気付くのが遅すぎた

高瀬船

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フレディが王都に向かい三日程。
フレディが邸を出てから幸運にも再び魔獣が子爵領に現れる事は無く、フィミリア達は緊張感を保ちつつ普段と変わらない生活を送っている。

邸に居た第二師団の騎士達はフレディと共にこの土地を離れてしまい、それに合わせてずっと傍に居てくれていたサーシャや、他の女性騎士も王都に戻ってしまった。

フィミリアは今まで賑やかだった邸内がしん、と静かになってしまったように感じて何処か物悲しさを感じてしまう。

「駄目ね……。騎士の方達にも自分の仕事があると言うのに……」

初めから分かっていた事だ。
護衛としてやって来てくれた以上、戻ると言う事は。
それに第二師団騎士の仕事は魔獣の討伐だ。
聖女に付き従い、王国内に発生した魔獣を討伐そして浄化するのが本当の仕事である。

フレディが王都に戻り、母親も忙しく動いている。
そんな母親をお茶に誘う事など出来ず、フィミリアは自分の部屋でお茶をしたり、本を読んだりして過ごしていたが部屋でじっとしていると体を動かしたい気持ちになってしまう。

だが、先日魔獣が出たばかりだ。
邸内の庭を散策する事もまだ危険が伴う。

そのため、フィミリアは自室の窓から見える景色を楽しむだけに留めていたのだが。

──コンコン
と、フィミリアの部屋の扉がノックされ、フィミリアが返事を返すと扉を開けて顔を覗かせたのは母親であるラティシアで。

「フィミリア、少し良いかしら?」
「はい。何かございましたか?」

ラティシアを中に促すと、ラティシアは少し困ったような表情を浮かべていて。
何かあったのだろうか、とフィミリアは不安になる。

「もしかして……付近に魔獣でも……?」

邸に騎士は居るには居るが、それは子爵家が持つ数名の私兵だ。
魔獣討伐に特化した第二師団のような騎士では無い。
魔獣討伐に秀でた騎士では無い事からこんなに不安そうな表情を浮かべているのだろうか、とフィミリアは問う。
だがラティシアは「違うわ」と首を横に振り、困ったように口を開いた。

「ハーツウィル子爵領に大きな湖があるのを覚えている?」
「はい。確か、ここからそんなに離れていないですよね?幼い頃、お父様やお母様と一緒に湖を見に行った記憶があります」
「覚えていたのね……。ええ、実はその湖で数ヶ月前から不思議な事が起きているみたいで……」
「不思議な事、ですか……?」

きょとり、と目を瞬かせるフィミリアにラティシアは「ええ」と頷き言葉を続ける。

「領民からの知らせなのだけど……突然湖が凍ったり……かと思えば周辺の花々が咲くはずが無いのに翌日に突然咲いたり……そんな不思議な事が起きているみたいで……」

ラティシアの言葉にフィミリアは「そんな魔法みたいな事」と言いかけてあっ、と小さく声を出す。

「フィミリアも、同じ事を考えたと思うのだけど……。シオンに聞いてみてくれるかしら?魔法って、そんな不思議な現象を起こす事が出来るのか、って……。ほら、あの子大変な生活をしていたでしょう?だからか……まだ私やお父様には緊張して、体が強ばるの。けど、シオンはフィミリアには雰囲気が柔らかくなるから」

大丈夫?と気遣うような視線を向けてくるラティシアにフィミリアは笑顔で頷く。

「はい、大丈夫です。シオンさんに聞いてみますね」

あれだけ恐怖を感じていた男性にも、今のフィミリアは接する事が出来るようになって来た。
それは自分の家の人間だ、と言う事も大きく作用しているのかもしれないが、家の者では無いシオンとも普通に話す事が出来るようになって来ている。
だからフィミリアは笑顔で快く頷いた。





シオンはこの時間、玄関ホールの隣にある小ホールで鍛錬をしている筈だ、と考えフィミリアは小ホールに向かうため廊下を進む。

第二師団の騎士達がフレディと共に王都に戻ってしまってからも、シオンは騎士達と一緒に行っていた鍛錬を続けている。

もしかしたら元々体を動かす事が好きなのかもしれない。
声を掛けなければシオンはいつまでも、何時間でも鍛錬を続けてしまう。

小ホールの前にやって来たフィミリアは、中からシオンの動く気配を感じて扉をノックし、外から声を掛けた。

「シオンさん。聞きたい事があって。少し良いですか?」

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