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騎士達を室内へと通すとソファへ座るように促す。
フレディは自分もソファへと腰を下ろすと、近くに控えていたミアを呼び、自分の隣へと座らせた。
全員がソファに座り、一息着いたのを確認するとサミエルがフレディに視線を向ける。
サミエルの視線を受け、フレディは頷くとそれを見たサミエルが話し出す。
「──昨日、の……誘拐犯達の目的を割らせた所……やはり、我が国の爵位の低い未婚の女性、や婚約が解消や破棄、された女性達に狙いを定め、捕まえて隣国へ売ろうとしていたらしいです」
重苦しく唇を開いたサミエルの言葉に、フレディはぐっと拳を握り締める。
それは、つまり拐われ売られたとしても爵位の低く何の後ろ盾もない家は泣き寝入りするしかない、と言う事だ。
これが婚約者のいる女性であれば相手の家がある。
相手の家の爵位が高ければ大事になる。
だからこそ、誘拐犯は離縁された女性や、未婚の女性、婚約解消や破棄をされた立場の弱い女性に狙いを定め拐ったのだろう。
「──拐われた他の女性達は大丈夫なのか?」
フレディがそうサミエルに問いかけると、サミエルは無言で頷く。
「皆さん、今はご自宅で療養しております。国としても、聖女様が参加された場での誘拐未遂事件が発生したので、この件に関しましては本腰を入れて調査と、被害に合われた方々を手厚く保護するように、と仰せつかっておりますので……」
「──それなら、良かった。フィミリアも他の女性達を心配していたからな……」
フレディはほっとしたようにソファに背中を預けると、ミアに視線を向ける。
ミアに視線を向けたフレディに倣い、サミエルもミアに視線を移すと、当日の事について話して貰おうと唇を開く。
「それで──彼女、フィミっ、……ハーツウィル子爵令嬢の拐われたタイミングを教えて欲しい……」
「分かりました……。あれは、そうですね……フィミリアお嬢様の側に付き、少しゆっくりとしている最中です。聖女様が夜会にご登場された瞬間、会場から歓声が上がり、私も一瞬そちらの方向に意識が持っていかれてしまい、数秒程フィミリアお嬢様から視線を外してしまったのです。それで、聖女様が来られたのか、と分かりフィミリアお嬢様の方へ視線を戻した際には既に──」
ミアから聞かされた内容に、サミエルを含む他の騎士達も戸惑いを隠せないように驚きの表情を浮かべる。
「そんな、数秒の内に犯行に及ぶ等、やはり手練の……」
「歓声が上がる事が分かっていて、その瞬間に狙いを定めて居たのか……」
騎士達が呟いている中、ミアは自分の言葉を続ける。
「その後、フィミリアお嬢様の姿が見えない事から拐かされたのだと気付き、旦那様がご商談中の部屋に向かい、会場を走りました。会場のフロアからは、恐らくフィミリアお嬢様と同じく拐かされたご令嬢達のご家族の方々が騒いでおられたように感じます」
「ご令嬢達を拐った実行犯は複数居て、その瞬間に狙いを定めて実行に移した、と言う事か……」
ミアの言葉に、サミエルが考え込むように自分の顎に手のひらを当てて視線を下に向ける。
「そうすると、聖女様が入場される時刻が分かっていた、と言う事……聖女様の行動スケジュールを把握していたと言う事から内部から情報を漏らしていた者がいそうだな……」
「そうだな──そして、ミアが来るまで私は隣国の商人と商談を行っていたんだが……この騒ぎが起きた時、その商人が"いい商品が手に入った"と言ったんだ」
フレディの言葉に、サミエルは俯いていた顔を勢い良く上げるとフレディに視線を向ける。
「その、商人……名前は何と?」
「エイブリッド、だ。」
サミエルは商人の男の名前を聞くなり自分の部下に「調べるように」と指示を出している。
あのタイミングで商品が手に入った、などどう考えても怪しい発言だ。
フレディは、あの騒動でエイブリッドと離れた後彼等の動向は分からないが、もう一度エイブリッドと接触が出来れば何か分かるかもしれない。
サミエルも考える事は同じだったようで、命じられた部下は了承すると、室内にいる面々に一礼してから部屋を辞する。
退出する騎士をフレディは視界の隅に捉えながら、フレディは唇を開く。
「後は……、バーデンウィット卿と出会って、説明した通り、と言う感じだな」
「──分かりました、ご協力ありがとうございます……今回の件に関しては騎士団のみならず、陛下へ報告し、近衛との合同で調査にあたる可能性がございます。また、ご協力頂く可能性がございますので、その際は宜しくお願い致します」
「ああ、勿論だ」
フレディが頷いたのを見ると、サミエルは「では、そろそろ」と呟くとその場に立ち上がる。
サミエルの部下の騎士達が挨拶をして部屋を退出して行くのをサミエルは見つめながら、フレディに視線を向けてぽつりと呟く。
「もし、もし──……子爵令嬢が私とお会いになってもいい、と仰られましたら……ご連絡下さい」
「ああ。連絡をしよう」
暗い表情で自分にそう告げてくるサミエルに、フレディは頷く。
フレディからの返事を聞いて、幾分か表情を和らげたサミエルは、一礼すると部屋から退出した。
ミアが見送りの為にサミエルを含む騎士達を追って部屋を出ていくのを見届けてフレディはぽつりと呟く。
「──もう、二度と顔を見たくない、と言っていたから会わせるのは無理だろう……」
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