【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船

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お茶会での出来事1

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翌日、ミュラーがお茶会へと出掛ける日。
昨日届いたレオンからの訪問の連絡には前日に断りを入れた。
突然の訪問の知らせに、若干の違和感を覚えたがミュラーはその違和感を振り切るようにそのままお茶会へ向かうため馬車に乗り込んだ。


「ミュラーお嬢様、リーンウッド伯爵家でのお茶会は久しぶりでございますね?」
「そうね、久しぶりにアレイシャと会えるのが嬉しいわ」

リーンウッド伯爵家は、ミュラーのハドソン家と昔から親交があり、そのリーンウッド伯爵家の娘、アレイシャとミュラーは同じ17歳であることから、子供の時から度々一緒に遊んだり、貴族の令息・令嬢が通う学園にも共に通った。
成人前の最後の勉学の場の為在学期間は短く、1年程で学園生活は終わる。
基本的に令息は領地経営についてや、騎士を志す者の為の剣の扱い方。
令嬢はマナーレッスンがメインにダンスや自国以外の外国語を学ぶ。
覚える事が多く、1年はあっという間に過ぎ中々学園に通う者同士で親睦を深める事は出来なかった。
学園を卒業後は本格的に社交デビューについて学び始めたり、正式なデビュー前にプレデビューとして小さめの夜会へと参加する事が多くなる。

こうしてゆっくりと友人とお茶会の機会等ここ最近無かった為、ミュラーは久しぶりに友人とお喋りが出来ることが嬉しい。
爵位も同じ伯爵家、上下関係が無い為気兼ねなく話せる数少ない友人だ。
ミュラーは馬車の中から流れる景色を窓から眺め、嬉しそうに微笑んだ。








「お招きありがとうございます。お久しぶりですね、アレイシャ」

お茶会の会場である豪奢な庭園へと案内されたミュラーはお茶会の主催者であるアレイシャへとカーテシーをすると、にこりと微笑んだ。

「ミュラー!久しぶりに会えて嬉しいわ!」

二人は嬉しそうに笑いながら一言二言言葉を交わすと、他にも続いて招かれた令嬢達が庭園へと入ってくる。
アレイシャはミュラーに「またあとで話しましょう」と告げると、招待客の元へと挨拶をしに行った。

リーンウッド伯爵家でのお茶会は、中規模のようで20人まではいかないが、そこそこの人数の令嬢、令息が招かれている。
その中にはミュラーの姿を見つけると顔を綻ばせて手を振る顔見知りの令嬢もいれば、まったく面識のない家の令嬢も来ているようだった。
ミュラーの姿に一部の令息達がざわめいているのも雰囲気から感じられた。

不躾にジロジロと視線を送られる事もあれば、ひっそりとこそこそ話しをされている雰囲気も感じられる。

(──この間の夜会が原因でしょうけど…)

ミュラーはそのいたたまれない視線達から逃げるように知り合いのテーブルの元へと向かった。



「そう言えば、皆さん知ってる?今凄く人気の演目があるみたいで、連日劇場は満員みたいよ」
「知ってます、それ凄く噂になっている悲恋の演目よね?今ではチケットが中々取れなくて見に行く事も難しいみたいですね」

きゃっきゃと年相応にはしゃぐ友人たちに、ミュラーも楽しそうに唇を開いた。

「へえ!どんな演目なのかしら?そんなに人気なら私も一度見てみたいわ」
「でしょう?ミュラーさんも一度見に行った方がいいわ!なんと言っても、相手役の男性の演技がとても切なくて胸がきゅんとするらしいのよ!」

アレイシャとミュラーと同じ伯爵家の娘ルビアナと、子爵家の娘エリンの会話にミュラーも仲間に加わる。
ルビアナの様子から見て取れるように、彼女は出演している相手役の男性にもきゅんとしているようで彼女の瞳が蕩けている。

「ルビアナさんもチケットが取れないの?」

ミュラーが聞くと、ルビアナは悲しそうに眉根を下げる。

「そうなのよ…やっぱり人気の作品だからか、中々用意出来ないみたいで…お父様にもお願いしているのだけど暫くは無理そうね」

そこまで人気の演目ならば、是非自分も一度は見てみたいな、とミュラーは考える。
3人で今話題の演劇について花咲かせていると、ふいに後ろから低い声に話しかけられた。

「お話中すまない、今話していたのは今有名なルビーの指輪という演目ですか?」

ふわりと微笑み、ミュラーの真後ろから話しかけて来た男性に3人はきょとんとしながらその男性に視線を向ける。
お茶会に参加しているから、リーンウッド伯爵家と親交のある家の令息だろう。
ミュラーには見覚えのない事から、ハドソン家とは交流のない家の令息だろう事がわかる。
だが、令息はミュラーに視線を向けるとうっとりと瞳を細めて言葉を続ける。

「ハドソン嬢、もし宜しければ私と共にその観劇に行きませんか?たまたまチケットを譲って頂いたのです」
「──え…っ」

突然のお誘いに、ミュラーは戸惑う。
それは近くで聞いていたルビアナとエリンも同じようで、ぽかんとその令息を見つめている。
そこそこ面識のある人物であれば、このようなお誘いを受けてもおかしくはないが、ミュラーはまったくの初対面である令息に困ったように眉を下げる。
2人の様子を見ても、その令息とは面識がないようで戸惑っているのが見て取れた。

「…えっと、お誘いありがとうございます…?申し訳ございません、この場ではご返答出来かねてしまうので、後日お手紙を頂いても宜しいですか?」

面識のない男性からのお誘いは家を通して行うのがマナーだ。
そして、まだ成人前のミュラーは自分1人で判断する事は出来ないので必ず身内の了承を貰わねばならない。
通常は、何人かで連れ立って観劇に行って、そして回数を重ねて2人きりで観劇に行けるようになる。
その間をすっ飛ばしてお誘いをして来た令息に、ミュラーは若干の不信感を抱いた。
それは友人の2人も同じ気持ちのようで、ミュラーの言葉にうんうんと頷いている。

「わかりました、明日改めてお誘いさせて頂きます。嬉しいお返事期待しておりますね」
「──っ、」

令息はおもむろにミュラーの髪の毛をひと房手に取ると、その髪の毛の先に一つ口付けを落とした。
その令息の行動に、ミュラーはぞっと寒気が走るのを何とか我慢して笑顔を貼り付け、当たり障りのない返答をして笑顔で見送った。

色々、と
色々とその令息の行動に驚く。
令息の顔がなまじ整っているからか、令息は常に自信に満ち溢れていて、まさかミュラーに嫌悪感を抱かれているとは思わなかったのだろう。
最後まで涼やかな微笑みで3人のテーブルから離れると、友人達のいるテーブルへと戻って行った。

「す、凄いですね…彼…」
「ええ、本当に…」

エリンの言葉に、ルビアナが呆気に取られたような言葉を返しているのをどこか遠くで聞きながら、ミュラーはどこかぐったりと疲れてしまった。
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