みんなの複雑な気持ちを乗せて。
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