【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船

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 タナトス領の先には、リスティアナ達の国と同じ程度の大きさの国がある。
 その国の奥には大きな国土を持つ帝国の大陸が広がっており、昔からその帝国は海に囲まれ、海産物豊かで船があれば他の大陸へと簡単に移動する事が出来るアロースタリーズ国を欲していた。

 だが、帝国とアロースタリーズ国の間にはアロースタリーズと同じ程度の国土を持つ隣国がある為帝国はアロースタリーズに対して手をこまねいている状態が数十年続いている。

 ふ、とリスティアナは何故か突然そのような事を考えてしまい、目の前に居るリオルドに視線を向ける。
 リオルドは、リスティアナへ伝える事を全て伝え終わったのだろう。
 渡り廊下から外に出るこの階段の扉へと手を掛けて、後に続かないリスティアナに不思議そうな表情を浮かべる。

「──リスティアナ嬢?」
「……本当に、数十年間……手をこまねいていたのでしょうか……」
「……何か心配事でも?」

 難しい顔をして俯くリスティアナに、リオルドもさっと表情を真剣な物にしてリスティアナに向き直る。

「──スノーケア卿……スノーケア卿のタナトス領に、万が一他国が攻め込んで来るような事があれば……」
「その際は……詳しくは語れませんが、我がスノーケアの家門の者がいち早く気付き王家へと直ぐに緊急の鳥を飛ばします。見慣れぬ軍の接近には目を光らせておりますので、大分早い段階で察知する事が可能ですので、ご安心下さい」

 その察知能力について、リオルドは詳細を語りはしなかったがそれもそうだろう、とリスティアナも納得する。
 自国の軍事面で要所となるタナトス領の戦闘に関する情報を、例え同じ国内の貴族であろうとも口外はしないだろう。
 どこで、その情報が漏れてしまうか分からぬのだ。

 リスティアナはリオルドに向かって無理矢理笑顔を浮かべると、「そうですわよね」と唇を開く。

「嫌ですわ、最近様々な事が起きて……心配性になってしまったようです」
「──お気持ちは、分かります……。このような騒ぎが起きているのですから……国内が荒れる事に対して過敏になっているのでしょう。……ご友人方と羽を伸ばして過ごしても誰も咎めないと思いますよ」

 気遣うようなリオルドの優しい声に、リスティアナは眉を下げるとお礼を口にした。





 ナタリアが学園生達と迎えの馬車を待ち、暫く。
 ようやっと王家の紋章が着いた馬車が到着し、その馬車からヴィルジールが慌てた様子で降りて来ると、ナタリアに声を掛けた。

「──ナタリア嬢! 体調は? 無事か?」
「殿下、だ、大丈夫です……っ、迎えに来て頂きありがとうございます」

 ヴィルジールは馬車から降りると、ナタリアの元へ急いで向かい、そっと背中に自分の手を添える。

 ヴィルジールがナタリアを心配して、わざわざ王城から迎えに来る光景に、周囲に居た学園生達は仲睦まじく見える二人に「やっぱり、殿下の寵愛は一身にナタリアへと注がれている」と再認識する。

「──皆、ナタリア嬢を気遣ってくれたのだな。感謝する」

 ちらり、とヴィルジールが学園生達へと視線を向けるとそう言葉を掛けて馬車へとナタリアを乗り込ませると自分自身も馬車へと乗り込み、そのまま馬車はゆっくりと動き出した。

「やっぱり、殿下はもうナタリア嬢に心変わりをしたみたいだな……」
「リスティアナ嬢と婚約を解消したのだから、そう言う事だろう。……まあ、殿下が何故あのリスティアナ嬢を捨ててナタリア嬢を選んだか……分からないが……」
「ああ、お前はあの噂知らないのか──」

 馬車が遠ざかるのを眺めながら、学園生達はボソボソと噂話を交わしながら学園の建物へと戻って行った。



 ナタリアの体を気遣っているのだろう。
 馬車はゆっくりと進み、殆ど揺れは感じない程度の速度で進んでいる。

 馬車の中で、ヴィルジールとナタリアは座席に向かい合うように座り、ナタリアの顔色の悪さを見たヴィルジールは心配するようにナタリアに向かって唇を開いた。

「──ナタリア嬢、顔色が悪いが……。貴女の希望は叶えたいとは考えているが、腹の子に何かあれば大変だ。体調が落ち着くまでは王城で過ごしてくれないか?」
「──えっ、」

 ヴィルジールの言葉に、ナタリアはびくりと体を震わせるとがばり、と俯いていた顔を持ち上げてヴィルジールへ視線を向ける。

 学園に登園せず、王城で過ごしてしまえば、身篭っていない事が直ぐに露見してしまう。
 それだけは避けなければ、とナタリアは考えると必死に首を横に振る。

「そ、それだけは……! やっと、やっとあと少しで卒業出来るのです……っ。折角今まで頑張って通っていたのです……このまま卒業させて下さい……!」
「だが……まだ体調も安定していないのだろう? そのような状態で無理に学園に通えば、負担はどうしても掛かるだろう、そうすれば体調を崩す事も増えて、今日のように早退する事も多くなってしまう。それよりも、王城に教師を読んで、個別にナタリア嬢に学園と同じ内容を指導して貰えばいいだろう?」

 ヴィルジールの言う事は最もだ。

(だけど、そうしたらバレるのも時間の問題……! 私が学園に登園し続ければ、リスティアナ嬢と私が同じ学園に通い続けて、リスティアナ嬢に注目を集めさせれば……私への視線は少なくなるわ。やっぱり、リスティアナ嬢には殿下と私の未来の為に犠牲になってもらわないと……っ)

 ぐっ、と押し黙るナタリアにヴィルジールは困ったように眉を下げると窓の外へと視線を向けてから唇を開いた。

「一先ず、ナタリア嬢は城に着いたら医師を待機させているからしっかりと診て貰ってくれ」
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