15 / 78
15
しおりを挟む午前中の授業が終わる頃合を見計らい、丁度昼食の時間に差し掛かる頃にリスティアナは教室へと戻った。
リスティアナが教室に姿を現すと、ヴィルジールに連れ出されたからか、朝よりも視線が集中し、内心で溜息をつく。
「──リスティアナ! お帰りなさい。今日はどちらに食べに行きましょうか?」
「リスティアナ嬢、ご無事で良かったですわ」
リスティアナが教室内に戻って来ると、直ぐに友人のコリーナとアイリーンがやって来て声を掛けてくれる。
二人の友人にリスティアナはいつも通りに微笑むと、「あら?」と不思議そうに声を上げた。
「そう言えば、ティファ嬢はどちらに? 朝はいらっしゃったわね?」
「ああ、ティファ嬢でしたら授業で分からない部分があったので先生に聞いて来る、と言ってましたわ。遅くなるかもしれないので、待たずに食べて良いと」
「あら、そうですの?」
キョトン、と瞳を瞬かせるリスティアナにコリーナはずいっと顔を近付けると小声でリスティアナにぽつり、と零す。
「ティファ嬢は、良い機会だからと一度学園内の噂がどれ程か、見て回ってくる、と」
「──!」
リスティアナに向かって片目を瞑り、口端を持ち上げるコリーナになるほど、と納得する。
ティファは、ハナム子爵家の令嬢だ。
リスティアナやコリーナは例え一人で廊下を歩いていても目立ってしまう。
家柄も良ければ、美しい容姿の二人はただ立っているだけでも視線を集めてしまうのだが、子爵家のティファは逆に下位貴族の出である為、周囲に溶け込みやすい。
可愛らしい顔立ちをしてはいるが、それでもやはり侯爵家のリスティアナやコリーナ二人の洗練された美しさとは比べようがない。
アイリーンは、伯爵家の令嬢である為ティファよりは目立ってしまう為に、今回はティファが動いているらしかった。
リスティアナは、友人達が自分を手助けしてくれる事に感謝をしつつその感情を表に出してしまわないように気を付けながら唇を開いた。
「それでしたら、参りましょうか。お待たせしてしまってごめんなさい」
利用する事が多い庭園では無く、今日は学園にある食事をとる為に用意されたホールで、リスティアナとコリーナ、アイリーンの三人はゆったりと昼食を楽しんでいた。
食堂、のように使用する事が出来るこのホールは室内の為声が響きやすい。
外よりも学園生の噂話が拾える事を見越して三人はホールにやって来たのだが、学園生も考える事は同じで、リスティアナ達三人の会話に聞き耳を立てているようであった。
聞き耳を立てられている、と分かった上で情報を与えてやる気は無い。
リスティアナ達は午前中の出来事には一切触れずに今流行りの観劇の演目の話や、休日に読んだ本の話など、聞かれても何ら支障の無い事達を話し、談笑しながら昼食を食べ進める。
リスティアナ達が期待していた事を話す気配が無いからだろうか。
聞き耳を立てていた学園生達は次第に聞き耳を辞めて思い思いに自分達が話したい事柄達を話始める。
今度は逆にリスティアナ達は談笑をしながら静かに聞き耳を立てる。
ホール内に居る学園生達はそれぞれ自分達が興味を持つ事柄を話しているが、リスティアナの耳にヴィルジールと、そのお相手のナタリアの名前を出して小声で会話をしている者達の声を捉えてそっと耳をそばだてたのだった。
577
あなたにおすすめの小説
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。
ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。
事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる