「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

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一章

10話

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「──ん、んん……?」
「ウェンディ様!? お目覚めになりましたか!?」

 ウェンディは、小さく身動ぎをして呻き声を上げた。
 すると、メイドのナミアがウェンディの声に反応し、慌てて駆け寄って来た。

「ナミア……? 私……鍛錬場で魔法の鍛錬をしてて……」

 そこまで呟いたウェンディは「ああ……」と呟く。

「そこで倒れてしまったのね。ごめんなさい、ナミア。迷惑をかけたわね」
「いえ、いいえお嬢様。ご無事で良かったです」
「ナミアが私を鍛錬場から連れて来てくれたのよね……? 重かったでしょう、ありがとう」
「──っ、い、え……大丈夫ですよ」

 ナミアは一瞬だけ言葉に詰まったが、にこりと笑顔を浮かべて答える。

(そっか……ナミアが助けて、運んでくれたのね。……ヴァンの声が聞こえたような気がしたけれど……あれは夢だったのね……)

 ウェンディは力なくナミアに微笑む。
 無理をしてしまい、魔力が尽きそうになってしまった。
 これでは、今日の鍛錬は難しいだろう。

 今日はしっかり休んで、明日以降に再びしっかり魔法の鍛錬に励もう、とウェンディはきゅっと拳を握りしめ、決意した。



 それから、祭典までの数日間。
 ウェンディは一日の殆どを、鍛錬場で過ごした。

 だけども、いくらウェンディが鍛錬を続けても、結局祭典までの間に攻撃魔法のような強力な魔法は、終ぞ発動する事は出来なかった。


 そして、その間。
 今までは時折顔を出してくれていたヴァンの姿も、見る事は無かった──。


◇◆◇

 祭典の日、当日。
 祭典は、王都にある王家が所在している大きな宮殿で行われるのだ。

 その宮殿は、祭典の日だけは国民も出入りが自由で、魔法演術を行う場所にぞろぞろと沢山の人が集まっていた。

 その日ばかりは、ウェンディの専属護衛騎士であるフォスターは、ウェンディと揃いの衣装に身を包み、彼女の傍らに侍る。
 魔法演術の参加者は皆、宮殿内にある大きなホールの控え室に揃っていた。
 ホールは観覧席もあり、天井部分は塞がれず、青空が覗いている。

 専属護衛騎士を持たないエルローディアは、ウェンディの父や母と同じく、ホプリエル侯爵家の一員として祭典の観覧席に座っていた。


 ウェンディ達の暮らすこの国──オードゥライヤ王国では、四年に一度祭典が行われる。
 この祭典は、建国にちなんだ大きなお祭りだ。
 祭典は三日三晩行われるため、近隣の国からも大勢の見物客が訪れる。
 国外の貴族も多くやって来るため、この三日間はオードゥライヤの王都はとても賑わい、人で溢れるのだ。

 そして、この祭典の幕開けとしての催しで、この国で専属護衛騎士と契約を交わした貴族が「魔法演術」を行う。
 幻想的な世界を創り上げ、この国に住まう全ての人々の幸せを願うための催し。
 その大事な幕開けの魔法演術の最後を締めくくるのが、この国一番の力を持つ専属護衛騎士と、その主人なのだ。

 四年前の祭典でも、ウェンディとフォスターは魔法演術の催しの最後を務めた。
 その時には既にウェンディの魔法の腕は昔に比べ、大分落ちてはいたが今現在に比べ、まだ簡単な攻撃魔法を発動する事は出来た。
 だけど、その時に比べて、今現在のウェンディの魔力も、魔法の腕も確実に落ちている。

 ウェンディは自身に重く伸し掛る責任と、緊張感にふるり、と体を震わせた。

「……ウェンディ様。今日はしっかり魔法を発動してくださいよ。国内の貴族が多く集まっている今、この場所で魔法演術を失敗したら……ウェンディ様は国中の笑いものです。それに……あなたのお父様はどう思いますかね」
「わ、分かってる……分かってるわ、フォスター……」
「ふん。本当に分かっているんだか……」

 フォスターははぁ、と溜息を零しつつ、ウェンディから顔を逸らす。
 フォスターの横顔は、忌々しそうに歪められていて、ウェンディの隣に居るのが心底嫌だ、と言う気持ちを隠していない。


 ウェンディとフォスターは、魔法演術を披露する者達が順々に外に出て行くのを見つめた。
 ウェンディ達より先に演術を披露している貴族と、専属護衛騎士の華やかな魔法が繰り広げられ、観客席からはわっと歓声が上がっているのが、ウェンディの耳にも届いた。

「そろそろ私たちの出番です。さっさと済ませましょうウェンディ様」
「わ、分かったわフォスター」

 フォスターの声に、ウェンディは頷き、先に歩き始めたフォスターに慌てて小走りで着いて行った。
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