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ゴトゴトと馬車に揺られ、フィミリアの隣に座ったミーナがずっとフィミリアを抱き締めていてくれている。
その姿をフィミリアの父親フレディは、苦しそうに表情を歪めて見ている。
どうしてこんな事が。
フレディは自分の額に手のひらを当てて俯く。
まるで謀ったかのようにあの場所、あのタイミングでフィミリアを含む複数の令嬢が拐われていた。
あのホールで騒いでいた家の者達の顔を見ると、まだ婚約者も居ないような若い令嬢が居る家や、婚約を解消した家の者だったように思う。
(……まさか、それを把握していたのか?)
フレディはその考えに思い当たりぞっとする。
それならば、始めから今回の誘拐は予め計画されていた物のようだ。
そうでなければ、あのタイミングで短時間で拐えない。
フレディはふ、とエイブリットがあの時零していた言葉を何故か思い出してしまった。
「いい商品が手に入ったから、国へ戻る」と確かに言っていた。
あのタイミングでその言葉が出て来たのだ。
「──隣の国の人間の仕業かっ」
「旦那様?」
低く呻くように呟いたフレディの言葉に反応したミアが不安そうな顔で話し掛けてくる。
フレディの言葉に反応したのか、フィミリアものろのろとフレディに視線を向けてきている。
「あ、ああ。すまない、気にしないで大丈夫だ、フィミリア」
フレディははっとして、フィミリアに微笑み掛けるとそっとフィミリアの頭を優しく撫でてやる。
「まだ邸に到着するまで時間が掛かるから、寝ていなさい」
「はい、お父様」
ゆっくり前髪を撫でてやりながら、ミアに視線をやる。
フレディの視線にミアも頷くと、そっとフィミリアから体を離して横にずれると、自分の膝へフィミリアの体を倒すように促す。
「さあ、フィミリアお嬢様。ミアの膝で申し訳ないですが、少し横になって下さい」
「……ん、ごめんねミア」
いえいえ!と務めて明るく対応してくれるミアにフレディは感謝する。
ここに居るのがミアではなかったら、フィミリアはまだ取り乱した状態のままだったかもしれない。
フレディは、馬車の窓から外の景色を眺めながら、ぎゅう、と拳を握りしめ邸までの時間を過ごした。
そして、翌日。
昨夜の舞踏会で発生した事件の詳細を確認しに、近衛騎士団がハーツウィル子爵邸へと赴いた。
フレディが迎え入れると、見知った顔が先頭に立っており、不快そうに表情を歪めた。
「──サミエル君……何故君が?」
「私、があの事件で拐われたご令嬢方を発見した為です……フィミリアは、大丈夫ですか?」
気まずそうにサミエルはフレディに視線を向けると、フィミリアの名前を出す。
サミエルから呼ばれた自分の娘の名前にフレディはぴくり、と不快そうに片眉を上げると唇を開く。
「──もう、サミエル君とフィミリアは婚約者ではなくなる。令嬢を呼び捨てで呼ばない方がいい。私も……今後は君をバーデンウィット卿とお呼びしよう」
「──っ、分かり、ました」
どうぞ、とフレディが声を掛け、サミエルの後ろにいる数名の騎士達も邸の中に通す。
「フィミリアは、まだ私以外の男性と会う事に恐怖を感じる。申し訳ないが、今日の所は当人と合わせる事は出来ない」
「っ、了解致しました」
「あの時、フィミリアの側に最後まで一緒にいた侍女のミアも呼んでいるので、同席させよう」
邸の中へ入り、応接室の扉の前まで辿り着くと、フレディは扉を開ける。
「どうぞ、お入り下さい。私も昨夜、あの事件について不可解な点があるから報告しておきたい」
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